クリエーティブ・ビジネス塾16「超高層木造ビル」(2018.4.16)塾長・大沢達男
なんと350mの超高層木造ビル、住友林業の夢に、拍手です。
1、W350計画
若者たちは空に憧れます。バベルの塔のような高いビルに登りたいと願います。
「なぜ、住友林業は、350mの超高層木造ビルなんて、つくるんだろう?」の住友林業の全ページ見開き広告に驚きました(日経2/15)。1)住友林業は2041年に創業350年を迎える。それを記念して都市のまんなかに地上350m・70階建ての超高層木造ビルディングをつくる計画を立てている。2)木の価値を高める技術において世界一の森林会社でありたい、その情熱をかたちにしたい。3)人と木が地球環境のなかで、より良く共生できる「環境木化都市」に取り組む。
イラストがきれいです。鉄とコンクリートのビルの中に木と緑のビルが描かれています。超高層ビルという概念を超えています。東京砂漠に突然現れたオアシス、パラダイスのようなイメージがあります。
第1はメリット。木材を使うことで林業を活性化します。健やかな森林や木を育てるサステナブル循環が生まれます。超高層ビルに使われる木材は、住友林業が1年間の建設する注文住宅8000棟分にあたります。鉄骨材を使うと施工時に二酸化炭素を出しますが、木材では22%に抑えられます。内壁が木材を使うと空調が要らない。鉄筋コンクリート造りに比べ消費電力が減ります。
第2と第3は、技術的な問題点。まず木材の耐久性です。雨にぬれても耐久性が落ちない、塗料の開発が必要です。15~20年に外壁を取り替える方法も検討されています。次は木材の耐火・耐震性です。火に強い部材の開発が必要です。耐震には、木鋼ハイブリッドラーメン+鉄骨制震ブレースチューブ架構の構造システムで対応します。木と鉄=9:1のハイブリッドです。
2、超高層ビル
高さ200m以上(およそ40階)のビルを超高層とよびます。2018年は超高層ビルの建設ラッシュで、世界で前年比6割り増、約230棟が完成する見通しです。年末時点で世界の超高層ビルは1500棟を超え、08年の約3倍になります。超高層ビル建設のメッカは、約130棟が建設される中国です。北京、上海、香港の大都市から、深圳、瀋陽などの内陸部に広がっています。今年完成予定の高さの上位10棟中の9棟は中国です。第1位は北京のオフィスビル「中国尊」で528mです。10位のビルでも343mで、日本一「あべのハルカス」の300mを超えます。
悲しいかな日本での超高層ビルの建設計画はありません。
3、霞ヶ関ビルディング
「誰かの挑戦を、空は待っていた。」
「1968年4月12日。霞ヶ関ビルディングが竣工しました。日本初の超高層ビル、地上147m、36階建て。この1棟のビルから、日本の街づくりは大きな一歩を踏み出したのです。国土の狭い日本において、「空」という可能性を開拓した。緑地や広場を敷地内に配することで、都市に人間性をとり戻す流れを生み出した。このビルを完成させるための新しい発想と工夫が、次なるイノベーションの礎となった。あらゆる点で、日本の都市開発、日本の街づくりのターニングポイントでした。(以下略)」(日経4/12)。
数十人のダークスーツを着た日本のビジネスパースンが、整列した椅子に座り空を見上げています。年配の立派な人ばかりです。それも男性ばかり、よく見ると最前列の17人の中にたったひとり、紋付を着た女性の姿があります。霞ヶ関ビルディング竣工50年。三井不動産の企業広告です。
1968年とは、東大全共闘、成田空港建設阻止闘争、ベトナム戦争、キング牧師暗殺、東名高速道路と名神高速道路連結、渋谷西武開店、石原慎太郎参院選挙でトップ当選、週刊少年ジャンプ創刊、ザ・タイガース後楽園球場で初のスタジアムライブ、10/21国際反戦デーで学生が新宿駅を占拠、三億円強奪事件の年でした。
「68年は旧来の文化的・思想的規範に対する、新たな対抗文化(広義のサブ・カルチャー)からするヘゲモニー闘争でもあった」(『1968年』p.9~10 絓秀実 ちくま新書)。「ロゴスの敗北、パトスの勝利」です。若者たちは闘争に秋波を送りながら、クルマとロックミュージック、おいしい生活とマンガにいかれていました。
『上を向いて歩こう』(作詞:永六輔 作曲:中村八大 61年)で涙がこぼれないように空を見上げていた若者たちは、『この空を飛べたら』(中島みゆき作詞作曲78年)と思うほどに空に憧れるようになっていました。2014年、350mの超高層木造ビルからはどんな空が見えるのでしょうか。