クリエーティブ・ビジネス塾33「浮世床」(2014.8.12)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、美容室Ash(アッシュ)
日本の首都圏で美容室アッシュを展開しているアルテサロンホールディングスがいよいよ東南アジアに進出します(日経7/16)。
美容室アッシュの展開先はシンガポール、インドネシア、ベトナム。まずベテラン美容師を現地に派遣し、美容技術を指導する。美容技術がレベルに達したら「アッシュ」の暖簾(のれん)分けをする。そしてブランド料収入とプライベートブランド「etra」で収益をあげる。
アジアの各国には高いハードルがあります。まず直接の接客は、労働ビザや事業許可があり、できない。また女性が第三者に髪を見せてはいけない、宗教上に制約もあります。アッシュの指導者派遣はリスクを避けるための方策です。
2020東京に向けて、日本はアジアとの連係を様々なかたち実現しています。アッシュの展開もそのひとつです。まず日本には東南アジアと中国を中心に過去最高の訪日客で溢れています。昨年は年間1000万人突破で湧きましたが、ことしは上期(1月〜6月)だけで626万人(日経7/24)、このままいけば年間で1200~1300万人になります。つぎに日本のテレビメディアが東南アジア進出のピッチを早めています。インドネシアではグルメ番組「あっぱれ!NIPPON珍フード」、インドでは「ワクワクジャパン」を視聴できます(日経8/5)。クールジャパン(カッコいいニッポン)、日本のオシャレと流行がリアルタイムで楽しめるようになります。
2、浮世床(うきよどこ)
いまから200年前、江戸時代の床屋を描いた日本の古典『浮世床』(式亭三馬 岩波文庫 マンガ版 古谷三敏 中公文庫 )があります。日本の理容美容業の原点をここから学ぶことができます。原作は、床屋さんを舞台に江戸の下町、暮らしを駄洒落(だじゃれ)と無駄話(むだばなし)を通して描いています。
『浮世床』から学べるのは、まず床屋さんは地域の生活情報センターであったことです。
町の人々の冠婚葬祭の情報はそこにありました。つぎに床屋さんには職人、教養人、遊び人、老人、若者・・・さまざまな人が集まっていました。意見の違い、価値観の違いによる討論が繰り返される、集会所でした。そしてそのために床屋さんは世代間の人生相談所になっていました。女遊び、金の使い方、酒の飲み方、職業訓練の方・・・前の世代の知恵が新しい世代に引き継がれていました。
理容美容室は、情報センター、集会所、人生相談所であった・・・。こう考えてくると、現代の理容美容業は衰退しています。美容サロンは、ネット、カフェ、コンビニに負けています。日本発の美容サロンは、美容技術だけなく、「生活情報センター」としての伝統を意識すべきではないでしょうか。それこそがクールジャパン(カッコいいニッポン)からきた美容サロンになります。
3、美容師いう仕事
「しかし髪結(かみゆい)もつらい職(しょく)だのう」「つらい所(どこ)か業(しごと)の習(ならい)時分には腰が痛くてからつきり伸びねえぜ。剃刀(かみそり)もった手が棒のようになって櫛へ移る時手子摺(てこずり)切るはナ。日がな一日腰を折(おって)居て俯向(うつむ)いてばかりいるのだから逆上(のぼせ)て目が眩(くら)むはナ・・・」(『浮世床』式亭三馬 岩波文庫 p.91)
今も昔も理容美容業の仕事の辛さは変わりません。
「(髪結というものは)人の機嫌(きげん)気づま取らねえきゃァなりやせん。是(これ)でも大勢の客の内にはむずかしい人があるはな十人が十種(といろ)をそれぞれにあしらって。其人(そのひと)の好きな事に連(つれ)て口を合わせようといふものス。女郎(じょろう)と同じ調子よ・・・」(前掲 p.91)
やっぱり!基本はお客さまとのコミュニケーションです。最近の日本のサービスはマニュアル化されすぎ余計なことをしゃべるサーバー(サービスする人)が増えています。サービスの基本のひとつに「ノー・サービスがグッド・サービス」があります。美容サロンで話しかけられるの嫌い、というお客さまがいることをお忘れなく。日本の美容業も国際舞台を相手にするようになりました。クールジャパンのクールサロン。かっこいニッポンの美容サロンのサービスとは何かを考えようではありませんか。