コンテンツ・ビジネス塾「エンジンのないクルマ」(2009-40) 11/10 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、自動車の終わり。
愛を語るカップルは、会場から姿を消しました。太ももと肩を露出し、来場者のリクエストに応え、ポーズをとるキャンペーンガールの数も少なくなりました。幕張メッセの「第41回東京モーターショー」(10/24~11/4)は、なにより、欲望が渦巻く熱気に欠けていました。それもそのはず、出展者数、展示面積は、前回2007年の半分、そして入場者数は、61万人と前回の半分以下になり、32年ぶりに100万人を割りました(11/5 東京)。
その落日の東京モーターショーの最終日に、さらにショッキングなニュースが。トヨタが自動車レースの最高峰「フォーミュラーワン(F1)」から完全撤退を発表したのです。2002年に参戦、8年間で140レースに参加、ついに一度も優勝することなく。会見に臨んだ豊田章男社長は顔を歪め、山科忠専務は無念の涙を流し、ハンカチで顔をおおいました。(11/5 東京中日スポーツ)。
なぜレースを止めるのか。年間500~600億かかる経費を削減するためにです。しかし本当の理由は違います。ガソリン・エンジンを使った自動車の時代が終わるからです。
自動車は、レースで新しい技術の開発をし、モーターショーで試作車を発表し、そしてそれをもとにニューモデルの市販車を発売してきました。記者会見でトヨタの重役が流した涙の意味は、単なる感傷ではありませんでした。時代が変わる。自動車の時代が終わるからです。
2、エンジンのないクルマ。
自動車はどこに行くのか。地球温暖化を防止するために、燃費を改善し、さらにはエンジンのないクルマを作るのです。
1)HV(ハイブリッド車)・・・トヨタのプリウス、ホンダのインサイト。hybridとは、混合。エンジンと電池+モーターで走ります。2)PHEV(プラグインハイブリッド車)・・・エンジンと充電による電池と併用する自動車。家庭のコンセントで充電できます。3)FCV(燃料電池車)・・・水素などで電気エネルギーを得て、モーターを回して走る。ただし水素のインフラ整備がかかります。4)水素エンジン車・・・マツダの水素を直接ロータリーエンジンで燃焼させる方式。やはり水素インフラの問題があります。そして本命の5)EV(Electric Vehicle=電気自動車)・・・HVではエンジンが主、電池が補助でしかありませんでしたが、EVは「エンジンのないクルマ」。電気だけで走る、究極のエコカーです。EVの未来性は、EVによってクルマからなくなる部品を想像しただけでわかります。
1)エンジンブロック 2)エンジンヘッド カムシャフト 3)潤滑装置 冷却装置 4)吸排気装置 キャブレター マフラー 5)トランスミッション クラッチ 6)点火装置 7)エンジンオイル 8)燃料タンク(『「エンジンのないクルマ」が変える世界』大久保隆弘 日本経済新聞出版社)。自動車は変わります。
3、EV(電気自動車)。
1)米国・・・かつて世界に君臨したビッグ3(GM、クライスラー、フォード)は、オバマ大統領の「グリーンニューディール政策」で復興しようとしています。大統領は2015年までにPHEVの市販台数を100万台にし、再び世界のリーダーになることを宣言しています。
2)中国・・・中国は世界一の自動車王国です。2009年に新車販売台数で米国を抜き世界のトップになります。世界初のPHEVを作った比亜迪(BYD、深?)は、年末に純電気自動車「E6」を、また北汽福田汽車(北京)も年内に電気自動車「迷迪(Midi)」を発売します(10/31日経)。
3)日本・・・09年7月、世界初の市販EV、三菱の 「i MiEV(アイミーヴ)」があります。いよいよ10年4月からは一般に販売されます。そしてニッサンが10年の後半にEV「LEAF(リーフ)」を発売します。三菱とニッサンは、HVでトヨタとホンダに負けましたが、EVではいまのところ逆転勝利しています。
どの国の誰がEVの勝者になるか。リチウムイオン電池の革新、価格競争、社会インフラ整備、法規制、原油価格の動向。日本はトップを走っていますが、勝者になるまでの、その変数は複雑です。
かつてクルマは、ポールとポーラやケンとメリーのためにありました。免許を取る、クルマを買う、そして彼女とハイウェイをドライブするのです。ふたりのためにクルマ、ファッション、音楽がありました。ふたりの「愛」と「夢」をかなえる、エンジンのないクルマが、未来の勝者になります。