クリエーティブ・ビジネス塾11「マーケティング」(2014.3.12)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、マーケティング
マーケティングとは何か。かんたんに答えられる人はいません。マーケティングの第1人者、米国のフィリップ・コトラー(1931年生まれ)が、このほど「私の履歴書」(日経2013年12月)を書きました。その冒頭に「(マーケティングを)広告宣伝などの販売促進と思う人が多いが、それは氷山の一角にすぎない。一言でいうのは難しいが、業績向上と顧客の価値・満足を創造することで人々の生活を改善を目指す実践的な学問だ」。これは非常に短い定義。それでも長い。普通のマーケティングの教科書には、これの2~3倍の長さのことが書いてある。それでみんな嫌気を感じてしまう。もっとかんたんにできないものでしょうか。
そこで門外漢の素人が提案させてもらいます。marketing=market(市場)+ing(動かす)。「マーケティングとは市場を動かすことである」。何で市場を動かすか。4Pで動かす。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)で動かす。コトラーはこの定義になんと言うでしょうか。<ウーム、劣等生はしょうがないな。でも間違いではない>。
2、4P
マネジメント(経営)の創始者ピーター・ドラッカーは、「企業の目的は顧客の創造である」(注:企業の目的は利益の創造ではない)。そして「企業の2つの基本的機能がマーケティングとイノベーションである」と書きました(『現代の経営』上p.47 ピーター・ドラッカー ダイアモンド社)。マーケティングとは、生産だけでなく、販売を考える。イノベーション(技術革新)とは、より優れた商品・サービスを生み出すことです。マーケティングにもイノベーションがあります。
コトラーは、マーケティング・イノベーションのその1として、4PにSTPを加えることを提案します。Segmentation(年齢、地域、生活で市場を細分化する)、Targeting(ある顧客を狙う)、Positioning(競合商品との位置づけで、自社の優位性を見つける)です。
マーケティング・イノベーションその2は、大学、医療、社会福祉、慈善団体、宗教団体、美術館のNPO(非営利組織)をマーケティングの守備範囲に入れることです。
そしてマーケティング・イノベーションその3は、社会問題の解決にマーケティングを役立てることです。貧困、飢餓、疫病、環境破壊、人類愛、平和、栄養価の高い食生活、ドラッグ撲滅、エイズ感染予防、喫煙反対運動のために立ち上がることです。
さらにコトラーは、企業は社会インフラをタダで使っている。社会的責任がある。企業の経営者は巨額の報酬を取りすぎる。富の偏重は、購買力を低下させ、雇用を減らし、不満が募り、怒りになって爆発させ、結局高価になってしまいます。
マーケティングは、生活者と生産者が出会う市場を動かすだけはない。社会や世界も動かす。貧困を解決し、平和を達成し、幸福と繁栄に向けて、動かすことができます。
3、フィリップ・コトラー
コトラーは、今話題の「ウクライナ」から米国に移民してきた、ユダヤ人の両親から生まれました。
まずシカゴのデポール大学、シカゴ大学で、優れた思想、哲学を学んでいます。プラトン、アリストテレス、マキャベリ・・・偉大な思想が世の中を変える源泉になると回顧します。シカゴ大学には自由主義経済のミルトン・フリードマンもいました。
つぎにMIT(マサチューセッツ工科大学)。ノーベル経済学者、ポール・サミュエルソンに出会います。サミュエルソンらの面接を受け、博士課程終了に合格します。そのあとコトラーは、ハーバード大学で高等数学を学び、専門を労働経済学からマーケティングに変えます。
そしてコトラーの最大の財産は、ピーター・ドラッカーの自宅を訪問し、交友関係を始めたことです。ビーターに会うたびに、圧倒的な知識と深い洞察に刺激を受けました。「ピーターはまさにルネサンス的な万能型知識人で、私が出会った中で最も素晴らしい人部の一人だ」と述懐しています。
コトラーも日本ファンで、根付けや鍔(つば)を蒐集しています。「私の履歴書」は、顧客を意識し、日本への期待で終わる。ちょっとくすぐったい。けれどこれがマーケティングというものです。