『理由なき反抗』でのジム(ジェームス・ディーン)の台詞を覚えてみましょう。

THE TED TIMES 2023-31「ジェームス・ディーン」 8/22 編集長 大沢達男

 

『理由なき反抗』でのジム(ジェームス・ディーン)の台詞を覚えてみましょう。

 

1、『理由なき反抗』

映画『理由なき反抗(Rebel Without A Cause)』(1955年 ニコラス・レイ監督)は、映画を発見しいる名画ではありませんが、大切しなければならない映画のひとつです。

まずジェームス・ディーンが残したたった3つの遺作の一つであること、次に共感できる「若者』の物語であること、そしてこの映画からアメリカの新しい時代が始まっていることです。

ジェームスは、映画が公開される1ヶ月まえにポルシェの自動車事故で亡くなっています。映画にはその事故死を想像させるような「チキン・レース」があります。

2台の中古車で崖に向かい、どちらが崖の寸前まで自動車に乗っていられるか、を競うゲームです。

映画の中でジム(ジャームス・ディーン)は崖の寸前で飛び降りますが、競争相手のバズはクルマもろとも崖下の落っこちてしまいます。

つまりジムは、映画の中の自動車レースで、九死に一生を得ています。

映画は、父に人間としてのお手本を示した欲しい願う息子と、威厳を失い情けない父親を描いた物語です。

物語を簡単に復讐しておきます。

酔っ払いで保護されたジムは警察で、同じく深夜まで外出していて保護されたジュディ(ナタリー・ウッド)と、子犬を射殺したことで警察に呼ばれたプレイトー(サル・ミネオ)と知り合いになります。

ジムは引っ越してきたばかりでした。そして転校先の新しい高校で、ジュディとプレイトーで再会します。

プラネタリウムでの授業がロスアンゼルス郊外のグリフィス天文台(現在ではロス観光で有名)であります。

そこでジムは、不良少年グループのリーダーでジュディの恋人でもあるバズに目をつけられ、ナイフでの決闘をすることになります。

しかしケンカを警備員に発見され中止に、その続きは夜の「チキン・レース」で決着をつけようということになります。

そして結果は、・・・前述したように、バズの死で終わります。

バズの事故を、ジムが警察に届けはしないだろうか、バズの仲間たちがジムを探し始めます。

ジム、ジュディ、そして銃を持ったプレイトーは、空き家に逃げます。そこは3人の理想郷になります。ジムとジュディも愛のひと時を過ごします。

しかしプレイトーが追ってきたバズの仲間の一人を撃ち、プレイトーは警官に撃ち殺される悲劇が待っていました。

 

2、ジムのセリフ

○チキン・レースに出かける前に父にアドバイスを求めるジム

Jim:   What can you do when you have to be a man ? (オトコにならなきゃならい、パパならどうするの)

Father:   Well・・・now・・・(ええーと)

Jim:    No, you give me a direct answer ! (しっかり答えてよ)

Jim:    Are you going to keep me from going ? (行くなって言うんじゃないでしょうね)

 

○チキン・レースでバズが死に、家に帰ってきたジムは父親にどうしたらいいか相談する

Jim:    I said it was a matter of honor , remember ?(名誉の問題だって、言ったよね、覚えている?)

Jim:    They call me “chicken”. (みんなはぼくをチキンって言った)

Jim:    You know “chicken” ? (パパ、チキンって分かる?)

Jim:    I had to go. (行かなきゃならなかったんだよ)

Jim:    Because if I didn’t. I’d never be able to face those kids again.(じゃなきゃ、みんなと二度と顔を合わせられなくなったんだよ)

Jim:    I got in one of those car・・・(ぼくは一台のクルマに)

Jim:    And Buzz , Buzz one of those kids, he got in the other car and we had to drive fast and then jump, see, before the car came to the edge of the bluff.

(バズは、仲間の一人だよ、もう一台に乗り、ぼくたちは競争し、崖の手前で飛び降りることになっていた)

Jim:    I got out OK and Buzz didn’t !(ぼくは大丈夫だった、けどバズはダメだった)

Jim:    He got killed!(死んだよ)

Jim:    I can’t keep it to myself anymore.(もう、黙っていられなくなったよ)

Father:    You just get it off your chest, son.(話せば、楽になるさ)

Jim:    That is not what I mean!(そんなことを、言ってんじゃないよ)

(中略)

Jim:    You’re not listening to me! (ぼくの言うこと、聞いてないでしょ?)

