『ボストン市庁舎』を見たことを反省しています。でもそれでは元をとれない。学ぶべきは何か。

TED TIMES 2021-47「ボズトン市庁舎」 12/1 編集長 大沢達男

 

『ボストン市庁舎』を見たことを反省しています。でもそれでは元をとれない。学ぶべきは何か。

 

1、中条省平先生

失敗その1。「4時間34分という長尺だが、退屈している暇がない」。日経の映画評の中条省平先生のこの一言で、『ボストン市庁舎』を見に行ってしまいました。

失敗その2。この映画が、『ニューヨーク公共図書館』と同じ、フレデリック・ワイズマン監督の作品だということ知らずに見に行きました。

失敗その3。そしてさらなる失敗は、『ニューヨーク公共図書館』が、お気に入りの映画でなかったことを忘れていました。

3年前に映画を見た岩波ホールに、最大限の文句を言っていました。2時間前並んででチケットを買えなかった。翌週、4時間前に行ってチケットをゲットをした。岩波ホールはネットで買えない馬鹿げた映画館。加えて、「図書館は民主主義を支える柱だ」という映画の主張を、無責任な感傷と、真っ向から否定していていました。<本の時代はとっくに終わっている。図書館はいらない>。

この感想をすっかり忘れていました。なぜ忘れてしまったのか。2019年に『ニューヨーク公共図書館』を見たすぐ後に、マンハッタンに行き、「ニューヨーク公共図書館」を訪れていたからです。

建物はボザール建築、感動しました。そして実際に図書館を利用しました。エルヴィス・プレスリー関係の資料を検索して、違う図書館を紹介してもらいました。そのときのいい思い出が強く残っていました。

で、「ニューヨーク公共図書館」のいい印象と映画『ニューヨーク公共図書館』の悪い印象が、ごっちゃになっていました。

2、マーティン・J・ウォルッシュ市長

『ボストン市庁舎』の主人公はマーティン・J・ウォルッシュ市長です。2013~2021年までボストン市長、民主党、しかも市長退任のあとは、バイデン政権の現労働長官です。

「ボストン市庁舎はトランプが体現するものの対極にあります」(フレデリック・ワイズマン、映画パンフレットp.1)、私は日本人ですから、トランプだろうがバイデンだろうが、なんでもいいのですが・・・。映画をみていてヤになっちゃいました。<なんだよ、民主党のキャンペーン・ムービーを見ているのかよ。>

私はトランプとバイデンの大統領就任演説を仔細に読んでだけですが、トランプの演説に説得力を感じました。<この国に仕事を作ろう、エスタブリッシュメントからこの国を取り戻そう、肌の色は黒、白、褐色、イエローでも、俺たちに愛国者の赤い血が流れている>。私はトランプ派です。マンハッタンのトランプタワーを訪れ、「TRUNP」と胸に書かれたテディ・ベアを買いました。トランプタワーでしか売ってないものです。しかもトランプタワーのガードマンとも写真を撮っています(苦笑)。

3、ドキュメンタリー

政治的な話をちょっとだけ、させてください。政府による社会保障を中心に考えるのが、リベラリズム社会主義です。大きな政府です。政府に頼らずお互いに助け合って行こうよ。自助、互助、共助を中心に考えるのが自由主義リバタリアン)です。小さな政府です。

日本には社会保障がしっかりしている国にはいい国だのドグマがあります。左傾化した新聞のせいです。なぜ公助は危険なのか。まず予算を持ったものが権力を持ったと勘違いすることです。つぎに予算にとっては、効率や節約は敵だから、無駄でも使い切ることが大切だからです。翌年予算を取ることができません。つまり格差解消のための働いている行政が、新たな格差を作り出す原因になるからです。

政治の話をするために映画を見たのではありません。こんなことを言っていたら使ったお金の元は取れません。

問題は映画から何を学ぶかです。映画作家想田和弘が映画のパンフレットいいことを書いています。撮影現場には、録音役を兼ねた監督と、カメラマンと助手の3人しか行かない。録音は『ニューヨーク公共図書館』、『ボストン市庁舎』も、驚くほどの完璧さです。そして映画の仕上げでは、1)ナレーションを入れない。2)テロップによる説明もしない。3)BGMを入れない。4)インタヴューを使わない。「4無い主義」で行われる(映画パンフレットp.20)。なるほど、だからリアリティがあるんですね。素晴らしいです。まあこのことを学んだだけで、入場料の2500円と労働時間の4時間34分は、帳消しにできました。