ビルとスティーブの逆襲。

コンテンツ・ビジネス塾「iPhone」(2007-22)6/4 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

○ビルとスティーブの逆襲。
新しいネット社会を表すキーワードに「Web2.0」があります。言い始めたのは、米のティム・オライリー、日本で広めたのはベストセラー「ウェブ進化論」(ちくま新書)の梅田望夫さんです。しかし「Web2.0」は、何かの技術革新を表す言葉ではありません。それだけに説明しにくい、うまく言える人はなかなかいません。
Web2.0でビジネスは変わる」(ソフトバンク新書)の神田敏晶さんは、「人の行動様式の変化を意味する言葉で、ウェブを通じて私たちはやりたいことができるようになった」と、解説しています。元祖・梅田さんは、「総表現社会」、と明解です。「Web2.0」は、過去の会社と未来の会社を、はっきり分けます。過去は、IBMインテルマイクロソフト。未来は、アマゾン、グーグル、ヤフーです。もちろん時代は過去から現在にそして未来に流れて行きます。ところが大変、過去と思われていた勢力が息を吹き返してきたのです。ビル・ゲイツ会長のマイクロソフトはヤフーとの合併話、スティーブ・ジョブスCEOのアップルがグーグルとやけに仲が良くなってきたのです。
ビルとスティーブは、ともに1955年生まれ、新聞は「『55世代』のラストウォー」と書き立てのです(日経 5/31)。
○忘れていませんか。PCを作ったのビルとスティーブです。
ビル・ゲイツは、1975年に世界初のパーソナル・コンピュータとして登場したアルテア8800のOSを開発しました。そして、IBMのためにDOSを開発、さらにウィンドウズで世界のコンピュータの9割までもが、マイクロソフト製品を使うようになる大成功を収めるのです。
一方、スティーブ・ジョブスは、1976年にPCのアップル1を、77年にはパソコン時代の始まりと言われるアップル2を開発。米のパソコン市場の8割を握るまでになります。そして1984年には現在のパソコンの標準になる、アイコン+マウス型のマッキントッシュを発売しています。
ビルとスティーブのふたりは、パソコンの父と母なのです。この両雄が10年ぶりに共演しました(日経 6/1 カリフォルニア、メディア・ハイテク産業会議「D5」)。「世界初のソフトウエア会社を設立したビル・ゲイツ」、「だれもがコンピュータを使えるようにしたスティーブ・ジョブス」ふたりは、互いをこう表現し、その功績をたたえ合ったのです。
○スティーブの秘密兵器、電話の革命「iPhone
ビルは来年7月には現役を引退し、慈善活動に専念することを表明しています。対するスティーブは、再びネット社会の「海賊」になろうとしています。その武器になるのが2007年の年頭に発表された、「iPhone」(アイ・フォン)です。まだ見たことも触れたこともないiPhoneが、なぜ革命なのか。「iPhone=衝撃のビジネスモデル」(岡嶋裕史 光文社)に、教えてもらうことにします。
1)Web2.0なんて、あほらしい。
ネット社会の未来代表グーグルは所詮広告ビジネス。情報・知識が金を生む、コンテンツ・ビジネスになっていません。「ロングテール」もばからしい。巨大資本しか、スーパーニッチを狙えません。iPhoneは、情報や知識に値段をつけます、コンテンツをビジネスにします。
2)NGNも先取りしています。
NGN(Next Generation Network=次世代ネットワーク)の夢である、トリプルプレイ(電話、ネット、映像)、FMC(固定と携帯の統合)も可能です。iPhoneは、なによりおしゃれ、クールです。
3)ほんとのユビキタス端末を実現します。
入力はテンキーではありません、タッチパネルです。基本は携帯電話とiPodの融合です。ATM、SuicaPASMOとの連携も、病院のカルテにアクセスできる夢もあります。iPhoneは、ほんとうのユビキタス、フェデレート(統合された)端末です。
岡嶋さんは、「Web2.0」と「ロングテール」を理論や思想として、却下します。対する「iPhone」は、思想を具現化した実体のあるビジネスです。海賊・スティーブが、(バーチャル)新大陸への上陸を開始したのです。過去の逆襲が始まるのです。