Jim:    You’re involved in this just I am.(ぼくと同じように、パパも事故に関係あるんだよ)

Jim:    Now I’m going to the police and I’m going to tell them I’m involved in this.(ぼくは警察に行く、そして事故に関係あると話すつもりさ)

Father:     Did anyone see you there? Did anyone see your license plate?(だれかに目撃されたのかい。クルマのナンバーを見られたのかい?)

Jim:     I don’t know.(わからないよ)

Mother:    How about the other boys? Do you think they’ll go to the police?(ほかの子どうなのよ。みんな警察に行くの?)

Jim:    It doesn’t matter. It doesn’t matter. It doesn’t matter!(関係ない、関係ない、そういうことじゃないんだよ)

 

チキンレースのあと、二人きりで出会うジムのジュデイ。

Jim:    You know something?(知っているかい?)

Jim:    I woke up this morning, you know・・・(今朝目覚めた時、)

Jim;   and the sun was shining・・・(太陽が輝いていたよ)

Jim:    and it was nice and all that type of stuff.(なにもがステキに見えた)

Jim:    And first thing I saw you.(そしてキミに出会った)

Jim:    And I said now, “Boy, this is gonna be one terrific day, so you’d be better live it up.”(素晴らしい日になるぜ、楽しまなくちゃね、って思ったさ)

Jim:    “Come tomorrow you’ll be nothing.”(明日になれば、命はない)

Jim:    See, I almost was.(実際にそうだった)

 

3、エルヴィス

第1に『理由なき反抗』は、当時はまだその存在が社会的に認められていなかった「若者」の映画でした。

映画に登場する3人、ジム、ジュディ、プレイトーは16歳でした。

ジムは父親不信、ジュディも父親に子供扱いされることにイラ立ちの日々、プレイトーは離婚の母一人の家庭でしたが、いつもひとり、お手伝いさんと暮らしていました。

16歳は大人ではありませんが、子供でもありません。

ジムは酒を飲み、ジュディは口紅を塗り、プレイトーは拳銃を持ちました。

それが「若者」と呼ばれるようになります。

「経済力」、「ファッション」、そして「ロックンロール」により、「若者」は公認され、アメリカ社会の一大勢力になります。

第2に『理由なき反抗』は、エルヴィス・プレスリーを誕生させました。

ジムのセリフは、「若者」の言葉に溢れていました。

まだ全米では無名だったエルヴィス・プレスリーは、映画のジェームス・ディーンのセリフを全部覚え、「若者」になりました。

エルヴィスは、1956年に”Heartbreak Hotel”でブレイクし、「若者」を代表するシンガーになります。

そしてエルヴィスは、ジェームス・ディーンの突然の死によって、デイーンが主演予定だった『キング・クレオール(邦題「闇に響く声」)』(1958年)に、代役として呼ばれることになります。

第3に『理由なき反抗』は、若者のファッション「Gパン」の映画です。

Gパンは、『乱暴者(あばれもの)』(1953年)でマーロン・ブランドが革ジャンとリーバイス501をはきバイクに乗ったことでファッションとして注目を集めます。

そしてGパンは、『理由なき反抗』(1955年)のジムが、赤のジャケットと「Lee」のGパンをはいて出演したことで、「若者」ファッションになっています。

ロック・コンサートの1970年代、私たちはわけも分からず「Lee」のGパンを探し求めました。実は、ジムが履いていたが「Lee」だったからです。

第4に『理由なき反抗』は、ロックンロールの映画だ、と言いたかったのですが、それは無理です。

『理由なき反抗』の映画音楽は、叙情的なBGMで終わっています。

音楽では、同じ年1955年に公開された『暴力教室(Blackdoard Jungle)』の「Rock Around The Clock」(ビル・ヘイリー&ブルー・コメッツ)が全米ヒットチャート8週連続1位の大ヒットになっています。

残念ながらエルヴィスの”Heartbreak Hotel”のヒットは、翌年の1956年です。