東京都庭園美術館を出たら、土砂降り、お先真っ暗でした。

TED TIMES 2021-12「20世紀のポスター」 3/17 編集長 大沢達男

           

東京都庭園美術館を出たら、土砂降り、お先真っ暗でした。

 

1、1964東京オリンピック

原宿駅明治神宮側に降りてすぐに、代々木の体育館があります。国立代々木競技場の第1体育館と第2体育館です。NHKのニュース番組や天気予報の前後によく出てくる日本建築の傑作、世界史に残る傑作です。

まず形がユニーク。吊り構造、第1は2本の支柱、第2は2本の支柱で支えられています。スタジアムの中に柱がありません。観客は競技が見やすい、何にも邪魔にされません。しかも外形は有機体のようで、屋根はお城や五重塔の曲線を思わせます。隣の明治神宮とうまくマッチしています。完成から半世紀たっているのに、輝きは永遠、見ていてときめきます。

設計の丹下健三自身が、建築秘話を、暴露しています。建設予算オーバーで、丹下は設計変更を命じられます。素人でもわかるように、設計変更などできるわけがありません。オール・オア・ナッシング、このデザインでいくかどうかの判断です。困り果てた丹下はある人に相談をもちかけます。

ときの有力な政治家・田中角栄です。丹下から電話で話を聞いただけで、田中は「よっしゃ!」と即断、行動を開始し設計通り建築できるように関係者を説得します。代々木体育館は田中角栄が作ったようなものです。

2、20世紀のポスター

東京都庭園美術館で、「20世紀のポスター[図像と文字の風景]ービジュアルコミュニケーションは可能か?」を、見ました。

主として戦後のヨーロッパのポスターを100点以上並べた展覧会です。デザインの技比べです。基本は文字を上手く並べただけ、プラスして幾何的な図形、人物の写真を少々。いわば平面の音楽です。見るものは紙の上のリズム、メロディ、ハーモニーを耳を傾ければいい、ときどき入ってくる、ボーカルやノイズも楽しめばいいのです。  

○(作品番号12)「第4回特別コンサート/ベートーヴェン」。1955年コンサート告知ポスター・スイス。真ん中に「beethoven」とあり、まわりにレコードのような円盤の図形があり、ところどころで途切れています。必要な情報は、キャッチコピーの下のグレーの空間に綺麗に収められています。画面の右がグレー、左と上が黒、グレーと黒の回転で音楽が鳴っています。

○(作品番号20)「グスタフ・マーラー交響曲第8番/第5回6月祝祭コンサート」。1960年コンサート告知ポスター・スイス。必要なコピー・メッセージは、画面の下、4分の1にすべて、収められています。ヴィジュアルは、細い色付きのアイスキャンディーのような図形が、横に10列、縦に5列、びっしり並べえられています(列数は数えたわけではありません。あくまでも印象)。色彩のステックで 音楽が聞こえてきます。

○(作品番号61)「ソヴィエト連邦展/チューリッヒ工芸美術館展覧会」1929年展覧会告知ポスター・ロシア。これはちょっと時代が違い、ロシア構成主義の作品です。幾何学的な画面構成、サンセリフ体(ゴシックと考えて良い)、写真が、構成主義の特徴ですが、このポスターでは、少年と少女の目が重なりアンドロイドのよう、ソ連邦の明日を予言しています。

デザインとは、図案、意匠、模様、装飾、柄、造形、設計、計画、構想です。デザインとは、美と用と商です。美しさ、使いやすさ、売れるための創意工夫です。

3、2020東京オリンピックパラリンピック

文字と図形のソナタ、コンチェルト、シンフォニーを聞いた後、美術館の外に出たら、東京は土砂降り、お先真っ暗でした。

まず、新しいオリンピックのエンブレムはあれはなんでしょう。悪いデザインではない。でも好きになれない。否定された佐野研二郎案が忘れられません。なぜ救ってあげなかったのでしょうか。商標権、著作権なら、金で解決できたはず。それをみんなで、よってたかってデザイナーを叩き、悪者にしました。日本という国の人々は最悪です。

そして完成した新国立競技場。木造のコンセプトは素晴らしい。しかしハートに火がつきません。空から舞い降りてきたようなザハ・ハディト案が忘れられない。あれこそデザインです。東京の未来はあそこにありました。

平成の日本には、ポリティカル・コレクトネスだけで、政治家・田中角栄はいませんでした。東京砂漠はいま土砂降り。デザインが死んでいます。美しいもの、新しいもの、ときめくものは、美術館にしかありません。