クリエーティブ・ビジネス塾31「ヘアメイク」(2012.8.17)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ファッションショー
ヘアメイキャップアーティスト(ヘアメイク)は、ファッションショーでどんな仕事をするのか。「ファッションショーの舞台裏:ヘアメイクの視点から」という珍しいイベントがありました(東京都現代美術館 8/5)。講師は、資生堂のビューティートップスペシャリストである岡元美也子と計良宏文(ケラヒロブミ)、観客は200名、ヘアメイクの実演、熱心な質疑応答もありました。
ファッションとヘアメイクのコラボ(共同作業)が始まったのは、1977年と最近のことです。
1970年代。ファッションとヘアメイクを結びつけた「トータルビューティー」という考え方が登場。ファッションはラブ&ピースのヒッピー。メイクのテーマはけだるさ、細くて薄い眉毛が流行した。
1980年代。イケイケ、肩パッド、DCブランドの時代になります。スーパーモデルが登場し、ファッションに男女差がなくなります。ヘアは刈り上げ、リーゼントです。
1990年代。安室奈美恵の時代です。ボディコンがキーワードに。海外のショーで日本人のヘアメイクの活躍が始まり、ベージュの口紅が登場します。
2000年代〜現在。さわやか、軽さ、ナチュラルの時代。ファンデーション、眉毛、口紅、すべていじっているが、やってないように見せること。ヘアは、あたかもモデルが自分でザックリまとめたようにナチュラルに、でもくずれそうでくずれない。
イベントは、「FUTURE BEAUTY-日本ファッションの未来性」の講座として企画されました。
2、ファッションデザイナーとヘアメイク
1)ミキオサカベ(坂部三樹郎)・・・デザイナーからヘアメイクに打ち合わせのために送られてきた資料は「でんぱ組」というキャラのフィギュアでした。アキバファッションが狙いです。ヘア担当の計良(ケラ)は、コスプレか?じゃー徹底的にやってやれ、と決意。モデルの5人の顔、頭を発泡スチロールで彫刻することから始めます。そこに髪を植え付ける。踊って歌えるウィッグを作りました。
2)ア・デッチャー(A Detucher)・・・デザイナーからは、明治以前の日本女性のヘアスタイルの写真が送られてきました。もちろんショーでモデルが着る服は、和服ではありません。デザイナーからは、髪を後ろでまとめ、頭のてっぺんで縦に円を描くようなスタイルを、まねて欲しいという注文がありました。舞妓さんのようなヘアスタイルとドレスのコラボが完成します。
3)マイケル・アドローバー(Miquel Adrover)・・・打ち合わせに送られて来た写真はアマゾンの原住民。顔にはペイント、白い骨のような棒が鼻を貫通し口の上に広がっています。さらに白い骨はあごを貫通し3本、口の下に5センチほど飛び出しています。ドヒャー!これをメイクでやれというのです。究極のピアス。でも、口の中に穴をあけるわけにはいきません。鼻の穴を貫通する長い骨はムリでしたが、あごの下にぶら下がる3本は実現、衝撃的なメイクになりました。
3、ヘアメイクの実力
岡元と計良は資生堂美容部員1万人のトップのプロです。若者に貴重なアドバイスをしました。
1)日本人の信用・・・80年代や90年代の初めのNYやパリのショーでは日本人のヘアメイクに仕事が来なかったが、いまは忙しい。日本人が優れた点は、まず時間を守る。次は器用、何でもできる。さらには、ショーの後のモデルのケアもする。つまりフットワークがいい。
2)教養と知識・・・まずファッションの歴史に関する教養は必須。次は画家とフォトグラファー。絵画と写真の勉強は絶えずすべき。そしてヴォーグの表紙。これは打ち合わせのときに必ず出てくる。いつも雑誌をパラパラと見ていなければならない。
3)クリエイティブなアイディア・・・アイディに困ると「東急ハンズ」に行くという。なんでもヘアスタイルに結びつけて考える。あとはショーの現場に行く。モデルの動きとライティングを研究しなければ、ヘアスタイルもメイクアップもあり得ない。
フットワークも、オシャレ情報も、クリエーティブアイディアも。どれもクリエーターなら、特別な話ではありません。基本に忠実、やるべきことをやる。いいアウトプットのためには、インプットが必要です。頭で考え手を使って、ヘアメイクをするのではありません。ヘアメイクは、「足」で創るのです。