三越・伊勢丹が日本1の百貨店になります。

コンテンツ・ビジネス塾「三越伊勢丹」(2007-33)8/21塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

○日本1の百貨店が登場します。
百貨店で売上高4位の三越と5位の伊勢丹が、2008年春に経営統合することで合意しました(日経8/17)。現在調整中の社名は、「三越伊勢丹ホールディングス」で、「三越」「伊勢丹」の店名は残り、会長に伊勢丹の武藤信一社長、社長に三越の石塚邦雄社長が就任すると予想されています(日経8/18)。三越の前身は、1673年創業の呉服店越後屋」、1904年に「三越呉服店」になります。一方の伊勢丹は、1886年創業の「伊勢屋丹治呉服店」、1930年に株式会社伊勢丹が設立されています。経営統合の背景には、1)少子高齢化で市場のパイが縮小していること、2)全国の百貨店売上高が10年連続して前年割れが続いていること、3)両社が生き残るためには「売上高1兆円クラブ」の最終切符を手に入れる必要があったこと、以上があげられています。
三越には、東京・日本橋の本店をはじめ全国20店舗があります。強みは、50代以上中高年齢層、富裕層(金持ち)、そして法人の顧客が多いことです。日本橋本店の高級舶来品(海外の時計・宝飾品)の売上げには定評があります。弱みは、売れない、業績不振です。2006年には大手百貨店で唯一、減収減益を記録しています。伊勢丹には、新宿本店のほか13店舗があります。強みは、ファッションです。流行に敏感な20〜40代の支持があります。ファッションの流行は伊勢丹新宿本店から始まるのです。業績は好調です。売上高、利益とも過去最高を記録しています(07年3月期)。弱みは本店依存度が高すぎることです。本店がコケたら会社もあぶないのです。三越には資金調達の不安、伊勢丹には規模の不足。2社は、互いの弱みを補完するために手を組むのです。
○1兆円クラブ(4強時代)。
現在の百貨店売上高ランキングのトップは高島屋です。これが来年春には、がらりと変わります。
1)三越伊勢丹ホールディングス(08年4月) 1兆5858億円 
2)J・フロントリテイリング(07年9月 大丸+松坂屋) 1兆1736億円 
3)高島屋 1兆494億円 
4)ミレニアムリテイリング(03年6月 そごう+西武) 9665億円
百貨店の生き残りの条件とされる「1兆円クラブ」の椅子はこれですべて埋まると言われています。
中堅、電鉄系、地方百貨店は4強のいずれかと手を結ぶしかないといわれています。ちなみに4強の後は、5)丸井 5521億円、 6)エイチ・ツー・オーリテイリング(07年10月 阪急百貨店+阪神百貨店) 5068億円、となっています(日経 7/26)。そしてもうひとつ、注目の百貨店があります。銀座・松屋です。銀座で売上トップの優良企業は、どこと組むのでしょうか、独身を貫くのでしょうか(ビジネスアイ 7/20 8/16)。
○百貨店の終わり。
百貨店は、1872年のパリ、ボン・マルシェに始まります。
1)百貨店は産業革命で大量生産された商品を安く買う場所として登場しました。「bon marche」とは「よい取引」、つまり「安い」ということです。
2)百貨店は万国博覧会(エクスポジシオン・ユニヴェルセル)のように、さまざまな新製品を陳列(エクスポゼ)する場所でした。
3)そして百貨店は、自分の生活にはない贅沢品・超高級品に触れ、ファンタスティックな経験をする場所でした(「デパートを発明した夫婦」鹿島茂 講談社現代新書)。
産業社会の百貨店を発明したのは、フランス人のアリスティッド・ブシコーです。巨大店舗、バーゲンセール、文化的イベント・・・。百貨店の事業メニューは100年以上昔と何も変わっていません。
そしていま産業社会は情報社会に。安いなら10円ショップが、世界の新製品はウェブに、贅沢品はメゾンブランドにあります。さらに顧客は、勤勉、禁欲、努力の人ではなく、反逆者、危ない生き方、自己中心の快楽主義者、つまりクールな人に変わっていくのです(「第三の波」 アルビン・トフラー 徳岡孝夫監訳、 「クール・ルールズ」ディック・パウンテン+ディッド・ロビンズ 鈴木晶訳 研究社)。いまのままの百貨店に、未来はありません。