ボケポンGOのジョン・ハンケ、ネット次第の新しいカリスマ。

クリエーティブ・ビジネス塾35「ポケモンGO」(2016.8.15)塾長・大沢達男

ポケモンGOのジョン・ハンケ、ネット社会の新しいのカリスマ。」

1、事件
ポケモンGOの社会的なインパクトに、ビズネスパースンの経済紙「日本経済新聞」が驚きました。
ポケモンGOの利用者は、配信が開始された7月22日(金)から24(日)で1147万人、1週間後には3000万人を越えました(日経7/29、30)。15~69歳の男女の9割がポケモンGOを知り、4割がプレーをしています。つぎにポケモンGOは日本経済を衝撃を与えました。株式市場で任天堂株、日本マクドナルド株も大商いになりました(その後ポケモン相場は失速しましたが)。そしてポケモンGOは、社会的な事件事故を起こしました。まず偽アプリの氾濫です。43の偽アプリが確認されています。アドレス帳が盗み取られ、広告が不正に表示されます。交通事故やトラブルもありました。自動車自転車事故が36件、道路交通法違反で交通反則切符を切られた人が70人を超えました(日経7/26)。
2、AR
何が、ポケモンGOをこれほどまで社会的なインパクトのある事件にしたのでしょうか。
第1に、ポケモンGOにはAR(Augmented Realty=拡張現実)が使われていることです。ARとは、スマホやパソコンにカメラで撮った現実を映し出し、その中で 人口のキャラクターを表示し、動かす技術のことです。ポケモンGOでは、スマホに搭載されたGPS(全地球測位システム)により、利用者がどこにいるかを把握し、設定した場所に近づくとポケモンのキャラクターを表示します。ARはVR(Virtual Realty=仮想現実)の上を行く新技術で、パイロットの訓練システムなどに使われています。
第2に、ポケモンGOで遊ぶためには、家の外に出て身体を動かし、新しい場所を発見し、人々と交流しなければならないことです。現代社会の人は家に閉じこもっている。地域コミュニティに入って行かない。誰も近寄らない公園、広場がある。ポケモンGOはこうした問題を解決し、健全な街を作り、互いを友達にし、人々の交流に役立とうとしています。
第3に、ポケモンGOはゲームとしてだけでなくマーケティングツールとして、新しいビジネスを生み出す可能性があります。「スポンサード・ロケーション」という仕組みを日本マクドナルドが使いました。ゲーム配信と同時に、約2900店の店舗利用者が立ち寄る「ポケストップ」(アイテムが手に入る)、「ジム」(ポケモン同士を戦わせる)に設定しました。利用者はポケモンGOで遊んでいるだけで、広告と気づかずに店舗に集まってきます(日経7/23、7/28)。
ポケモンGOを始めてから、鬱病(うつびょう)が改善し、体調が良くなった(7/23)。日本マクドナルドでは7/22以降、ポケモン効果で売上げが10%押し上げられています(日経8/4)。
3、ジョン・ハンケ
誰が、ポケモンGOを開発したのでしょう。
ベンチャー企業ナイアンティックの創業者でCEOのジョン・ハンケ(John Hanke 49)です。ジョン・ハンケは「グーグルアース」と「グーグルマップ」さらに「グーグルストリートビュー」の生みの親です。ジョン・ハンケは、一度グーグルに買収され、再びグーグルから独立した、ARのカリスマ(グル・教祖)です。ヒッピーのふるさと、米カリフォルニア大学バークレー校出身です。
ジョン・ハンケには、ポケモンGOのヒットは予想されていました。すでに別の位置情報ゲーム「イングレス(Ingress)」(2013.12.15発売、日本版は2015.3.25)で実験済みだったからです。イングレスは世界を舞台にGPSを使って行う陣取り合戦ゲームです。「ポータル」と呼ばれる拠点を取り合い、自分の陣地を拡張します。もちろん陣地を取るためには、現地に出向かなければならない(たとえば富士山頂の剣が峰もある)。岩手県横須賀市は観光振興に、ローソンはプロモーションに使いました。街に出る。そしてコミュニケーションする。基本構造はポケモンGOと同じです。
ポケモンGOは新しい社会問題を起こしています。「ながらスマホ」で、ホームから落ちる人、交通事故を起こす人。そして広島・平和記念公園ポケモン目当てで集まってしまう人。さらには私有地に不法侵入する人。これらは新しい楽しみには必ずあるマナーの問題です。ゲームの持つ本質的な欠陥ではありません。
ゲームの進歩が、社会を明るくしました。ポケモンGOの成功とジョン・ハンケに乾杯!