マルクスばかりで、フリードマンを論じなかった青春の失敗。

TED TIMES 2020-60 「フリードマン」 11/3 編集長大沢達男

 

マルクスばかりで、フリードマンを論じなかった青春の失敗。

 

1、福祉国家の否定

フリードマン(1912~2006)は、アダム・スミスハイエクの直系の古典派経済学者です。基本は自由競争です。ハイエクは集産主義、つまり社会主義、計画経済、ファッシズムを否定しましたが、フリードマンはもっと過激です。

アダム・スミスの言葉を引用し、「公共の福祉」を語る人を否定し、「自分の利益」を説きました。強烈なのは福祉国家の否定です。「機会の平等」はいいが、「結果の平等」を求めるのは間違い。それでは平等も自由も達成できない。

福祉国家とは権力の行使で、行政の浪費で権力は腐敗し、さらには道徳を腐らせる。子供が両親を助けるのは義務じゃない、愛情であり絆です。日本人にはジンときます。

過激すぎてついていけない主張があります。公共教育は社会主義消費者運動・ヒッピー運動は反成長運動、労働組合は他の労働者の犠牲で成立する。

ただ、かつての「恐慌」は連邦準備制度理事会が起こした、は説得力があります。1)通貨量を減らした。2)預金支払い制限で、取り付けを防げなかった。3)アメリカ合衆国銀行を救わなかった。ユダヤ人経営だから(『選択の自由』 M&R・フリードマン 西山千明訳 日本経済新聞社)。1930年代の大不況は、中央銀行がお金を出すべきときに、お金の発行を減らしてしまったことにありました。

2、小さな政府

1960年代米国はケインズ的な経済政策により、経済的成功を収めます。ケネディ大統領の「ニュー・エコノミックス」、ジョンソン大統領の「偉大な社会」、積極的な財政政策で経済成長が図られ、完全雇用を達成します。

その時代に、ケインズ政策を批判していたのが、フリードマンです。そして現実はフリードマンの予測通りになります。スタグフレーション。つまり、スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価上昇)が同時に起こる、「不況下のインフレ」になります。

フリードマンは、ケインズ的総需要管理政策への対立軸として、貨幣供給量により経済成長とインフレをコントロールすることを目指しました。いわゆるマネタリストの政策です。

1980年の大統領選挙で、「小さな政府」と市場規制の緩和を掲げるロナルド・レーガン大統領が当選します。1979年にはイギリスで「小さな政府」のサッチャー政権が登場しています。反ケインズ派の勝利、新自由主義政策が世界を席巻します。

3、経済政策

ケインズ資本主義・・・公共事業で経済を活性化させる。自民党の古いタイプの保守派の経済政策路線。ムダばかりで財政赤字をふくらませる。

マルクス社会主義社会民主主義・・・古い革新系の経済政策路線は、福祉のバラマキ。非効率の公営事業。社会党共産党が音頭をとった自治体。

新自由主義路線・・・「小さな政府」路線。お金を使わない、スリムな政府。民間のやることに規制をかけない。民営化、規制緩和、財政削減。英国・サッチャー政権、米国・レーガン政権、日本・中曽根康弘小泉純一郎首相。結果は、格差拡大、地方荒廃、福祉も教育もボロボロ。

そこで、第3の道・・・バラマキ福祉はダメ、「参加と包摂」。国家財政で面倒を見切れないから、NPOとコミュニティ、地域の人々のつながりを重視。新自由主義を手直しマイルドに。英国・ブレア政権、米国・クリントン政権。結界は各国で極右勢力が元気に。究極は日本の民主党政権。財政抑制、おカネ発行引き締め、官僚批判、規制緩和、コミュニテイやNPOによる公財政の見直し、エコロジー志向・・・。人々の消費意欲を減退させ、デフレ不況を深刻化させただけ(『ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼』 松尾匡 PHP選書)。

ではどうすればいいのか。  思想の問題です。ハイエクに惹かれます。経済には非合理な力が働く、わからない、計画できない、合理主義と科学主義の否定です。

フリードマンもいいです。頭がいい。むずかしい概念や数式を使わず、やさしい言葉だけで過激なことを言う、例えば麻薬の合法化も、自由な「アダム・スミス原理主義」です。