クリエーティブ・ビジネス塾28「米朝会談」(2018.7.9)塾長・大沢達男
「米国は核保有国とだけは交渉する、ゆえに日本も核武装すべし。」E・トッド
1、米朝会談
2018年6月12日にシンガポールで世界史を変えるような歴史的会談がおこなわれました。米国トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長の「北朝鮮の非核化」を巡る会談です。共同声明は以下の内容です。
1)"establish new U.S.-DPRK relations"米朝は新たな関係を構築する。
2)"build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula."米朝は永続的で安定した朝鮮半島の平和体制構築に努力する。
3)"work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula."北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に取り組む。
4)"recovering POW/MIA remains"北朝鮮は(朝鮮戦争の米国人)捕虜や行方不明の兵士の遺体収容をする。
世界が注目してきたCVID(complete,verifiable,irreversible,dismantlement=完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」)は実現しませんでした(日経6/13)。
2、核保有国
フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは会談が始まる前から、「米朝首脳会談は茶番劇にしかならない」(「日本は核を持つべきだ」エマニュエル・トッド『文芸春秋2018.7 p.99)、と予言していました。
なぜなのか。第1。米国は敗北を続け、病的なナショナリズムを発現しています。
米国は欧州でドイツに覇権を奪われて、中東でも負けています。シリアの軍事情勢をコントロールしているのは、ロシアです。アジアでも、中国の東シナ海での動きを止めることが、できませんでした。
米国は、共和党(高等教育を受けていない白人)と民主党(高学歴の白人とヒスパニックと黒人)に分裂しています。ヒラリー・クリントンの「帝国としてのアメリカ」、「グローバリズムのアメリカ」、「自由貿易のアメリカ」とトランプの「孤立主義のアメリカ」、「アメリカ・ファースト」、「保護貿易のアメリカ」のふたりの主張があります。エリート主義(エスタブリッシュメント)とポピュリズム(トランプ支持層)の対立です。
しかし「二つのアメリカ」は、恣意的で冒険的な外交政策で、分裂を解消します。
第2。その代表的な例が、「イラン核合意破棄」です。米国は「二つのアメリカ」がひとつになって、最悪の選択をしました。イランは核開発活動を制限し、米英仏独中露およびEUは金融制裁を解除する。米国は2015年(オバマ政権)の合意を破棄し、最高レベルの経済制裁を科すことにしました。
第3。米国は、このことにより和平交渉をしたいなら核兵器を持て、のメッセージを世界に向けて発信しました。核兵器を諦めたイランには攻撃的に出て、核兵器を持った北朝鮮とは交渉する。米国は核拡散を奨励する外交を展開しています。
米朝会談は茶番に終わる。つまり、核兵器のおかげで米朝のテーブルにつくことができた北朝鮮が、核兵器を廃絶することなどあり得ないからです。
3、核の傘
エマニュエル・トッドは議論を進めます。
まず、「核の傘」は幻想である。まず核は例外的な兵器で使用するリスクは極大。核を自国防衛「以外」に使うことはない。米国が自国の核を使って日本を護ることは「絶対に」あり得ない。中国や北朝鮮は、米本土を攻撃できる力を持っているからです。「米国の核の傘」はフィクションで、実は存在しません。
だから、日本は核を持つべきである。中国と北朝鮮。核の不均衡は国際関係の不安定にしている。ヒロシマ、ナガサキの悲劇は、世界で唯一米国だけが核保有国であったとき起こっている。
さらに、核とは戦争の終わり。戦争を不可能にするものである。相互破壊の戦争はできない。
その通りです。反論できません。しかし、日本で核武装すべきの主張をすることは、それ以上に難しい。
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核問題を離れ、エマニュエル・トッドは貴重な提言をします。国家が思い切った少子化対策をすること。これが安全保障政策以上に日本の存亡に直結する最優先課題である。これは実行可能です。
いまのままでは日本民族は30世紀の滅びます。私は神々と祖先を大切にする日本人として生きます。