さあ、何に使おう?3Dプリンター!

クリエーティブ・ビジネス塾29「3Dプリンター」(2013.8.8)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ものづくりの革命
印刷物をコピーしたり、写真を焼き増しするように、だれもが立体物の複製ができる時代がやってきます。3Dプリンター(3次元プリンター、3D印刷機)でものづくりの革命が始まります。
3Dプリンターとは、3次元の設計データをもとに樹脂や金属粉末を積層させ、立体的な造形物を作るものです。原理は20年前から知られていました。ただし装置は高価。特殊な企業だけの利用に限られていました。
たとえば、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)では、次世代航空機に搭載されるジェットエンジンンの燃料ノズル(どんなものか想像つきませんが)が、3Dプリンターで制作されています。まずパーツの組み立てがなくなります。いままで20個のパーツを組み立てていましたが、いまでは合金素材から一気に一体成型されています。その結果、25%もの軽量化がされ、さらに耐久性が5倍になったそうです(日経7/26)。まさにものづくりの革命です。
企業で使われる3Dプリンターは、数百万円〜1億円と高価なものですが、十数万円の個人用の3Dプリンターも登場してきています。「作る人」と「使う人」が二分されません。だれもが作る力を発揮できる時代になります。
2、リベレーター(「解放者」という名のピストル)
医学の世界で3Dプリンターは、医術革命を起こしています。神戸大学付属病院はファソナック(千葉市)と協力し、患者の肝臓の3次元生体モデル=模型を作り、手術のシュミレーションをしています。スケルトンタイプ(透明)の模型は内部に血管や神経が複雑に走り回っています。患者への手術内容の事前説明、手術現場での手順の確認に使われています(日経6/17)。
ワン・ファイス(愛知県春日井市)では、顔写真のデータから本人そっくりのお面を作っています。料金は3万円超。ただし芸能人、タレントのお面づくりはお断り。他人のお面を作るときも本人の承諾を確認しています。お面はリアルです。なりすましで、犯罪に使うことを、防ぐためにです。
3Dプリンターを世界的に有名にしたのは、リベレーター(解放者)というプラスチック製のピストルです。今年の5月米国、ピストルの3Dプリンター用の設計図が、インターネットで公開されました。米国務省は武器輸出禁止を理由に公開禁止を命令。しかし時すでに遅し、データは世界中に広がり、100万回はダウンロードされたと推定されています。オーストラリアの警察は、データをもとにピストルの製造を実演し、材料費35ドル、27時間でリベレーターを手にしたといいます(日経7/27)。
3、中国
オバマ米大統領は今年2月の一般教書演説で3Dプリンターに触れました。もづくりに革命が起きる、そして米製造業を再活性化すると訴えたのです。それもそのはず、3Dプリンターは米国の独走状態です。3Dプリンターの装置は、ストラタシス、3Dシステムズの米2社が、7割超のシェアを握っています。
日本は出遅れています。問題は中国です。製品の「模倣」は容易になります。例えば自動車、ライバル社のヒット車を分解し、部品を3Dプリンターで再現できます。航空機、自動車、医療、装飾品加工、3Dプリンターの利用は急速に拡大、3年後に中国は米国を抜き、3Dプリンターの最大市場になると予測されています。日米欧の製造業の間では、技術流出が加速すると懸念されています。しかし中国は知的財産権の保護意識に乏しい。なんとかして、意匠、特許、実用新案件で自分のアイディアを守る必要があります。ときすでに遅し、3Dプリンターそのものの模倣が相次いでいます(日経7/5)。
ところで日本で自分用の3Dプリンターは手に入るのでしょうか。まず、パソコン部品製造のアビー(横浜市)、3Dプリンター18万9千円で発売しています。3D造形データもサイトで提供しています(日経7/8)。そしてヤマダ電機も米社製3Dプリンターを168.000円で発売開始。あなたは何を作りますか。カギ、ドラえもん、フィギュア、彼女の顔、弥勒菩薩、ミロのヴィーナス。それとも自分のポコチン。なに?プレゼントする彼女を紹介してくれだって。勝手にしなさい。