だれが、なにが、新聞の代わりを、やってくれるのでしょうか。

THE TED TIMES 2024-03「新聞の終わり」 1/15 編集長 大沢達男

 

だれが、なにが、新聞の代わりを、やってくれるのでしょうか。

 

1、「朝日の最下位」事件

まったく私的な会合ですが、「元旦社説ランキング」というイベントを、数年続けてやっています。

正月に6人の一家言持った老人が集まり、東京で発行されている6紙の元旦社説を読み比べ、評論しランキングをつけるという催し物です。

集まった6人とは東京6紙での元論説委員2人、東京キー放送局元政治部記者1人、野党党首元秘書1人、元大手広告代理店クリエーター1人、元広告代理店経営者で元学生活動家1人の6人です。

今年の「元旦社説ランキング」で事件が起こりました。朝日新聞が6紙の最下位になってしまってのです。

1)東京 2)産経 3)日経 4)読売 5)毎日 6)朝日。

普通、東京6紙といえば、朝日、毎日、読売、日経、産経、東京と言われますが、ちょうどその逆に順番になりました。

遊びの催し物とはいえ、ショッキングでした。

 

2、朝日と毎日の社説

朝日新聞(見出し「暴力を許さね 関心と関与を」)

ウクライナ、ガザ、ミャンマースーダンで戦火が激しく、「警察官」(米国)を失った世界は不安定化した。ガザに住む朝日の通信員ムハムド・マンスールさんは、まず水、そして薬、食糧、燃料の支援が必要だという。パレスチナイスラエルの互いの憎悪の深さに驚かされる。ウクライナとガザの戦争からの教訓がある。まず戦闘が始まれば止められないということ。国連も機能不全、しかし国連を見限るわけにいかない。つぎに戦争には憎悪と不信の蓄積があること。ロシアの侵略は10年前から、パレスチナイスラエルには長年にわたり壁やフェンスが築かれていた。理不尽を見過ごさない、争いの芽を摘む関心と関与を。

 

毎日新聞(見出し「二つの戦争と世界 人類の危機克服に英知を」)

欧州と中東の戦争は「人類の危機」だ。対テロ戦争を始めた米国が20年後のアフガンから撤退したように軍事力で対立は解消できない。まずは停戦で死傷者を減らすことである。国際社会の脆弱性が露呈しているいま、国家中心から人間中心の視座に転換しなればならない。世界人権宣言の精神である。国際司法裁判所(ICJ)そして「法の支配」。さらにもうひとつは国家に対して市民が声を上げることである。長男を戦闘で失ったイスラエル人母親すらが、パレスチナ人との共存の未来を望んでいるではないか。欧州の移民規制のような排外主義は許されない。多様性の尊重である。人類の危機には他者との共生の道がある。

 

二つの新聞とも、ウクライナとガザがテーマで、戦争に対してどうするのかを論じています。

朝日は紛争(暴力)の芽を摘む関心と関与を持たなければならないと警告し、毎日は人間中心・市民中心・他者との共生を説いています。

なぜ不評だったのでしょうか。まずテーマ設定が悪い。日本がどう関与すべきなのか、政権は何をすべきかなのか、外交的なテーマを論じられていません。

抽象的で高踏的な人道問題で終わっています。

横田めぐみさんの拉致に、イスラミックステイトの後藤さん湯川さん虐殺に、さらにはアフガニスタンでの中村医師の銃撃に、朝日と毎日は現状を変える力になり、メディアとしての責任を果たしたでしょうか。

さらに北朝鮮のミサイル発射に、中国の南沙諸島、台湾、尖閣への進出に、ロシアの北方領土問題の棚上げに、朝日が言う「暴力の芽を摘む関心と関与」が、毎日が言う「人間中心・市民中心・他者との共生」が説得力を持ち、有事を阻止する力になるでしょうか。

発行部数減少に悩む朝日と毎日は、日清、日露、大東亜の夢再び、戦争による発行部数増大に、期待をしているのではないでしょうか。

無責任な「平和と民主主義」議論は、論説委員と筆者の力不足以外の何物でもありません。

 

3、リベラリズムの終わり

新聞の発行部数の減少、新聞は読まれない、新聞記者の質の低下、新聞の終わりの時代が近づいています。

今回の「朝日の最下位」事件で明らかになったのは、朝日・毎日が続けてきた戦後の「平和と民主主義」の時代の終焉です。

朝日は戦後GHQより発行停止処分(1945.9.18)を受け、それ以来自己検閲によりGHQの機関紙になっていきます。

「兵器の戦争」は終わりましたが、米国は日本の歴史と伝統を全否定する「文化の戦争」を仕掛けてきました。

万世一系天皇と祭祀共同体の日本に、「日本国憲法」、「東京裁判」(靖国神社批判)そして「太平洋戦争」(大東亜戦争ではない)という用語で、リベラリズムの戦いを挑んできました。

リベラリズムとは、自由、平等、人権のいわゆる「戦後の平和と民主主義」です。

たとえば憲法13条には「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及幸福の追求に対する国民の権利については・・・」とありますが、これは米国独立宣言の丸写しです。

独立宣言には「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」とあります。

気をつけなければいけないのは、キリスト教の神によって、権利が与えれれていることです。つまり異教徒は、この限りではありません。

現在の国際紛争のほとんどは一神教の争いです。そしてリベラリズムとはアングロサクソン核家族イデオロギーでしかありません。

日本は「兵器の戦争」だけなく「文化の戦争」でも敗れ、民族としての誇りを失い人口減少で、30世紀初頭には地球上から姿を消そうとしています。

「朝日の最下位」事件の真相は、平和と民主主義の時代の終わり、とリベラリズムの終焉です。

私たち日本人が、日本人に還るとき、日本の新たなスタートを切るとき、がやってきました。