グッバイ・ジョブズ

コンテンツ・ビジネス塾「グッバイ・ジョブズ」(2011-40) 10/18塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、死
10/5にジョブズが亡くなりました。突然のニュースは私たちは驚きました。信じられないことが起きた。未来に導く指導者が突然いなくなった。世の中はどうなるのか。私たちは生きていけるのか。そんな戸惑いをおこすような、突然の死でした。スティーブ・ジョブズ(1955~2011)は、アップル前CEO(最高経営責任者)。パソコン(PC)の時代をマッキントッシュ(マック)で切り開いた人です。
ジョブズがアップルを創立したのは、1976年。途中しばらくアップルの経営からは離れますが(1985~1996)、その後復帰、わずか35年でアップルを世界一の企業にしました。新聞は、世界の情報産業をリードし、数十億人の生活を変えた功績は大きい(日経10/7社説)と、ジョブズを経営者として評価し、その死を惜しみました。でも、私たちを驚かしたのは別の理由によるものです。ジョブズは企業の経営者ではありません。ジョブズはロックスターで、世界を解放するヒッピー(ニューエイジャー)のボスでした。だから私たちはジョブズの死の報道に驚き、絶望したのでした。
2、カウンターカルチャー
ティーブは、音楽革命、文化革命、社会革命のカウンターカルチャー(対抗文化)真っただ中に青春を送りました。ヒッピー、ニューエイジャーの思想は、以下の3点に要約されます。
1)反近代・・・消費社会の効率を否定。西欧文化より、禅、仏教、東洋思想を評価する。
don't trust over thirty(30以上を信用するな)。
2)五感の拡張・・・論理より直感を重視。精神と宇宙の統一感を考える。
get back(自然に帰れ)。生態学エコロジー)や菜食(ベジタリアン)を大切にする。
3)快楽・・・快楽の感覚を、性の欲望を肯定する。
sex、drug、rock'n'roll (セックスドラックロンクンロール)。気持ちいいこと最優先にする。
ティーブは、友だちのところを泊まり歩き、大学を中退。フリーセックスまがいの青春を送っていたはずです。そしてインドの旅に出て、仏教徒になった、カウンターカルチャーの申し子です。
1969年のウッドストック・コンサートはカウンターカルチャーの頂点に立つようなイベントでした。その後、ロックスターの、ジミ・ヘンドリックスジャニス・ジョップリンは70年に、ジム・モリソンは71年に死んでいます。アップル創業の76年は、革命の破壊が終わり、ニューエイジャー(新しい時代の人々)による革命の創造が始まった時期です。
1984年登場のマックは、「巨悪」IBMへの対抗文化でした。ヒッピーの感覚を拡張させる道具でした。そしてニューエイジ(新時代)の友だちでした。プレゼンテーションするスティーブは、ブルージーンズ、黒のタートル、スニーカーの、カウンターカルチャーの戦士でした。
3、RIP Steve(May he rest in peace. 安らかに眠れ、スティーブ)
「スティーブは、どこにいるかい?会いたいんだけど!」
「このあたりのどこかにいると思うけど、アポイントメントは取ってあるの?」
「いや。アイフォンのことでちょっとしたアイディアがあるんで、話したいんだ!」
「!?・・・それはありがたいけど、アポがなければダメ、合えないワ」
「写真だけでもどうかな?」「ムリムリ・・・(笑い)」
2008年夏、カリフォルニアのクパチーノ、アップル本社のアップルショップでのことです。アップルマークの入ったTシャツを買いにきたツーリストの質問に、キャッシュレジスターの黒人の女性は笑顔で答えました。スティーブはみんなに愛されるカリスマ(超能力者)でした。
ティーブは、科学と芸術で才能を発揮したレオナルド・ダ・ヴィンチや、発明王トーマス・エジソンと並ぶ歴史上の人として評価されています。またスティーブと仕事をした孫正義は、彼は経営者でもエンジニアでもなかった、冒険を続けたピーター・パンのようだった、と回想しました。
私たち(ぼくたち)は花束を抱えて、カウンターカルチャーの拠点サンフランシスコに降り立ち、ゴールデンゲートブリッジの上から、その花束を投げ、ヒッピーのボスであったスティーブに捧げます。
Good by Steve.