トヨタは無罪、立役者は豊田章男社長です。

コンテンツ・ビジネス塾「トヨタの無罪」(2011-7) 2/22塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、無罪
運輸省と米航空宇宙局(NASA)は2/8、トヨタ自動車のリコール(回収・無償修理)問題で、電子制御システムに欠陥はないとの調査結果を発表しました。このことで、1年半前に始まったトヨタバッシング(トヨタたたき)は、終息することになります。
1)09年8月・・・米カリフォルニア州でのレクサス衝突事故で4人死亡。9月トヨタ、フロアマットの問題で事故につながる恐れがあると発表。大規模リコールを実施。
2)10年2月・・・レイ・ラフード米運輸長官が「トヨタ車に乗らない方がいい」と発言。米ABCテレビは、トヨタ車の電子制御系の欠陥でエンジン回転が急上昇する危険があるという、米大准教授の実験を放映する。
3)10年2月・・・米下院公聴会豊田章男社長出席。
大規模リコールでの問題は、3つありました。一つは、アクセルペダルにフロアマットが引っかかる。二つ目は、アクセルペダルの戻り方が悪い。三つ目が、電子制御の誤作動。最初の二つは、初歩的な機械的な問題で、簡単にリコールで解決。問題として残ったのが電子制御でした。
しかし調査結果は、アクセルとブレーキの踏み間違えが事故原因でした。欠陥実験を放映したABCは、不適切を認めました。さらにラフード長官は「娘もトヨタを買った」と安全にお墨付きを与えました。
2、豊田章男社長
豊田章男(トヨダアキオ)社長はトヨタは安全の知らせに涙で顔をクシャクシャにして喜びました。豊田章男は、トヨタGMから自動車販売数世界一の座を奪った(08年の実績)09年6月に52歳で社長に就任し、いきなりこのトヨタバッシングの矢面に立ち、攻撃を受けました。トヨタの危機にいちばん苦悩し、問題解決にいちばんの功績があったのが、誰あろう豊田章男でした。
ハイライトは米下院公聴会でのプレゼンテーションです。豊田は国際基準の見事がプレゼンをこなしました。まず英語でプレゼンをしました。ボディランゲージ、アイコンタクト
は完璧でした。つぎに主要な論点を3つにしぼって明快に分かりやすく話しました。そして質疑応答では日本語で答え、通訳を使い誤解のないように気配りをしました。
1)リコールは日本の本社で決めていたが、地域ごとの決定に改め、対応を早くする。
2)地域ごとにCQO(チーフ・クオリティ・オフィサー)を決め、責任体制を明確にする。
3)電子制御とブレーキ。プリウスのソフト制御をよりなじみやすいものに修正する。
以上が3つの主要な論点です。米LAタイムズは「過ちを認めきちんと説明していた」と評しました。でも内容は、トヨタ流の堂々たる「カイゼン」のプレゼンでした。いままでビジネスパースンはいうに及ばす、国際舞台で日本の政治家がこのような明快なプレゼンができたでしょうか。米下院議員は公聴会が成果があったと声明を出し、豊田章男のプレゼンでトヨタは無罪への流れは決まりました。
3、トヨタの暴挙
トヨタバッシングでトヨタのブランドイメージは深い傷を負いました。対して経営破綻したGMは、公的支援で息を吹き返し、わずか1年で再上場を果たしました。
トヨタの10年の米国での新車販売数は0.4%減、対して市場全体は11.1%と急回復、GM
など米ビッグスリーは復活を果たしています(2/10サンケイエクスプレス)。
米の公平さ疑うトヨタ騒動(2/11日経社説)、と日経は米政府の行き過ぎを書き、あの騒ぎは何だったのか(2/10産経社説)、と産経は日本政府のだらしのなさを書きました。
そしてもうひとつトヨタバッシングの原因があります。それはトヨタの失敗です。
GMが世界一からトヨタによって引きずりおろされ、GMが倒産(09年6月)したあと、
トヨタプリウスの広告にスーパーマンを起用しました。世界に冠たるアメリカの星が失墜した後、トヨタアメリカの夢・スーパーマンを金の力で人質にしてしまったのです。
これは米国人の顔に泥をぬるような暴挙でした。そして2ヶ月後トヨタバッシングが始まります。
トヨタは図に乗りすぎました。世界一のトヨタは、広告でも謙虚で真摯であるべきでした。