コロナへの敗北とは、医学の敗北と近代理性の敗北です。

TED TIMES 2022-04「ポストコロナの生命哲学」 1/22 編集長 大沢達男

 

コロナへの敗北とは、医学の敗北と近代理性の敗北です。

 

1、医学の敗北

現代の医学は、新型コロナウィルス感染症(Covid-19)に敗北しています。医学には全くに素人の私でも言えます。

第1に、医学に研究者は、この病気に対して「新型肺炎」という誤った言葉を、発生から2~3ヶ月間も使い、私たちを誤って誘導しました。

第2に、医学は感染経路を全く明らかにすることができませんでした(最近使われるようになった、「市中感染」とはなんでしょうか)。

感染経路を明らかにしようとする努力さえしませんでした。感染者数という数字だけで私たちを脅迫することしかできませんでした。

2021年末に、感染者数が一時期に激減したときに、なぜ減ったか、どの医学者も説明できませんでした。

第3に、医学は、ワクチンが完成すれば一件落着を、早くから約束しました。ところがどうでしょう。ワクチンの開発は遅れたばかりでなく、ワクチンの種類によって効力に差がある、副反応がある、さまざまなワクチンの問題が露呈しました。挙げ句の果てに、多くの人がワクチン摂取した後に、爆発的感染が起こっています。

2、『ポストコロナの生命哲学』(福岡伸一 伊藤亜紗 藤原辰史 集英社新書

現代医学の敗北以前に、コロナは西欧的な近代理性の敗北から生まれたと、『ポストコロナの生命哲学』は指摘します。

第1に、なぜコロナは生まれたか。人間活動が地球環境を破壊した結果、生物の生息地が大きな変化にさらされ、森林破壊によって、そこに棲んでいたウイルスや細菌も、森林から一緒に出てきてしまう。いわば難民のようになって本来接触しない動物と接触するようになり、人間にウイルスが引っ越してきた。人災である(p.106の要旨)。

第2に、人類は科学技術の力によって、進歩し、繁栄してきた。論理(ロゴス)で自然(ピュシス)を細かに分け因果律を見出してきた。しかし制御不能のピュシスとしてのウイルスが溢れ出て、自然が人間に逆襲してきた。新約聖書ヨハネによる福音書は「はじめに言葉(ロゴス)があった」で始まる。ロゴス哲学の現代文明は行き詰まりを見せている(福岡伸一 『文藝春秋』2022.2 p.186)。

第3に、さらに、ウイルスをピシュス(自然)と捉えると、悪者ではなく利他的存在であるといえる。生命の遺伝情報は親から子、子から孫へと垂直に伝達されるが、ウイルスは個体から個体、種から種へ水平移動して遺伝情報を伝える。進化の流れの1個のピースである(p.42)。つまり共存である。

3、基本的人権

医学の敗北、近代理性の敗北は、ほぼ証明されました。

山際壽一と福岡伸一の対談『ポストコロナの生命観』(『文藝春秋』2022.2 p.180~9)では、デカルトの「我思う、故に我あり」ではなく西田幾太郎と今西銀司の「我感じる、故に我あり」を、結論にしています。ロゴス以前の感性でピュシスを捉える、そのとおり、ひとつのいい結論です。

ところが福岡伸一は『ポストコロナの生命哲学』で、とんでもないことを言い出します。

「種の保存が唯一無二の目的である遺伝子の掟に人間は背き、そこから個体の生命の尊厳や自由、あるいは基本的な人権が出発しているということ忘れてはいけません」(p.139)。

福岡伸一基本的人権の信者でした。

『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリは、基本的人権は白人帝国主義とし、『ナショナリズムの美徳』のヨラム・ハゾニーは、基本的人権ジョン・ロックとカント(実際、カントの未開人と自由の議論など聞いていられません)を批判しました。

基本的人権は西欧キリスト教世界で発明されたもので、森林を破壊し、インディアン(北米大陸の原住民)・黒人奴隷を虐殺し、日本に原爆投下、東京大空襲の無差別爆撃をしたものです。

ロゴス哲学の現代文明が行き詰まりを見せていると指摘する福岡伸一が、リベラリストのように基本的人権を云々するのは理解できせん。