JALのスッチーが苦手だった。だからJALを避けていた。

クリエーティブ・ビジネス塾30「JAL」(2012.8.8)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、スチュアーデス
なぜJAL日本航空)が嫌いになったのでしょうか。スチュアーデスだと思います。
(いまはstewardessとはいわない。flight attendant もしくはcrew)
初めて飛行機で海外に行ったのは米国。40年前の話です。パンナムでサンフランシスコに渡り、ノースウエストか何かでシカゴに行き、デルタでオーランドに行きました。米国行きは数年繰り返され、米国の飛行機にしか乗ったことがありませんでした。
JALのスッチー(スチュアーデス)は若者のあこがれの職業でしたが、初めて乗ったJALでがっかりしました。スッチーはうるさい。客ではなく自分が主役になろうとしていた。なにかというと「お客さま!何の御用ですか」「お客さま!席にお着きください」。「お客さま!」に命令する。そのうち「お客さま!」=「バカやろう」に聞こえてきました。
決定的なのは、2000年のパリ、シャルル・ド・ゴール空港でのこと。長いフライトを終えパリに到着。飛行中、気になっていたのは、ソウルオリンピッック男子100m決勝のこと、勝ったのはカール・ルイスベン・ジョンソンか。で、我慢できずに、飛行機の出口近くで新たのパリから乗って来た、外国人の男性クルーの一人に訊いたのです。「勝ったのはカールか?ベンか?」
訊かれたクルーは知らないらしく、仲間のクルーに知っている?と訊く。
突如、遠くの方から日本人のスッチーが、怒鳴りながら血相を変えてやって来ます。
「お客さまー!!なんでございますか?」
2、稲盛和夫
JALの再建に成功した稲盛和夫がやったことは、以下の4つです。
1)リーダーを育てる。2)経営の数字に意識を持たせる。3)会社として一体感を作る。4)お客さま視点を持たせる(稲盛和夫「日本は甦るーJAL V字回復の真実」『文芸春秋』2012.8)。
まずリーダー。JALのリーダーは学歴とプライドだけで、評論家的な言動をする人が多かった。倒産したのにもかかわらず、その原因をSARSリーマンショックなどの快適要因ばかりに求めた。
つぎに採算。当時の日本航空は経営実績が集計されるの2ヶ月以上かかっていた。売上、経費、採算をだれも知らなかった。なかには公共インフラを担っているのに利益を追求するのはおかしい、と主張するものもいた。
さらに一体感。キャリアとノンキャリア似た官僚的な社内制度があった。経営の目的が明確でなかった。社員全員が持つべき共通の価値観がなかった。そして、問題のサービス。
驚くのは、「利益を求めない公共インフラ」という考え方がJALにあった、ということです。
稲盛は、路線ごと便ごとの採算がリアルタイムでわかるような仕組みを作りました。赤字を垂れ流すことはできなくなります。収益性を高めるための創意工夫が重ねられました。
「収益性を求めない公共インフラ」、このお坊ちゃん思想が日本に蔓延しています。学校教育、社会保障、エネルギー。収益と採算を考えない暴論が、公共インフラの名のもとに横行しています。
3、上場
JALは9月に上場されることで6000億円を手にします。そして公的援助の3500億円は返済されます。JAL再生に税金は使われなかったことになります。稲盛和夫に拍手です。
稲盛のJAL再建への大義は、日本経済の再建する、日本航空社員の雇用を守る、そしてANAJALを競争原理を働かせる、でした。
JALの復活を全日本空輸ANA)が待っています。ANAは、7月に公募増資をし、最新鋭機を購入し、アジア航空会社へのM&Aをします。もうひとつの強敵、格安航空会社(LCC)も待っています。
さてサービスはどうなるのでしょか。実質をともなわない、笑顔だけのサービスはもういりません。長いフライトです。一人にして、放っといて、基本、ノーサービスがグッドサービス。
コーヒーを手に持ったまま飛行機に乗ろうとしたら、かわいいブロンドのクルーから、「ありがとう!私のために買って来てくれたの?」と言われました。そこにはほんとの笑顔のフライトがあります。