クール・ジャパンの代表は、新宿だったんだ。

クリエーティブ・ビジネス塾17「クールジャパン」(2014.4.22)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、1500億円
クールジャパン(Cool Japan)を知っていますか。「クール」は冷たいとか寒いではありません。かっこいい、すてき、しぶい。クールジャパンとは「かっこいい日本」のことです。
日本から発信されるマンガ、アニメなどの若者文化が、世界のどこにもないかっこいいもの、「クール」と評価されました。それで日本人も「これはいける」とその気になり、クールジャパンを自らのキャッチコピーとして使うようになりました。いまではマンガ、アニメだけでなく日本文化全般に幅を広げ成長戦略の重要な柱と考えれています。
政府と民間企業が資金を提供する「クールジャパン機構」(海外需要開拓支援機構)は、今後5年間に1500億円をクールジャパンに投資することに決めました(日経4/9夕刊)。分野は5つで、1)コンテンツ(映像、音楽)2)食文化(和食レストラン)3)ファッション 4)生活(住関連企業)5)おもてなし(旅館)です。日本のファッション、ヘアスタイル、メイクは「カワイイ」とアジアの若者に人気があります。クールジャパン戦略は、クリエーターにとってもビジネスチャンスになります。
2、新宿
NHK衛星放送の番組に『クールジャパン』があります。司会者は鴻上尚史(作家・演出家)で、数人の外国人ゲストに日本の生活文化のどこがクールかを語ってもらう、英語と日本語のバイリンガルの番組です。先日は東京の「新宿」がテーマになりました(4/20放送)。
まず驚き。日本で訪日外国人にいちばん人気がある街は、京都ではなく「新宿」であると話されます。さらに驚きは、新宿の魅力の象徴として「ゴールデン街」が取り上げらました。そして新宿の魅力ランキングにも驚きます。1)都庁展望台 2)新宿御苑 2)家電カメラ量販店(ヨドバシ、ヤマダ電器) 4)ロボ・レストラン 5)ディスカウントショップ(ドンキホーテ)6)シャブシャブ 7)猫カフェ
ゴールデン街」には、狭い地域に10人ぐらいしか入れないバーが、たくさん並んでいます。70年代にインテリヤクザとヤクザが集まる飲み屋街でした。ふつうの人には恐い。何となく近寄りがたい。ひとりでは入れない。訪日外国人を案内できるような場所ではありませんでした。
なぜこんな所が訪日外国人の人気を集めるようになったのか。まず、こんな狭苦しく、人間関係が物理的にも精神的にも密な場所はない。店に入り10分もすれば旧知の友人ができます。そしてゴールデン街は危険な地域にない。通りを挟んでデパート、映画館があります。となりには新宿区役所、さらには花園神社があります。聖と俗、日常と非日常、ビジネスとエンターテイメントが同居している。ディープ、セクシー、アンダーグラウンド。と、訪日外国人は新宿の魅力を分析します。
訪日外国人の直感に驚きます。クールジャパンのふるさとはゴールデン街だからです。映画監督、ミュージシャン、ファッションデザイナー、広告クリエーター、演劇人、劇画家・・・70年代のゴールデン街では夜が明けるまでクリエーターの議論が繰り広げられていました。
3、大和心
クールジャパンの日本人に注文があります。
1)まず島国根性を捨てること。英語も勉強しないで日本はすごい、はありません。日本の若者は内向きになっています。米国に留学する人間が韓国より少なくなっています。
2)次に変なインターナショナリスト(国際人)やナショナリスト国家主義者)にならないこと。世界に出るとは日本を主張すること。但し誤解されては困る。日本の「すごい」は日本の「偉い」ではない。
3)そして日本を勉強すること。たとえば皇室。日本最古の物語『竹取物語』(かぐや姫)も世界最古の小説『源氏物語』も帝(みかど=天皇)が出てくるストーリーです。戦後、占領軍によって指導された皇室に否定的な教育は、日本を間違えて教えています。いま流行の「武士道」、「サムライ」もおかしい。日本の伝統ではありません。戦国時代からの流行にしか過ぎません。そして、桜。パッと咲いてパッと散る「ソメイヨシノ」だけを礼賛するのはおかしい。これも江戸時代に生まれた新種でこの400年の流行です。短歌の世界を彩ってきた日本古来の桜ではありません。
しきしまの 大和心を 人問わば 朝日に匂う 山桜花(本居宣長=もとおりのりなが)