映画館みたいな映画館、黄金町の「シネマ ジャック&ベティ」で、『福田村事件』を観ました。

THE TED TIMES 2024-11「福田村事件」 3/15 編集長 大沢達男

 

映画館みたいな映画館、黄金町の「シネマ ジャック&ベティ」で、『福田村事件』を観ました。

 

1、「シネマ ジャック&ベティ」

見逃していた映画がありました。

ネットで調べたら東京と神奈川ではたった1館、横浜・黄金町の「シネマ ジャックアンドベティ」で、やっていることがわかりました。

ようし、行ってみるか。

京浜急行横浜駅で、ちょっと戸惑いました。どの電車に乗ればいいのだろう。

もちろん各駅停車で、戸部、日ノ出町、黄金町、横浜から三つ目です。

駅を出て、川を渡り二本目を左に曲がり、三本目の通りの角。10分弱で簡単に到着しました。

川は日ノ出町から横浜港、東京湾に出る川ですが、だれかがこの川を名前で呼んだのを聞いたことがありません。名前を知りません。

調べてみたら「大岡川」、初めて知りました。

シネマ ジャック&ベティの昔の名前は「横浜名画座」、以前なんとなく来たかもしれません。

でも横浜の大学に通っていたのは60年前の話ですから・・・。

「ジャック&ベティ」のその名の通り二つのスクリーンを持っていました。

団塊の世代とおぼしき「昔」の若者が群がっていました。ほんと映画館みたいな映画館でした。

待合室の壁に、客がリクエストを書いて貼る、ボードがありました。

市民生活に馴染んでいる、文化的なインフラになっている、かっこいい映画館。いい印象を持ちました。

 

2、野毛商店街

映画が終わってのが4時すぎ、黄金町から日ノ出町そして野毛商店街を目指しました。

黄金町は、学生の頃は怖くて近寄らず、歩いたことがありませんでした。

伊勢佐木町大岡川にはさまれた地域は花街です。ソープランド、ラブホテルが林立しています。

今回歩いて目についたのは、タイ料理やタイマッサージのお店でした。

人通りは少なく、客引きはいませんでした。

しかし途中で大岡川を渡り、野毛を目指した時、誰もいない角に一人の女性が立っていました。

彼女は10メートルほど私についてきました。私は話しかけなかった。彼女はプロだったのか・・・。

こんど黄金町に来る時には、お金を持ってこないと、意味のない反省をました。

野毛の商店街に入ると、黄金町とは打って変わって大混雑、人で、それも若者で溢れていました。

人気の焼き鳥「末広」には若者ばかり20人ぐらいが並んでいました。

一人で入れるお店なんかない。私は2周ほど、野毛商店街をウロウロしました。

そんななかで店の前に打ち水をしている焼き鳥屋がありました。

5時開店、1分前でした。二人の男性が並んでいました。

私はやり過ごして、もう一周、野毛を歩き、そして思い切ってその店に入りました。

よかった。私の後には二人の男性が、カウンターの隣に入っただけ、満員になりました。

ホッピー、イカ納豆、モモとカワの焼き鳥を頼みました。

入店して10分後に不思議なことが起こりました。

一人の女性がムービーのカメラマンを従えて入ってきて、そのあとに録音、照明、演出のスタッフを従えて入ってきました。

カメラは回っていました。

センティングも、リハーサルも、まるでなし。いきなりの本番。

女優は私が座っているカウンターより奥にある4人席に着くと、ひとりで演技を始めました。

話かけている相手はいません。別撮りなのでしょうか。

それにしても不思議です。奥のテーブルの客も、まして私が座っているカウンターの客も、撮影に全く関心をもたないのです。

女優の座った隣テーブルの客は仕込みだったのでしょうか。

もちろん私はスタッフや客に「あの方はどなた?」と聞くこともできませんでした。

撮影の最中にお店を出ました。

お店の名前は「鳥しげ」(045-241-1603 二日酔いイチローさん)です。

どうも予約が必要なお店のようです。

 

3、『福田村事件』

いけない。

何の映画を観たのかを言い忘れました。

『福田村事件』(森達也監督 2023年)です。

昨年8月末の試写会の時に、元朝日と元毎日に新聞記者に誘われて行ったのですが、遅れて行った私だけ満員で観ることができなかった、曰く付きの作品です。

1923年9月1日の関東大震災のあと9月6日に起きた事件のドラマ化です。

震災の後、朝鮮人が井戸に毒を入れた、乱暴狼藉をはたらいている、と流言飛語が飛び交います。

千葉県の福田村では自警団を作り警備にあたります。

折り悪しく香川県からの15人の行商団が福田村に入ってきて、朝鮮人の集団ではないか、と疑われます。

言葉がおかしい、歴代の天皇の名前を言えない、天陛下万歳が言えない。複雑なのは行商人が被差別部落の人々であったことです。

ちょとした行き違いから集団心理に火がつき、福田村自警団による幼児と妊婦を含む9人の行商人の虐殺事件に発展します。

事件を知った新聞記者は記事に書こうとします。しかしデスクは許可しません。なんのために新聞はあるのか・・・これがドラマのサブテーマ。

自警団の何人かは逮捕され実刑判決受けますが、大正天皇崩御の恩赦で全員釈放されます。事件を歴史の闇に葬り去ってはいけない・・・これが映画製作の動機です。

『福田村事件』は、第47回日本アカデミー賞で、優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞を受けています。

