ヒッピーのジョブズを理解していますか?

コンテンツ・ビジネス塾「ジョブズ」(2011-34) 8/31塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、世界一のCEO
スティーブ・ジョブズがアップルのCEOを辞任すると発表し、新聞もテレビもネットも大騒ぎになりました(日経夕8/25)。アップルは株式時価総額で瞬間的ではありますが、エクソン・モービルを抜き、世界一の企業に躍り出たこともあります(日経8/10)。アップルといえばジョブズです。カリスマ経営者ジョブズの動向は世界の注目を集め、書店にはスティーブ・ジョブズについて書かれた「ジョブズ本」であふれています。
1)ジョブズは社員に「海賊であれ!」と命じるカリスマ経営者である。無能を嫌いエレベーターの中で「クビ!」を宣告された者もいる。2)ジョブズはモノづくりで一切の妥協をしない。細部にこだわる。とくに仕上がりのデザインを重視している。3)ジョブズは交渉と広告の天才である。プレゼンテーションの名人として、すべてのビジネスパースンのお手本になっている。
ジョブズ本」はヒット商品の生み出し方を説明しています。しかしどの本もジョブズの真実に迫っていません。なぜなら、ジョブズは、ビジネスで成功するためにアップルを始めたわけではない、ヒッピーとして世界を変えたいと願っているから、だけです。
ヒッピーとは何か。産業への反抗、自然への回帰、感覚の解放、60年代のアメリカで始まり、世界の若者たちを取り込んでいった新しいライフスタイルです。
2、少年時代
ジョブズは大学院の女子学生の私生児として生まれ、労働者階級の家庭の養子として育てられます(いまは父親はシリア人の政治学者と公開されている)。大学に進学はします。しかし6ヶ月で退学。コーラのビンを拾って5セントをもらい、ハレクリシュナ寺院でただメシを食い、友だちの部屋の床に眠りました。ゲーム機の「アタリ」に就職します。金を貯め、バックパッカーとなり数ヶ月間のインド放浪の旅に出掛けます。
1976年20才でアップルを創業。84年マッキントッシュ発売。85年アップルを追放されますが、96年復帰。あとはiMaciPodiPhoneiPadの発売の快進撃で、アップルは世界一の大企業へ登り詰め、ジョブズは世界を代表する経営者として崇拝されるようになります。
しかしジュブズはいまもヒッピーです。黒のハイネック、ジーパン、スニーカー、まるでロッカーかフォークシンガーのようなスタイルでプレゼンに登場します。
3、ヒッピー
2005年ジョブズスタンフォード大学の卒業式に招かれ、歴史的な名スピーチをしました。それはジョブズの青春の放浪、アップル追放の悲劇、そしてガン闘病からの生還の物語でした。スピーチのエンディングは「Stay hungry. Stay foolish.」(いつまでもハングリーで、いつまでもおばかさんでね)。これは60年代、70年代のヒッピー・ジェネレーションのバイブルであった『Whole Earth Catalogue』(全地球カタログ)の最終版『Whole Earth Epilog』(1974年)の裏表紙にかかれた言葉でした。『全地球カタログ』は、ヒッピー・ライフスタイルのブックガイドです。ジョブズが何を考えていたかが分かります。では、36年前の全地球カタログの最終版から、その見出しを紹介します。
1)WHOLE SYSTEMS(全システム)宇宙、エネルギー、エコロジー。2)LAND USE(土地利用)キノコ、鳥、動物。3)SHELTER(隠れ家)建物、木工。4)SOFT TECHNOLOGY(優しい技術)太陽光発電、風力。5)CRAFT(クラフト)木彫、陶芸、編物。6)COMMUNITY(コミュニティ)食べ物、セックス、健康、中国。7)NOMADICS(放浪)旅行、自転車、キャンプ。8)COMMUNICATIONS(伝達)本づくり、アート、フィルムとビデオ。9)LEARNING(学習)おもちゃ、教育、麻薬、心、精神。
いま世の中で議論されていることはすべて『全地球カタログ』とヒッピーによって先取りされています。スマートフォン(高機能携帯電話)、タブレット(多機能携帯端末)は、コミュニケーションとラーニングのツール。目的は心と自然を解放すること、精神と宇宙を統一させることです。
ジョブズが退いても、ヒッピーの夢は終わりません。そしてその夢は、スーツを着たスクエア(ヤボな堅物)には永久に理解されず、異端であり続けます。