クリエーティブ・ビジネス塾32「原発輸出」(2014.8.5)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、リトアニアの原発
バルト3国をいえますか。北からエストニア、ラトビア、リトアニア。バルト海に面しています。元のソ連領でした。大相撲力士の把瑠都(バルト)はエストニア出身でした。そのバルト3国のリトアニアの原子力発電所を建設を日本の日立製作所が請け負うことになりました。
なぜリトアニアは原発が必要なのか。電力の6~7割とガスのほぼ全量をロシアなどの輸入に依存しているからです。エネルギーの安全保障に危機感があるからです(日経8/3)。建設地はリトアニア東北部のビザギナス、炉型はABWA(改良型沸騰水型軽水炉)で140万キロワット級1基です。稼働は2022〜2024年でリトアニアだけでなく、バルト3国に電力を供給することを考えています。
同じようなことが、大相撲力士の琴欧州と碧山のプルガリアでも起こっています。東芝の子会社ウエスチングハウス(WH)が、ブルガリアの国営電力会社から原子力発電設備1基を受注することで、基本的に合意しました(日経8/2)。
2、日立、東芝、三菱
世界には426基の原発があり、81基が建設中、さらに中国、ベトナム、トルコなど世界で受注競争が繰り広げられています。日立製作所、東芝、三菱重工業、1国で3社の原子力発電メーカーあるのは、日本だけです(「ドキュメント原子力戦争8」田原総一郎 『文芸春秋8月号』p.402)。
日立製作所は、リトアニアだけでなく、英国にも進出しています。すでに2基の建設が決定、さらに6基の建設計画があります。日立は原子力の世界をロシアや中国だけにまかせておくことはできないと考えています(前掲p.409)。
東芝は、ブルガリアのほかに、アメリカで4基、中国で4基建設中。フィンランドで建設計画を進めています。BWR(沸騰水型原子炉)が得意の東芝の話題は、原子力潜水艦用に開発されたPWR(加圧水型原子炉)のウエスチングハウス(WH)を買収したことです。東芝は、40年前の設計基準できた福島の事故で原発全体の安全性を論ずるのは、車のT型フォードを例にしていまのトヨタの車全体の安全性を議論するようなもので、非科学的だとしています(前掲p.406)。
三菱重工業は、トルコで4基原子炉を建設予定しています。ほかにベトナムの第2原発も日本が受注しましたので、三菱になる可能性があります。福島はBWAですが、三菱の得意はPWAです。反原発、脱原発の意見を持った日本の大物政治家は、原発の技術革新に対して聞く耳を持たない。三菱は嘆いています(前掲p.404)
3、高速増殖炉
1)ASTRID(アストリッド)
三菱、東芝、日立の3社とも原発の未来は、高速増殖炉(Fast Breeder Reactor)にあると考えています。特徴は、まず燃料として使用済みのプルトニウムと劣化ウランを使うこと。つぎに核燃料リサイクルができる、燃やしながら新しい燃料を作ります。そして冷却剤に金属ナトリウムを使うので800℃でも沸騰せず高圧をかける必要がない。安全性が違います。注目はフランスの実証炉ASTRID(アストリッド)です。2020年〜25年に運転が始まります。ウランは3000年にわたって使えるようなる。高レベルの放射性廃棄物の体積は1/7になる。さらに、10万年かかる放射性廃棄物の無害化は300年になる。高速増殖炉では、さまざまな技術革新が期待されています(下村文科相の発言から「ドキュメント原子力戦争7」田原総一郎 『文芸春秋2014.7』p.401)。
2)4S(Super-Safe , Small & Simple)
東芝が2014年に米国で着工予定の原子発電所です。燃料はウラン・プルトニウムの合金、30年間無交換。冷却剤は液体ナトリウム。小型で安全性が高く、都市周辺で建設ができる原発です。
3)TWA(Traveling Wave Reactor=進行波炉)
ビル・ゲイツの小型原発。米国テラパワーと東芝が共同開発しています。劣化ウランが原料で増殖炉の一種です。テラパワーはビル・ゲイツが出資で話題になりました。
リトアニア、ブルガリア、中国、ベトナム、英国、フランス、米国・・・。原発とは世界を考えることです。