クリエーティブ・ビジネス塾23「角川・ドワンゴ」(2014.6.4)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、コンテンツ
ネットワークで流通する情報の中味を「コンテンツ(content)」といいます。英文の本で目次に相当するところには、「contents」とあります。新しい言葉ではありませんが、現在のコンテンツは「デジタルコンテンツ」と呼ばれネットワークで売買され流通しています。
コンテンツには、映画、音楽、演劇、文芸、写真、マンガ、アニメ、ゲームなどがあり、教養や娯楽のために人間の創造活動が生み出すものです。コンテンツを作る人を「クリエーター」、集客力があるコンテンツを「キラーコンテンツ」といいます。
いまの社会は、「農業社会」、「工業社会」に続く「情報社会」といわれます。コンテンツという情報を制作し販売する「コンテンツ産業」は情報社会をリードする産業です。
そして「コンテンツ産業」は、世界に羽ばたく「クールジャパン」(カッコいい日本)を代表する産業で、これからの日本を支えるものです。
2、リアルとネットの融合
「角川書店」で知られるKADOKAWAと動画配信サービスの「ニコニコ動画」のドワンゴが10月に合併することになりました(日経5/15)。
KADOKAWAは、1945年創業の老舗の出版社で、従業員1946人売上高1511億円。漫画・映画の『テルマエ・ロマエ』、雑誌『ヤングエース』、アニメ『ケロロ軍曹』、映画『サンブンノイチ』、『艦隊コレクション〜艦コレ〜』があります。ドワンゴは1997年ネットゲームの開発会社として設立され、従業員420人売上高は359億円。動画サイト『ニコニコ動画』、音楽配信『ドワンゴジェイピー(着うた)』、イベント『ニコニコ超会議』、ライブ『ニコファーレ』、ゲーム『かまいいたちの夜』があります。
KADOKAWAとドワンゴの両社には50年以上の歴史の差、1000億以上の売上げの差、5倍の従業員数の差があります。うまくいくのでしょうか。KADOKAWAの角川会長は両社の共通テーマはサブカルチャーである、ドワンゴの川上会長は両社ともネットとリアルでコンテンツとプラットフォーム(配信基盤)を手掛けてきた、だから相性はいい、と楽観しています(同日経)。
1)KADOKAWAのアニメ製作者とドワンゴの技術者が協力すれば、視聴者の反応でストーリーが変化したり、登場人物と会話ができるような映像作品が作れる。
2)「ニコニコ動画」に投稿された作品をKADOKAWAが販売したり、編集者が加工して商業製品にすることができる。
3)ドワンゴは「ニコニコ動画を」を英語や中国語に翻訳に挑戦している。「クールジャパン」のコンテンツを世界に発信できる基盤づくりができる。
KADOKAWAには、書籍、漫画、映画の豊富なコンテンツがあります。ドワンゴには登録会員3758万人、有料会員217万人の強力な配信ネットワークがあります(日経5/14)。
3、クールジャパン
世界のコンテンツ市場は強力です。米アマゾン・ドット・コムは電子書籍や音楽をユーザーに届けていますが、ユーザーは2億4千万人、株式時価総額は角川・ドワンゴの70倍になります(日経5/15)。さらに『アナと雪の女王』のウォルト・ディズニーと「iPhone」のアップルの連合軍もあります。
それでも日本は米国に次ぐコンテンツ市場を持っています。しかし輸出比率は5%で、米国の18%に大きく劣ります。そもそも輸出ではお隣の韓国に「韓流ドラマ」や「Kポップ」で押され気味です。
問題は3つあります。まずグーグル、アマゾンが牛耳るネット社会に日本の反撃は可能なのか。これは経営の問題です。つぎに「ニコニコ動画」はユーザー参加型の日本独自のカルチャー。ネットはタダに有料の文化を持ち込んだ。これが世界で通用するのか。ふたたび「ガラパゴス」になってしまうのか。これは技術の問題です。そしてもうひとつは人間、私たちクリエーターの問題です。若いクリエーターが育つか。単なる企業統合ではなく、クリエーターにチャンスを与え、新しいコンテンツを作る、花も実もある角川・ドワンゴになるのか。私たちクリエーターが世界に通用する新しいコンテンツを生み出せるかです。