昨年の日本を代表する作品です。

ところが映画を見終わって私は、いやーな気持ち、になりました。

映画を作った人の正義派のリベラリズムの主張に吐き気がしました。

その理由を書きます。

まず第1。

映画の中で、「本所」(東京)がひどい被害を受けた、「本所」で大火災が起きた、という噂話が村民の間でなされます。

私の母は明治生まれの「本所」の人、若い頃にまさに関東大震災に出会っています。

朝鮮人」が井戸に毒を入れたという「噂話」や、その結果何人もの「朝鮮人」が警察に連行されたという話を、母から何度も聞いて育ちました。

ですが母は、噂話も警察も、全く信用していませんでした。

お上が言うことなんか、「ハナ」から信じちゃいないよ。面従背腹(面従従腹かな)。それが下町、それが庶民です。

映画『福田村事件』は上から目線で、福田村(現在の千葉県野田市)の人を浅はかな田舎者として描き、馬鹿にしています。

第2。

映画の中で「センジン」だとか「朝鮮人」という言葉が、連発されます。

私は背筋が寒くなりました。

専門学校の教師をやっていたときに、私は韓国の留学生から、私が授業で「朝鮮」と言うのを注意されたことがあります。

「先生『韓国』です!」、「『朝鮮』ではありません!」。

韓国人の心情を忖度せずに、ただ関東大震災100年という理由で、『福田村事件』は映画の中で「センジン」、「朝鮮人」を連発しています。

逆に被差別部落の人々への配慮は過剰で、その対比は象徴的です。

映画『福田村事件』は人権や正義を語っていますが、結果として韓国の反日感情を煽っています。

第3。

映画は、「朝鮮人」や被差別部落の人への差別だけでなく社会主義者も弾圧され、人権、自由、平等が奪われたというリベラリズの結論で結ばれます。

驚きます。

今、ウクライナで何が起きているのでしょうか。

リベラリズムNATOが支援するウクライナの敗北が予想されています。

そしてグローバルサウスの国々は、ウクライナとそれを支援するリベラリズの国々を、支持していません。

17世紀末に人権、自由、平等の『統治二論』(ジョン・ロック)が書かれますが、それ以降のイギリスはインドで中国で何をしたのでしょうか。

1776年にアメリカは人権、自由、平等の独立宣言を書きますが、その後アメリカ人はインディアン(ネイティブ・アメリカン)と黒人に何をしたでしょうか。

そしていま、人権、自由、平等のリベラリズム国際紛争のもとになる「リベラリズム帝国主義」になっています。

リベラリズムとは、人類の普遍原理でも何でもありません。英米を中心とする「核家族制度」のイデオロギーです。

直系家族制度の日本人がその主張をするのは「白人の真似っこ」でしかありません。

映画『福田村事件』は、白人流のリベラリズムで正義を語り、日本の歴史と伝統を否定し、日本国の国益に背いています。

 

結論。

横浜市民の文化センターのような「シネマ ジャック&ベティ」には、団塊の世代が集まっていました。

映画『福田村事件』が、彼ら老人たちに支持されている、と考えるとやるせ無い気持ちなります。

私たちの曽祖父母や祖父母は「朝鮮人」を虐殺した(誤解をしないでほしい。福田村事件はデッチ上げだと主張しているのではない)。

朝鮮人」を従軍慰安婦として連行し、日本兵は性を弄(もてあそ)んだ(朝日新聞は「吉田発言」を訂正した)。

さらに南京で日本兵は罪もない中国人市民を数十万人を虐殺した(本田勝一記者は中国共産党の招きで訪中し、伝聞で『中国の旅』で「南京大虐殺」を書き、いまだに朝日新聞誤報として訂正していない)。

日本は二度と戦争をしてはならない。平和のために日本民族が滅びてもかまわない(『私の根本思想』山口瞳)。

そして「平和と民主主義」の日本人は、山口瞳のアドバイス通り、滅びの道を実行しています。

2023年の日本人の出生数は戦後最少の75.8万人、団塊の世代の頃の3分の1になり、30世紀には日本は地球上から姿を消します。

日本は、リベラリズムの知識人の唱える「平和と民主主義」で、滅びの道を歩んでいます。

以上が、映画『福田村事件』を観た後の、いやーな気持ちの、正体です。

End