電通って、なあーに?

コンテンツ・ビジネス塾「電通」(2008-33) 9/9塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、正体不明の人気企業。
学生が就職したい企業のベストテンに必ず顔を出す。けれどもどんな仕事をしている企業なのか、だれもうまく説明できない。それが電通です。その電通で社長、会長を務め、現在最高顧問の成田豊氏が、8月いっぱい日経に私の履歴書を書きました。波瀾万丈の男の感動的な物語でした。が、肝心の電通の仕事はやっぱりわからない、理解を超えている、これが素直な感想でした。
では電通とはなにか。まず基本的な理解から。第1は名前、電通の前身は、100年前の「日本広告」と「日本電報通信社」、広告とニュース通信の合併会社でした。第2は広告。電通は広告媒体(メディア)を広告主に紹介し、15%のマージンを取ります。第3はマーケティング電通は、何を作り、いくらで、どこで、だれに、売るかについても、提案しています。第4はクリエーティブ。電通は広告主に代わり、新聞広告やCMを制作しています。
2、吉田秀雄と成田豊
鬼十則でおなじみの吉田秀雄も成田豊氏もともに東大出身です。ふたりは仲間からの後ろ指にじっと耐え、広告業界の地位の向上のために戦ってきました。広告屋を、近代的な取引の広告代理店にし、広告主の戦略的パートナーに育て上げていったのです。
1)太平洋大学(1968年)・・・大型旅客船を借り切り、学生を集め太平洋を2往復しました。
2)政治意見広告(1975年)・・・都知事選投票前日に、石原候補を支援する意見広告を掲載。
3)バチカン秘宝展(1981年)・・・門外不出のバチカン秘宝の日本公開。法王の来日も成功させる。
4)ロス・オリンピック(1984年)・・・ピーター・ユベロスのロス・オリンピックの民間運営方式に協力。
5)長野冬季五輪(1998年)・・・開会式演出に浅利慶太氏を起用。横綱曙が土俵入りをする。
6)スタジオジブリ(1997年)・・・「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」、「ハウルの動く城」に出資。
7)日中広告教育交流プロジェクト・・・江沢民国家主席と会談。北京大学などで広告講座を開講。
以上は、電通の社史ではありません。成田氏の「私の履歴書」に現れたものから抜粋したもの、つまり成田氏が関与した仕事だけです。以上のリストを見て何をする会社か想像できますか。ムリです。
視点を変えてみましょう。「情報伝達媒体を意味するメディアは、広告媒体を示す業界用語から出発している」「消費社会はすべてのモノ、コト、ヒトが広告の媒体となる社会といえる」(佐藤卓巳「メディア社会の輿論と世論」(日経7.2008)。正体不明の電通がスッキリと理解できます。
電通とは、メディア(広告媒体)を作り、広告のスペースとタイムを売り、広告を制作する会社です。
3、鬼10則と俺10則。
「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない」に始まる鬼10則は、51年に吉田秀雄が書いたものです。しかしこれは理想的な精神論。成田氏の自伝を参考に現実的な実践論を考えました。
「俺10則」(2008年)
1)仕事するとは、借金することである。
2)仕事ではいい靴を履け、おしゃれに気を配れ。
3)女に持てろ。女を泣かせろ。
4)物書き、絵描き、映画監督・・・に、友だちがいるか。
5)ゴルフ、麻雀、カラオケ・・・なにかひとつ特技を持て。
6)映画を見ろ。仕事中に映画館へ入ってもよい。
7)昼間から酒を飲んでもかまわない。自分をはぐれものだと思え。
8)突進し、強引に仕事をつくるなら、スカタン(まぬけな失敗)も、許す。
9)広告主とは親子の仲。従業員とは違い、子の仕事に終わりの時間はない。
10)仕事していて借金するようでは、・・・やはりダメか。
(注:