クリエーティブ・ビジネス塾12「原発」(2018.3.19)塾長・大沢達男
1、福島
あれから7年経ちました。福島のみなさんにお見舞い申し上げます。
浪江(なみえ)町の方々が住む、本宮市恵向(えむかい)の仮設住宅に、励ましのライブに出掛けさせていただきました。ぼくはフォトグラファー(素人)としてですが、4年前と2年前の2度です。
2年前にはビックリしました。仮設住宅の狭い通りをキックボードで走り回る子ども達を目にしたからです。
あー、ここでもうあの子たちの青春がはじまっているんだ。ここがふるさとになるんだ。
時間は残酷に過ぎていきます。浪江は、相変わらず「帰宅困難地域」です、帰宅できるのはいつになるのでしょうか。子ども達の青春は、このまま見知らぬ土地で続くのでしょうか。
東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業は2040~2050年まで続きます。
大きなハードルが3つあります。まず、事故で溶け落ちた核燃料の取り出しです。原子炉外に散らばった燃料の取り出しは世界でも例がありません。工程表では19年に作業を始める号機を決定し、それから取り出しのための技術開発です。溶融燃料を取り出しは、21年度内です。つぎは使用済み燃料の取り出しです。2018年には3号機で始まります。1、2号機では23年度内に搬出が始まります。そして汚染水の問題があります。原子炉建屋に地下水、雨が流れ込むと汚染水になります。現在では1〜4号機を1.5キロの凍土壁が取り囲んでいます。汚染水の処分方法も問題です。20年度内にはめどが立ちます(日経2/26)。
すべてが終わるのは30年後、子ども達の未来と健康はどうなる、原発は悪魔の発明でしょうか。
2、中国
原発は人類を救う技術革新として、これからも世界で活躍し続けます。注目は、日本の10倍の人口を抱え、大気汚染が深刻になっている中国です。
昨年11月、米国原子力ベンチャーのテラパワーが中国国有原子力大手の中国核工業集団(中核集団)と合弁会社を設立しました。次世代原子炉「TWR」の5年後の実用化が目標です。TWR(Traveling Wave Reactors=進行波炉)は、低コストで高い安全性が売り物です。ウランから燃料を作る際に生じる劣化ウランを燃料として使い、最長100年間、燃料を交換せずに動き、廃棄物も少ないというものです。現在の原子炉は加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR)です。福島はすべてBWRです。テラパワーとはビル・ゲイツが会長を務める米国ワシントン州のテクノロジー企業です(日経2/12)。
次世代の原子炉開発はビル・ゲイツのTWRのように、小型にシフトしています。カナダのテレストリアル・エナジーの「溶融塩炉」は水を使わず水素発生が少ない。米ヒュースケール・パワーの「小型モジュール型軽水炉」は1基5万キロワットで12基まで連結可能。日本原子力開発機構の「高温ガス炉」は、水素、水水蒸気爆発を起こしません。次世代(第4世代)の原子炉は、まず発電能力の小さい小型、つぎに炉心溶融を起こしにくい設計、そして建設費を押さえたモジュール構造です(日経2/19)。
中国では石炭の第1次エネルギーに占める割合は6割超。これが大気汚染の原因です。30年までに石炭の割合を5割未満に引き下げ、原発の発電能力を4倍に伸ばす、原発は中国を救う神の発明になります。
3、青森
震災以後原発関連の仕事がなくなり困っている人がいます。青森県下北半島です。
Jパワー大間原発の工事は中断です。作業員は激減、ホテル・民宿の経営者は、借金返済に苦しんでいます。東北電力の東通原発は操業停止、作業員はいなくなりました。東京電力の東通原発も工事中止です。村のタクシー会社の利用者は激減しています。
かつての下北半島は沼地や荒野、原発で豊かになりました。青森県には電源3法交付金が1981年以降に3167億円交付されています。青森県と電力業界と持ちつ持たれつの関係にあります(日経2/26)。
小泉元首相の有名な反原発があります。原発の安全、安価、安心(クリーン)はすべてウソ、私は騙されていた。日本は原発なしで震災以後やってきたし、やっていけるというものですが、すべてが疑問です。
原発を利用しないのはイタリア、オーストリア、オーストラリア。将来的に利用しないのは韓国、ドイツ、ベルギーなどの少数。米国、フランス、インド、ロシア、そして中国、大多数の国々が原発を積極的に利用することを考えています。原発は、悪魔の発明でしょうか。神の発明でしょうか。