クリエーティブ・ビジネス塾8「仮想通貨」(2018.2.19)塾長・大沢達男
「仮想通貨」に手を出すな!
1、ビットコイン
ビットコインで儲けた人の話を聞きませんか。あなたもそうろろと、取引に乗り出そうと検討を始めていませんか。結論を言います。「仮想通貨」に手を出すな!
理由のその1・・・仮想通貨を持つなら、専門家が書いた複数の本を読んで、仕組みをしっかり理解してから。開発者の状況、ソースコード(プログラミングの文字列)、技術的な特徴、仮想通貨の使い道を確認することです(本間善實 日本デジタルマネー協会代表理事 『週間東洋経済1/27』 p.45)。
理由その2.・・・仮想通貨は「通貨」ではない、貨幣の3大機能があります。支払い手段(流通機能)、価値の尺度、価値の保存(貯蓄)。仮想通貨はどの機能も果たしていません。通貨として使えません(岩下直行 京都大学公共政策大学院教授 p.45)。仮想通貨はお金ではありません。
理由その3。・・・現行の法制度では利用者は保護されていない。仮想通貨は金融商品取引法の対象になっていない。現在のような価格上昇と多くの人が取引に参加することを想定していなかったからです(神田潤一 元金融庁企画官 p.44)。利用者はハダカ同然、誰にも何にも守られていません。
2、仮想通貨
1)ブロックチェーン・・・仮想通貨を支える根幹技術。仮想通貨は政府により管理されていません。非中央集権的で管理主体が存在していません。取引記録は分散型台帳に記録されています。これが「ブロックチェーン」です。一つのブロックの中に一定期間内の取引データが格納され、ブロック同士がチェーン状につながっています。取引履歴の記録はインターネットで利用者全員にチェックされ、取引が正しいか相互に監視されています。記録の改ざんはほぼ不可能です。
2)仮想通貨・・・仮想通貨の代表は「ビットコイン」です。2008年に「サトシ・サカモト」によって構想され、09年に実稼働が始まりました。時価総額は20兆〜30兆円、トヨタ自動車の時価総額に相当する強大企業です。ビットコイン以外の仮想通貨をアルトコイン(alternative coin)と呼びます。全世界で約1400あります。代表的なものは、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュなどがあります。
3)取引所・・・仮想通貨市場の主役は日本人で、取引の過半は日本円です。ビットコイン取引所に世界ランキング上位5社は、ビットフライヤー(日本)シェア21.70%、ビットフィネックス(香港)12.63%、オーケーイーエックス(中国)8.15%、コインチェック(日本)8.04%、ジーダックス(米国)6.03%。注目はコインチェックです。
3、コインチェック
1)だれが盗んだか・・・2018年1月26日午前0時2分から21分のわずか20分で仮想通貨取引所コインチェックから576億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流失しました。コインチェックが異常に気がついたのは午前11時25分。12時38分ネムの売買停止。そして23時30分に記者会見で流出を公表しました(日経1/30)。コインチェックの社長は和田晃一良(わだこういちろう 27)で東工大工学部経営システム工学中退。在学中の2012年にコインチェックの前身を大塚雄介と創業しています。大塚雄介(37)は早稲田大学大学院卒、専門は量子理論物理学。韓国では北朝鮮のサイバー部隊により、仮想通貨交換業者が攻撃されました。犯人は北朝鮮の可能性が高いとされています(日経2/3)。
2)なぜ流出したか・・・まず「コールドウォレット」で管理していなかった。ネットワークから分離して、紙やUSBで秘密鍵を管理していなかった。ホットウォレットとは、ネットワークに接続して通貨を管理する方法で、サイバー攻撃を受けやすい。つぎに「マルチシング」を取り入れてなかった。秘密鍵を複数に分割して別々に管理して、ハッキングの難易度を高め、盗難の可能性を減らすようにしていなかった(日経1/28)。
3)どうやって返済するのか・・・コインチェックは約26万人に総額460億円を返済すると表明しました。エッ!?そんなに儲かっているの?昨年12月のビットコイン取引額は3.2兆円、月刊収益は300億円を超えている。ぬれ手に粟。「三方良し」は実現しているのでしょうか。怖い。近づくべきではありません。
「仮想通貨」に手を出すな!おわかりいただけましたか。1億円以上の資産を持つ「億り人(おくりびと)」、10億円以上の資産を持つ「自由億(じゆうおく)」は、噂話だけで結構。しかし「仮想通貨」の全面否定はできません。金融業界はビットコインを無視できなくなる(野口悠紀雄 早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問 p.44)。そして「ブロックチェーン」には、医療に選挙にと、無限の未来があります。