任天堂に学ぼう

コンテンツ・ビジネス塾「任天堂」(2007-42)10/23塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

○日本の優良企業
顧客不在の「物づくり信仰」と企業経営での「リーダー不在」、このふたつが日本のエレクトロニクス業界の不振の原因です。しかしその日本でも、快進撃を続けている企業があります。ゲームの任天堂です。家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」は、累計販売台数で世界首位に(9/12据置型ゲーム機のカテゴリー)、株価は7万1300円(10/15)で上場以来の高値を更新しました。その結果、株式時価総額(株価×株数)は、10兆1900億円に増加。時価総額ランキングで、トヨタ三菱UFJに次ぐ日本で第3位の企業にのし上がったのです。4位がNTT、5位がキャノン。任天堂が抜き去って来た企業の名前を見るとその価値に驚きます(日経10/16)。
任天堂がなぜ成功したのか。それは「物づくり信仰」と「リーダー不在」の対極にある企業だからです。まず他社にない特別の技術を持っている企業ではありません。ゲーム機の構成部品のほとんどは簡単に手に入る汎用品です。しかもゲームづくりでは顧客を広く考えています。一部のゲームマニアだけではないのです。携帯用ゲーム機「DS」は、ゲームになじみのない女性や高齢者に普及、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、世界中で860万本以上売れています(日経10/19)。顧客を無視し、テレビの薄さやDVDの規格を競っているエレクトロニクス業界とは違います。そして、任天堂はリーダーに不足していません。社内アンケートで物事を決めるような、「民主的」で無責任なリーダーはいません。山内溥宮本茂岩田聡・・・伝説的で魅力的なリーダーがいる会社です。
任天堂のリーダー列伝。
1)山内溥(やまうちひろし)
49年から02年までの3代目社長。79年世界初の携帯用ゲーム機ゲーム&ウオッチ」で大ヒット、さらに83年「ファミリー・コンピュータ」で歴史的な大ヒット。最終デモ機をわざと床に落として、子どもの乱暴な扱い耐えられるかテストしたという、「ゲームボーイ」開発時の逸話がある。シアトル・マリナーズの実質的なオーナー。06年には、京都大学医学部へ個人資産の70億円を寄付している。
2)宮本茂(みやもとしげる
コンピュータゲームの父。大ヒット作「スーパーマリオブラザース」を制作。32才でゲームソフト開発の最高責任者。「100人の凡人より1人の天才」、山内社長による人事。品質管理は、恐怖の「ちゃぶ台がえし」と呼ばれる「宮本チェック」。面白くないものには、ダメだし、白紙戻しを容赦なく命令する。07年米・タイム誌企画の「世界にもっとも影響力のある100人」で第9位に選ばれている。
3)岩田聡(いわたさとし)
任天堂のゲームソフトを開発するHAL研究所出身。00年に任天堂に入社。02年42才で任天堂の社長に就任。これも山内社長の人事。だれにでも楽しめるゲームを開発する現在の任天堂路線の立役者。04年「ニンテンドーDS」発売、06年には「Wii」を投入(以上は、「ウィキペディア」を参考)。
○ゲーム・クリエーター。
ゲームとは遊びです。では、遊びとはなにか。フランスの哲学者ロジェ・カイヨワは、「遊びと人間」(講談社学芸文庫)のなかで、遊びの4原理をあげています。1)アゴン(競争)・・・よーい、ドン!の競争。試験、コンクールで、勝利する喜びです。2)アレア(運)・・・競馬の菊花賞で当たっちゃって。ギャンブル、くじ引きで、大金を手にする幸運です。3)ミミクリ(模擬)・・・原宿駅の近辺にたむろってる黒装束のゴスロリ。コスプレ、映画、芝居の楽しさです。4)イリンクス(目眩)・・・キャー怖い、また乗りたい。、転落、墜落、陶酔、酩酊、われを失う快感です。
ゲームが好きだから、ゲームを作れるわけではありません。ゲームを作るとは、ゲームとは何かを考えることです。ゲームは、小説や映画を作るのと同じ。才能の仕事です。必要なのは天才です。
国は、ゲームなどのクリーターの養成を、施策としてあげています。自分の才能をよく考えてください。これは「おりこうさん」で「おばかさん」だけの仕事です。
12/1に任天堂は、白い板をコントローラーとして使う「Wiiフィット」を、発売します。こんどは足のゲームです。これも天才の仕事になるのでしょう。