コンテンツ・ビジネス塾「宇宙エレベーター」(2009-27) 8/4 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながる
ヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、若田光一さん帰還
1)4ヶ月半宇宙に滞在した若田さんが7/31に帰ってきました。
記者会見の若田さんはさわやかでしたが、今回の帰還もヒヤヒヤものでした。まず帰還は1か月遅れています。当初、若田さんを迎えに行くエンデバーは、6/13に打ち上げられる予定でした。それが「水素ガス漏れ」で1ヶ月遅れました。さらに天候の関係で数日延期されています。狭い国際宇宙ステーション(ISS)の中で待ちぼうけをくわされるのは、どんな感じなのでしょうか。若田さんは何を考えていたのでしょうか。もともと命はないものと諦めているのでしょうか。
2)スペース・シャトル計画は、30年ほど前から始まっています。軌道船(Orbiter)が、宇宙飛行士や部品を運んで、地球と宇宙を行き来するから、バスのようにシャトル(shuttle)と呼ばれます。
3)ISSの日本実験棟「きぼう」が、若田さんの手で完成しました。生命科学や医学の実験が本格的に始まります。09年11月に野口聡一さん、11年春には古川聡さんが、「きぼう」に送られます。しかし「きぼう」には、1984年から24年間、すでに7600億円ものお金が使われ、これからも年間400億円かかります。宇宙飛行士のパフォーマンスは終わりです。投資に見合うだけの、それもノーベル賞ものの成果が、求められるようになります(日経社説8/2)。
2、否定されるスペース・シャトル
宇宙の未来はバラ色ではありません。まず、スペース・シャトルは2010年に退役します。さらに「きぼう」が完成したばかりのISSも2015年以降の運用が決まっていません(日経7/20)。はっきりしているのは、スペース・シャトルは否定され、アポロ・ソユーズのようなカプセル型の宇宙船と使い捨てのロケットシステムに戻ることです。その名は「オリオン」。米国はオリオンを主役にしたコンステレーション(constellation=星座)計画で、再び月、さらには火星を狙います。
なぜスペース・シャトルは否定されたのでしょうか。
1)信頼性がない。シャトル計画ではチャレンジャー、コロンビアの2機と14名の宇宙飛行士を失っています。比べて、ロシアのソユーズは、ここ20年は重大事故を起こしていません。
2)オービターの翼はいらない。翼を使うのは打ち上げと帰還のときだけ。宇宙では何の役目も果たしていません。しかも、再利用のためのメンテナンス費用は多額、使い捨てのほうが経済的です。
3)緊急脱出装置がない。シャトルのトラブル発生時に宇宙飛行士は脱出できませんでした。
3、宇宙エレベーター
危険で、不経済で、環境を汚染するロケットに代わって、安全で、経済的で、環境にやさしい宇宙開発を可能にするのが、「宇宙エレベーター(軌道エレベーター)」です。
1)静止軌道上の人工衛星から地上に達するまでのケーブルを垂らします。そのケーブルを使って人や物資を運びます。2)重力を遠心力が上回るように、人工衛星から宇宙に向けてもケーブルを伸ばしアンカー(いかり)を末端につけます。地球側の駅(アース・ポート)は、移動可能の海上に作られます。3)ケーブルは全長10万キロ、地上から静止軌道までは3.6万キロ。エレベーターの上昇スピードは時速200キロ、静止軌道の人工衛星まで1週間ほどで到着できます。だれもが、もちろんあなたも安全に快適に宇宙旅行を楽しめるようになります。
問題点は3つあります。1)高強度のケーブル(1991年のカーボンナノチューブ(CNT)の発見により解決)。2)エレベーターの駆動、電力の供給技術。3)人工衛星や宇宙ゴミとの衝突回避。宇宙エレベーターは夢物語ではありません。8月には国内初の宇宙エレベーター競技会が(目標高度150m)、米国では米航空宇宙局(NASA)の賞金100万ドル出す競技会が開かれます(目標高度1キロ)。そして1930年頃に、宇宙エレベーターの開通が予想されています(日経7/12)。
「宇宙エレベーター」のアイディアは1859年にロシアの科学者ツィオルコフスキー(1857~1935)が考えたものです。日本にも同じようなことを空想した詩人・宮沢賢治がいました。宇宙エレベーターによる1週間の人工衛星への旅は、「銀河鉄道の夜」を想像させます。主人公ジョバンニと同じように、私たちは目くるめく宇宙の景色を見ながら「ほんとうのさいわい」を考える、ようになります。