THE TED TIMES 2023-48「ゴジラ-1.0」 12/19 編集長 大沢達男
年末の大逆転『ゴジラ-1.0』が、今年の私の好きな邦画のNo. 1になりました。
1、大和心
特攻隊として出撃した零戦が突撃できずに不時着、しかもその整備基地の危機で仲間を見捨てることになる、落ちこぼれの日本兵士が、『ゴジラ-1.0』の主人公です。
彼は戦後になってゴジラに遭遇し、旧軍隊メンバーと連帯し、日本人だけの団結でゴジラに勝利し、たくさんの日本人の命を救い、自分自身の戦争を終わらせることができたという物語です。
『ゴジラ-1.0』(ゴジラマイナスイチ)は、大和心を呼び覚ます映画です。なぜ大和心をくすぐられるのでしょうか。
第1に1947年の占領下でありながら、米軍の力を借りずに旧日本兵だけで、東京を襲ったゴジラを打ち倒すために立ち上がったことです。
第2にゴジラと戦うために、旧日本兵が団結し科学者と協力し、日本人が結集することです。
そして第3に、特攻隊失格のダメ男が旧軍の整備士を探し出し、「震電」(しんでん)という伝説の戦闘機を整備し、ゴジラに特攻することです。
『ゴジラ-1.0』は、日本人の男らしさとやさしさ、日本人の知恵と作戦、そして日本人の団結と実行力、つまり益荒男振り(ますらおぶりぶり)を余すところなく描く映画です。
ゴジラ撃退のために出撃する駆逐艦「雪風」の堀田辰雄元艦長(田中美央)は、元海軍士官達の前で話します。
「我が国は国民を守るべき自前の軍隊を有しておりません。駐留連合国軍による軍事行動は大陸のソ連軍を刺激する恐れが高く、不可能と判断されました。つまり、我々は民間の力だけであの怪物に立ち向かわなければなりません。」(p.121)
つぎに元技術士官・野田建治(吉岡秀隆)は、ゴジラ攻撃の海神(わだつみ)作戦の前日に話します。
「この国は命を粗末にしすぎてきました。脆弱な装甲の戦車、補給軽視の結果、餓死・病死が戦死の大半を占める戦場・・・戦闘機には最低限の脱出装置も付いていなかった。しまいには特攻だ玉砕だと・・・・・・だからこそ今回の・・・・・・民間主導の今作戦では一人の犠牲者を出さないことを誇りにしたい。今度の戦いは死ぬための戦いでしゃない。未来を生きるための戦いなんです。」(p.147)。
そして主人公のダメ男、敷島浩一(神木隆之介)は、衝撃的な発言をします。
「・・・・・・俺の・・・・・・戦争が終わってないんです。」(p.134)
映画は敷島の戦争を終わらせるための戦いを描いています。
そして映画は敷島のパートナー大石典子(渡辺美波)のセリフで終わります。
「浩さんの戦争は終わりましたか?」(p.187)
3、戦争が終わっていない
終戦の2年後1947年に元特攻隊の敷島の発した<戦争が終わっていない>という言葉は、終戦から78年後2023年の日本人の心にグサリと突き刺さりました。
戦争が終わっていない。
2023年の今もその通りです。
終戦後に米軍は文化の戦争を仕掛けてきました。
二度と日本が戦えないように、極東裁判を行い日本国憲法と太平洋戦争史を与え、徹底した言論統制を行いました。
国体を破壊し、大和心を否定し、日本文化を後進とする、文化の戦争を行いました。
日本人は民族としての誇りを失い、人口減少の道を歩み始め、30世紀初頭には地球から姿を消します。
戦争は終わっていません。いまだにGHQというゴジラとの戦いがあります。
次に米国は、「リベラリズ帝国主義」で、NATO、アフガン、中東で侵略を始めました。
日本人は変わらず米国が主張する、自由、平等、平和、民主主義の「リベラリズム」が、人類の普遍の原理だと信じています。
戦争は終わっていません。リベラリズムというゴジラとの戦いがあります。
そして日本人は無抵抗な羊の群れに成り下がっています。
北朝鮮により横田めぐみさんが拉致されたときに、日本人は立ち上がったでしょうか
ISIL(イスラミック・ステート、イスラム国)により、後藤健二さんと湯川遥菜さんが虐殺されたときに、日本人は報復したでしょうか。
アフガニスタンの武装勢力(パキスタン・タリバン運動)によって、中村哲医師が銃撃され死亡した時に、日本人は軍隊を派遣したでしょうか。
戦争は終わっていません。北朝鮮、IS、タリバンというゴジラと戦わなければなりません。
『ゴジラ-1.0』に感激して、こんなことを言うと、リベラリズムに占領されている日本では、「右翼」「国粋主義者」「復古主義者」と、必ず後ろゆびを指されます。
ところがどっこい。『ゴジラ-1.0』は邦画の全米興行収入で歴代1位になり、アメリカ人に受けています。
米国によって愛国心を去勢された日本人が愛国心に目覚めたことを、米国人によって評価される、なんともへなちょこなことが起きています。
でもよく考えてみれば、愛国心のアメリカ人がゴジラと闘う日本人に共感するのは、当たり前のことです。
<戦争が終わっていない>。
この一言で、『ゴジラ-1.0』は今年の私の好きな日本映画No. 1になりました。
End