いよいよテレビとネットは結婚します

コンテンツ・ビジネス塾「テレビとネットの結婚」(2008-21) 5/27塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ブロードバンド特別講演会。
日本のIT社会は、e-Japan(イー・ジャパン)からu-Japan(ユー・ジャパン)へと進展しています。
e-Japanとは、日本をトップクラスのインターネットの国にするための政策で、2000年に始まりました。現在高速インターネット網は整備され、その目的は達成されました。u-Japanとは、ユビキタス社会を実現するための政策で、2004年から始まりました。ユビキタス(ubiquitous)とは、どこにでもあるという意味のラテン語です。つまりこれからのIT社会では、いつでも、どこでも、だれもが、必要な情報のやり取りができるようになるのです。ネットの議論とは別に、テレビではデジタル放送への移行が大きな話題になっています。アナログ放送は、2011,7,24に終了します。そしてデジタル放送のシンボル、新東京タワーも2011年に完成します。
「どうなる?通信・放送融合時代の映像配信」。タイミングのよい講演会が東京・明治記念館で開催されました(主催:ブロードバンド・アソシエーション)。
2、通信と放送の融合
講演会には、プロバイダーからNTTぷららの坂東氏、テレビからアクトビラの久松氏、コンテンツからNHKオンデマンドの木田氏、以上3氏の「通信と放送の融合の現在」の報告がありました。
1)NTTぷららは、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)、IP電話ひかりTV(IPTV)のトリプルプレイの会社です。特徴として、10,000本以上のビデオ、13,000本のカラオケ、地デジIP再送信、ハイビジョン、IPTVの標準規格のプラットフォーム。現在の会員は265万人です。
2)アクトビラは、ネットもOKのテレビ。強みは東芝、日立、シャープ、ソニーパナソニックが、共同出資していること。グローバルスタンダードの新しいテレビを作る会社です。特徴は、入会不要つまりアクトビラ対応の機器を買うだけ、テレビはもちろんネット経由で映画もOK、TSUTAYAにも、NHKオンデマンドにもアクセスでき、しかもハイビジョン画質のサービスがあります。
3)NHKオンデマンドは、放送法の改正により可能になったビジネスモデルです。通信と受信料がOKになったことで多彩なコンテンツの提供が可能になりました。特徴は、NHKアーカイブ51万本から厳選された番組、見逃し番組を1週間ほど見れることです。サービスの開始は08年12月です。
3、サービスとコンテンツ後進国の日本。
e-Japanは、成功したけれど、u-Japanは実現していない、日本はサービスとコンテンツで後進国になっている、こう指摘したのが講演の中村伊知哉慶応大学教授です。中村教授は、つぎの3点から、日本の後進性を指摘しました。
1)情報通信法
まず法体系の整合性の問題です。現在の通信と放送には、電波法、電気通信事業法、有線放送電話法、日本電信電話株式会社法放送法、有線テレビジョン放送法、有線ラジオ放送法電気通信役務利用放送法などの法律があります。わかりにくいだけでなく、そこには通信と放送を二分する思考法があります。整理し改訂すべきなのです。
2)デジタル著作権
現行の著作権法はアナログ的です。著作権が物に付着している時代の法律です。デジタル時代の情報は物に関係なくネットワークを移転・複製されます。新しい法律が必要です。日本の法律はヨーロッパでまったく理解できないという反応があったと教授はレポートしています。
3)情報通信省
なぜ日本は遅れたか。それは行政がバラバラだからです。通信・放送は総務省著作権文部科学省、電子機器とコンテンツは経済産業省、IT戦略は内閣官房。政策をスピードアップさせ、サービスとコンテンツの後進国から脱出するためには、情報産業省の設立が必要なのです。
中村教授は、竹中元総務大臣(慶大教授)のお膝元の先生です。教授は説得力がありました。慶応大学から再び大臣を。講演会に出席していたエグゼクティブたちは、中村教授を情報産業省の初代大臣にと考えていました。