新GMにご用心。

コンテンツ・ビジネス塾「GM」(2009-19) 6/3 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながる
ヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、アメリカの復讐。
アメリカの星が失墜しました。GM(General Motors Co.)が破産しました(6/1 日経)。
アメリカ人は嘆きました。オバマ大統領はGMを助けることにしました。政府が株主になるのです。
GMとは、いまから100年前(1908年)に設立され、世界ナンバーワンを看板にして来た、アメリカを代表する自動車メーカーです。
アメリカの象徴でした。「アメリカ経営史に燦然と輝く天上の星」のような、お手本の会社でした。
どこの国のどの会社が、アメリカの象徴であるGMを、世界のトップから引きずり下ろし、破産に追い込んだのでしょうか。
日本の「トヨタ」です。トヨタは2008年の生産台数897万台で、62万台ほどGMを上回りました。
ところがびっくり、トヨタは新型「プリウス」の広告キャラクターに、「スーパーマン」を起用しました。
トヨタは「アメリカの星」を引きずり下ろしただけでなく、「アメリカの夢」をも人質にしました。
アメリカは日本を許すでしょうか。許すわけがありません。しかしこれは経済の戦争、ミサイル攻撃に出るわけにはいきません。しかしオバマ大統領とアメリカは必ず復讐します。
2、自動車とは何か。
むかし、ヨーロッパの貴族は馬車で移動していました。自動車は馬車の代わりになるものとして、ヨーロッパで発明され、貴族のおもちゃとして発達しました。ブランドで現代の女性をとりこにしている、「エルメス」のもとは、王様と貴族のための馬具屋さんでした。
民主主義の国・アメリカは、貴族のおもちゃ・自動車を、一般大衆のものにしました。まずフォードがT型で大量生産方式を築き、つぎに馬車で成功したデュラントのGMがフォードに追いつき追い越し、1931年から2007年まで世界1に君臨します。
なぜGMは成功したか。それは、「人民の人民による人民のための車」を、作ったからです。
1)「どんな財布にも、どんな目的にも適った車」。これがGMの目標でした。
2)「フルライン・ポリシー」。低価格の大衆車から高価格の高級車まで、シボレー、ポンティアックオークランドビュイック、キャデラック、をそろえました。
3)「アニュアル・モデル・チェンジ」。毎年変わるデザイン戦略、割賦販売、中古車の下取りで、消費者の購買意欲を刺激しました。事業部制で、それぞれの車種の販売と収益を競わせました。
4)「『造った製品を売る』ではなく『売れる製品を造る』マーケティング」。10日ごとにディーラーから情報を上げ、正確な販売予測を立てていました(『1920-1930年代GMにおける成長戦略とマーケティング管理の確立』 斉藤雅道 立命館経営学 第44巻第4号)。
アメリカ人は平等でした。だれもが車を持てました。アメリカ人は個性的でした。好みの車を持てました。そしてアメリカ人には成功のチャンスがありました。キャデラックに乗る夢を持てました。
3、戦いはこれから。
GMはなぜ没落したのか。原因は「車で民主主義」を実現した「トラック型の設計思想」にあります。
トラック型は、車台(シャシー)を共通化し車体(ボディ)を多様化し、製品変化と部品量産を両立させました。フルラインとモデルチェンジの「車の民主主義」は、これで可能になりました。
米国企業100年の歴史に登場する「儲かるビジネスモデル」はすべて「トラック型」でした(『米自動車危機 教訓と展望』藤本隆宏東京大学教授 日経5/22)。
GMがスタートします。破産したとはいえ、世界最大の自動車市場・中国でのトップは、GMです。
GMのリーダーは、オバマ大統領です。そのオバマ大統領が、日本に復讐を仕掛けてきます。
さっそく、「刺客」が日本にやってきます。駐日大使に決まった弁護士ルース氏です。
「自動車用のモーター」、「『21世紀の石油』リチウムイオン電池」、日本の最先端技術を米国に移転させる「黒衣(くろご)=スパイ」として日本にやってくるのです(『経営の視点』 日経 6/1)。
話題のオバマ大統領が、いよいよ日本の敵・ライバルとして登場します。日本は戦えるでしょうか。