生涯行くことがない、カリブ海への憧れ。

TED TIMES 2021-32「イン・ザ・ハイツ」 8/12 編集長 大沢達男

   

生涯行くことがない、カリブ海への憧れ。

 

1、トリニダード・トバゴ

河口湖のホテルに、オリンピックのサイクリング・ロード・レースの選手たちの警備で、1週間滞在しました。

その時のことです。夜中の11時半ごろ、ホテルのロビーの片隅にあるフリー(タダ)のコーヒー・サーバーの周りに3人(男性二人、女性一人)の黒人が集まり、これもフリーのパンをかじりながら、話していました。

どこの国の人かわかりませんでした。3人とも、40代か50代か、選手ではなくマネジメントの人のようでした。私は警備会社の制服を着ていましたが、休憩中でした。

「私たちの国には、二つの島があるんだ」。デップリとした男が言いました。

「ジャマイカキューバ??」、私は訊き、「one love one world let’s get together be all right」と、レゲエのリズムをつぶやくように歌いました。

大柄の男は、「xxxxとxxxxという島だ」。繰り返し発音してくれるのですが、私には地名がわからない。

でも、カリブ海だと、見当がつきましたので、「ガンチャ(大麻)はあるか?」と突然、唐突に、訊きました。

すると、それまで黙っていた女性が、フレンドリーに英語で言いました。「たくさん、あるわよ。今度来るときは、あなたにたくさん、持ってきてあげるわよ」

カリブ海に浮かぶ、二つの島から構成される国、地図で調べてもよくわかりませんでした。ホテルの泊まっている30以上の国の名前を全部調べました。

彼らと話したのは、任務についた初日、彼らの容姿もおぼろげ、国名は分からすじまい、になってしまいました。でも、1週間かけて考え抜きました。推測、彼らは、「トリニダード・トバゴ」の人です。

2、カリブ海

カリブ海には魅力的な島々があります。70年代、映画音楽の成功で世界的に有名になった日本人の作曲家が、日本人の女性の天才作曲家と恋に落ち、バハマ諸島で二人だけの日々を過ごしたという噂が、業界で広がりました。仕事で成功するとは、バハマで快楽の日々を過ごすことでした。

バハマはフロリダのすぐとなり、フロリダ半島のすぐ下にはキューバがあります。60年代のアメリカの車が今でも走っているワンダーランドです。そしてその東に、ハイチ、ドミニカと続きます。ドミニカ共和国プロ野球巨人軍の投手、メルセデスの故郷です。さらに東に行くとプエルトリコです。米国自治連邦区。住民はアメリカ国籍、でも納税義務がない、しかし大統領選挙に投票権もありません。キューバとハイチの下(南)にジャマイカがあります。レゲエのボブ・マーレーの国です。もっと下(南)に行くと、コロンビア、ベネズエラ南米大陸トリニダード・ドバゴの二つの島は、ベネズエラのちょい上のカリブ海に浮かんでいます。

カリブ海の東の外れにバージン諸島があります。西側半分は50の島のアメリカ領、東側半分は60の島のイギリス領。ソニー・ロリンズの名曲「セント・トーマス」は、アメリカ領。リチャード・ブランソンのネッカー島はイギリス領にあります。

3、映画『イン・ザ・ハイツ』

イン・ザ・ハイツとは、イン・ザ・ワシントンハイツのことです。ワシントンハイツとはマンハッタン・ニューヨークの北部の地域で、ハーレムよりさらに北です。ハイツ(heights)とは文字通り高いところ、マンハッタン島で一番高いところを指します。ハイツの主な住人はドミニカ共和国からですが、カリブ海全体からやって来ています。

映画は、ラテン、ラップ、ヒップホップ・・・。音楽・歌・ダンスの天才ばかりのミュージカルです。

ドミニカからやってきた二世で、アメリカで生活を続けることの困難さを感じ始めている主人公。近所の期待を一身に担って、スタンフォード大学に進学したが、人種差別で勉強にならない、大学生活をギブアップしようと戻ってきた娘。移民の苦労、移民の夢、移民の挑戦が、ドラマの主人公でシナリオがいいから、歌にも、踊りにも説得力があります。

ハイツの移民は差別されるのは、肌の色と80~90年代のハイツが麻薬と犯罪の巣窟だったからです。

ところでトリニダード・トバゴの女性は、なぜ私にガンチャ(大麻)をプレゼントする、と言ったのか。それは、かの地では大麻が合法だからです(勿論、持ち込みは違法)。ちょっと関係のない結論になってしまいましたが。