コンテンツ・ビジネス塾「鈴木敏文」(2007-18) 5/8塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
○セブン・イレブンの鈴木さんは、いまや世界のスズキです。
ご存知ですか、日本でコンビニを始めたのは、セブン・イレブンの鈴木敏文さんです。たったの31年前、1974年にセブン・イレブンの1号店が日本でオープンしています。この年号は、鎌倉幕府や江戸幕府が始まった年以上に、現代の私たちにとっては重要かもしれません。そのセブン・イレブンは現在、全国で約1万店(ちなみにローソン約8千店、ファミリーマート約6千店)になり、私たちの生活になくてはならぬものになっています。1963年にイトーヨーカ堂に入社した鈴木さんは現在、セブン・イレブン、イトーヨーカ堂、デニーズ、セブン銀行、そごう、西武百貨店などの、世界3万3千店舗、売上高8兆円の巨大流通グループのセブン&アイ・ホールディングス会長になっています。米セブン・イレブンは、全米4000店の超優良企業でしたが、その後経営不振に陥り、日本人のスズキによって再建され、いまでは日本の子会社になっています。そればかりではありません。セブン・イレブンは北京、上海・・・中国でも快進撃を開始しています。そして、スズキは、米ハーバード・ビジネス・スクールや英ケンブリッジ大学でMBA(経営学修士)受講生に、「消費は経済学ではなく心理学」と講演し、スタンディング・オベーションを浴びているスターになっています(日経4/1~4/30)。
○「商売は心理学で」とは、顧客の立場で考えることです。
心理学というと何かむずかしい感じがするのですが鈴木さんは、自身は販売も仕入れも経験がないから、顧客心理からでしかものを言えないからだと説明します。しかしやったことはどれも常識破り、小売業の革命です。
1)共同配送・・・はじめセブン・イレブンには70台もの商品の配送車が来ていました。それが現在では10台以下になっています。例えば牛乳では各メーカーの車で届けられていたのです。それを1台で運ぶようにしたのです。ひとつのメーカーが陳列棚を独占するより数社のメーカーの製品があった方が、牛乳全体も売れるしそのメーカーの売り上げも上がる。説得に使われたのは、顧客は牛乳を選べるから買うという心理です。
2)単品管理・・・何が売れているか、お客さまが何を支持しているかを、厳しくキャッチすることです。機会ロスと廃棄ロス。売り切れ、売れ残りをなくす、単品ごとに売れ筋と死に筋をつかむことです。1983年にPOS(販売時点情報管理)システムを完成させ、発注データだけでなく、販売データをつかむことに成功します。日本初、世界初です。しかし難問はさらに先に、きょう売れたものが明日も売れるとは限らないのです。
3)仮説と検証・・・何を何個注文するか。その結果、何が何個売れたかをチェックすることです。鈴木さんは、おいしいものは飽きられる、と怖いことを言います。売れているものは、やがて売れなくなるのです。いまは「富士山型」ではなく「茶筒型」で売れると言います。つまりだんだん売れるようになりだんだん売れなくなるのではないのです。ワッと売れ、ピタッと売れなくなるのです。さらに、いまは「多様化」ではなく「画一化」の時代だと言い切ります。多種多様の商品が売れているように見えるが、短期的に見れば単一商品の人気の連続に過ぎないのです。何を発注するか、何が受け入れられたか。売れた売れなかったは、心理の読み比べになるのです。
○全国から1500人、毎週東京に全員集合!
単品管理、仮説検証は、全国から集まるOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)に、毎週鈴木会長から直接話されます。トップからのダイレクトコミュニケーションでFCに、そしてFCから7~8店舗のオーナーとアルバイトに、セブン・イレブンの戦略は伝えられ、独自のDNAが形成されているのです。
鈴木さん自身は、口頭試問で答えられないほど「あがり症」でした。いまでも初対面の人、1対1で話すのは苦手だと言います。つまり恥ずかしがりやなんです。でもその人が、休日には家族でセブン・イレブンの弁当を試食しているというのですから、信頼せざるを得ません。ゴールデンウィークに江の島の浜辺でお稲荷さんとおにぎりのお弁当を買って食べました。ジーン!本当においしいのです。