クリエーティブ・ビジネス塾9「日蓮」(2015.2.25)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、おかげさんで
「儲かりまっか?」「おかげさんで、ぼちぼちでんな!」関西では毎日交わされる、大阪商人のあいさつです。
商売は順調ですか。まあまあです。そのまえにつく「おかげさんで」とは、お陰参り、伊勢神宮に参拝することです。つまり商売は、神さま仏さまのお陰で、どうにかやっていけてる、という意味です。
大阪には御堂筋という大きなストリートがあります。それは北御堂と南御堂、ふたつのお寺を結んでいます。ここにお店を持つことが日本を代表するビジネスパースン、近江商人の夢でした。そして「商売忘れてもお勤め忘れるな」というくらいに、仏教信仰を大切にしました(『何のために生きるか』稲盛和夫、五木寛之 p.94~95 致知出版社)。近江商人が残したビジネスの教訓「買い手よし、売り手よし、世間よし」も、仏教信仰のバックグランドがあって生まれた言葉と考えられます。
そしてもうひとつ仏教には「自利利他」(じりりた)という教えがあります。自分の利益になることそして他人の利益になることをしなさい。京セラという企業を成功させ、日本航空を再生させたビズネスパースンのお手本である稲盛和夫は言います。美しい優しい思いやりのこころで利他の帆を掲げておけば必ず他力の風を受けることができる(前掲p.239)。
2、山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)
いまから70年前。戦争に負けた日本は占領軍により、アニミズム、原始宗教の国と馬鹿にされ、幼稚な民族としての扱いを受けました。たしかに日本には、神道、儒教、仏教、多神教の国です。ところが現在の世界を見るとどうでしょうか。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。一神教の国同士が争っています。一神教とは他の神を認めません。邪宗を信ずるものは亡ぼしてもよいという教えがあり、それが聖戦という戦争になります。多神教は違います。神道は八百万の神(やおよろずのかみ)、自然のすべてに神が宿ると考えます。
もはや一神教がより進んだ宗教であるとはだれも言えません(『一神教の闇』安田喜憲 ちくま新書)。
もうひとつ一神教と多神教が根本的に違うところがあります。一神教は森を破壊する文明、多神教は森を大切にする文明であったことです。ヨーロッパの森林の80%はキリスト教徒によって破壊されました。ドイツの黒い森は森林伐採の後に植樹されました。スコットランドは美しい田園風景は森林伐採の結果です。さらにエーゲ海の澄んだ水は、周りに森林がないから、滋養分のないやせた水が流れ込んだ証拠でしかありません。かつてキリスト教は地球環境を破壊しました(『森を守る文明 支配する文明』安田喜憲 PHP新書)。
対して仏教では、「山川草木悉皆成仏」(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)、山も川も草も木も、みなことごとく、仏さまになる。人間も単なる宇宙を構成する一つの要素でしかありません。みな仲良く暮らしていかなければなりません。人を殺してはいけない。動物すらも。殺生(せっしょう)は許されません。しかし人間は魚や動物の命を食べなくてはならない。だから、「いただきます」と頭(こうべ)をたれるのです。
3、日蓮
1222年に千葉の小湊村の貧しい漁師の家に偉大な宗教家が生まれました。日蓮宗の日蓮です。
日蓮はまず他の僧侶のようにエリートではありませんでした。留学経験がありません。つぎに無数の教派の存在に疑問をもち、釈迦の最後の言葉がある「法華経」に帰れと主張します。そしてドンツク、ドンツク。元気よく太鼓をたたき、「南無妙法蓮華経」(わたしは法蓮華経を信じます)と唱える日蓮宗を始めます。
日蓮が日蓮宗が始めて以来760年。日蓮宗は現在、日蓮正宗、霊友会、立正佼成会、創価学会など2000万人を越える、最大の仏教会派になっています。
法華経とは何か。作家の石原慎太郎氏が『法華経を生きる』(石原慎太郎 幻冬社)のなかでおもしろいエピソードを紹介しています。
<若い頃、流行作家だった石原慎太郎は、日本に数少ないスポーツカーで銀座のバーと逗子の自宅を、とてつもないスピードでぶっ飛ばして往復していた。ある夜、タクシーの運転手から、あんたほど運転がうまい人はみたことがない、と話しかけられる。石原は不思議に思い、じっと考える。そして、・・・それは数年前に亡くなった父親が注意しにきてくれた、とさとる。>
法華経は、さとり、気づき、修行するのが人生、と教えます(『法華経はなにを説くか』久保継成 春秋社)。神仏に感謝し、利他を考え、修行し、仕事の取り組んだ下さい。これが日本人です。