これから10年、燃料電池車(FCV)で日本の道は変わります。

クリエーティブ・ビジネス塾31「トヨタのFCV」(2014.7.31)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)
トヨタが世界初の燃料電池車を2014年中に発売すると発表しました(日経6/26)。
トヨタは現在ハイブリッド車で世界の先頭を走っています。日本の道と駐車場をよく見てください。トヨタハイブリッド車プリウス、アクアがやたらと目につきます。そればかりではありません。トヨタは生産台数で世界一の自動車メーカーです。さらにトヨタには豊田章夫という日本を代表する素晴らしい経営者がいます。
トヨタのどこが素晴らしいのか。トヨタには創業者の豊田佐吉以来の産業報国(物づくりで社会をよくする)の企業精神があるからです。トヨタ燃料電池車に注目せざるを得ません。
燃料電池車は、水素を燃料に酸素と化学反応させて電気を起こし、モーターを回し車を動かします。走行中は排出するのは水だけ。排気ガスがない究極のエコカーです。補給は水素ステージョン、水素の充填(じゅうてん)は3分、最大航続距離は700kmという優れたものです。
ちなみにハイブリッド車の燃料はガソリン、補給はガソリン・スタンド、排出ガスに二酸化炭素があり、航続距離1500km、価格は250万円前後。電気自動車は、排出ガスなし、補給は充電ステーション、充電時間3時間、航続距離100km、価格は360万円です。トヨタ燃料電池車の発売価格を700万円(政府が200万円の補助)と発表しました。
2、燃料電池車のハードル
1)水素
水素は日本国内で自給でき製造原価も安いものです。輸入依存のガソリンとは違います。まず灯油、液化石油ガス(LPG)、天然ガスから取り出せます。つぎに化学工場などの製造工程で大量に発生します。さらに将来は、再生可能エネルギーで発電した電気を使い、水を電気分解して作ることもできます。問題はクルマ用の水素が、高圧圧縮と輸送過程で割高になることです。燃料電池車の普及のカギは水素の価格です(日経7/11)。
2)水素ステーション
ではどこで、燃料電池車は水素を充填することができるか。水素ステーションがあるガソリンスタンドあるいは専用の水素ステーションです。現在は10数カ所。政府は2015年に全国で100カ所にまで増やすことを予定しています。さらに民間でもJX日鉱日石エネルギーは、水素ステーションを2015年に40カ所、2018年までに100カ所の建設計画を発表しました(日経7/16)。水素ステーション建設は高価です。平均4.8億円の建設費を政府は2.8億円補助します。ちなみに現在ガソリンスタンドは3万4000カ所あります。
3)燃料電池
トヨタ以外はどうか。ホンダは2015年に1000万円以下で、日産は2017年に燃料電池車の発売を予定しています。トヨタは2025年までにハイブリッド車と同等の価格にしたいと考えています。
安倍総理大臣は燃料電池車の普及を成長戦略のひとつにしています。高速道路サービスエリアでの水素ステーション設置に補助金の上積み、燃料電池車の走行料金の無料を検討しています。
3、2020年代
トヨタの世界初のハイブリッド車プリウスが登場したの1997年でした。あれから17年でここまで来ました。燃料電池車が主流になるのは、早くて2020年代、遅いと2030年代前半でしょう。政府が描く燃料電池車用の水素の価格のロードマップによれば、20年代ハイブリッド車と同じ価格の燃料費、30年代にハイブリッド車の半分以下の燃料費を目標にしています(日経7/11)。
未来はそこまで来ています。2020年には東京オリンピック。2027年にはリニア中央新幹線が開業します。東京からトヨタの本拠地・名古屋まではたったの40分、通勤圏内になります。リニアで移動したあとは、排気ガスのないFCV(燃料電池車)でお客さまを訪問する、世の中になっています。日本は空気も水も緑もきれいになり、きっとニッポン晴れが続きます。物づくりで社会をもっとよくなる。トヨタを応援します。