「自由主義者たちは、1980年代のソヴィエト連邦の指導者たちに似て、どうして歴史が定められた道を逸れてしまったかを、理解できないでいる」(『21Lessons』 p.20 ユヴァル・ノア・ハラリ 柴田裕之訳 河出書房新社)。

TED TIMES 2021-1 元旦社説 1/1 編集長 大沢達男

 

自由主義者たちは、1980年代のソヴィエト連邦の指導者たちに似て、どうして歴史が定められた道を逸れてしまったかを、理解できないでいる」(『21Lessons』 p.20 ユヴァル・ノア・ハラリ 柴田裕之訳 河出書房新社)。

 

朝日新聞・・・長崎原爆資料館の「長崎からのメッセージ」は、核兵器、環境問題、新型コロナの世界規模の問題は根っこが同じ、と指摘する。いずれの、現代文明が産み落としたグローバルな巨大リスクである。「グリーンリカバリー(緑の復興)」はコロナ禍で傷んだ経済の再生を生態系保存と連動させる。米国もパリ協定に復活し、日本も2050年までに実質排出ゼロに踏み切る。しかし偶発的な核惨事には隣り合わせである。潮目の変化がはっきりしている。山を動かそうではないか。

○朝日は根本的な哲学を変える必要がある。核兵器原発、自然破壊、排出ガス、新型コロナ、パンデミックを根っこが同じと論ずることはできない。僭越だが、長崎は結論にすべき。主張2 説得1 提案4 総合3

 

毎日新聞・・・民主政治はコロナに対応できない疑念がある。米国が感染者で世界最悪で、中国は強権政治で感染拡大を防いだからだ。格差と分断が反グローバリズムポピュリズムを生んだ。日本でも正規と非正規、東京と地方、男女の格差がある。個人の力ではどうしようもない。しかし安倍前首相も菅首相も民主政治をしてこなかったが、再生の目はある。米大統領選挙の高い投票率、ハリス次期副大統領の登場、そして日本でも前・現内閣に支持率が落ちている。民主政治は復元できる。

○昨年トランプを否定し民主政治の危機を論じ、今年バイデンの勝利に酔っている。リベラルの「新聞」が民主政治を論じられるのだろうか。主張3 説得2 提案1 総合2

 

読売新聞・・・経済を救うには、まず人を救え。2010年に保健所などの人員強化を提言されていたが、忘れ去れられ大混乱が生まれた。まず医療体制の強化。中国は勢力を増し、世界は混乱と動揺、協調と競争の大変動にある。日本は脱ガソリン、デジタル技術、宇宙技術で多国間強調に貢献すべき。そのためには国力。デジタル技術の立ち遅れは技術者を大切にしないからである。人間力こそ国力。公共機関の信頼度調査で日本の国会は23%で最下位。政治の安定と指導者の信頼も必要である。

○長大社説はやや冗長。技術の立ち遅れが、特許料の支払いで損失をもたらすと、警鐘を鳴らしたのはいい。技術を取り上げるのは読売の特徴で好感が持てる。主張2 説得1 提案4 総合3

 

日本経済新聞・・・多くの問題は、感染症にせいではなく、世界の構造変化で生じたものである。コロナ封じ込めが最優先だが、1)経済の再生にはデジタル化、雇用市場の改革が必要である。2)コロナ対策では米国より権威主義的な中国が効果をあげ、経済回復も早かった。民主主義が格差、国民の不満を解決できるか、問われている。3)日本は国際協調の立て直しに貢献すべきだ。コロナ対策では途上国へのワクチンの提供、地球温暖化対策では、最大の温暖化ガス排出国の中国の協力が必要になる。

○コロナ、経済、民主、国際の再起動。指摘は正しいが、どれも難題。とくに民主主義の再起動と中国問題をどうするのか。具体的な提案をして欲しい。主張2 説得2 提案2 総合2

 

産経新聞・・・平成元年の天安門事件に当時の宇野総理は何も発言しなかった。加えて外務省は西側諸国の制裁措置へ反対する文書を作成していた。さらにサミットでは中国への制裁を緩やかにしようとした。共産党を救ったのは日本である。まだある。戦時中の毛沢東を救ったのも、日本である。日本軍が国民党と戦い、国共合作を促し、日本軍の兵器で国共内戦に勝利させた。チベットウイグル、香港で弾圧をしている習近平の来日を許してはならない。中国共産党を3度も助けてはならない。

論説委員長・乾正人の署名論文。問題を中国に絞ったのは、慧眼。しかし習近平の中国をあてにしている企業はどうなる。そのジレンマを「足」で書いて欲しかった。主張5 説得3 提案2 総合4

 

 

 

東京新聞・・・分断に未来はない。バイデン政権による支え合い協調の未来が始まる。つぎに核兵器を違法とする国連の核兵器禁止条約が発効する。対立は虚しい。世界は核廃絶へ協調する。しかし問題は人間自身である。1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」で、アインシュタイン博士は核兵器の原理を発明した科学者の罪悪感から、核危機への警告、思いやりと「人間性」の発露を世界に訴えた。しかし被爆国は条約に否定的、「人間性」の流れに、この国だけが取り残されているのではないか。

○論旨は素晴らしい。しかしその立ち位置は、トランプ批判と自民党政権批判。真の問題は、その背後にある「人間性」の西欧哲学ではないだろうか。主張3 説得2 提案1 総合2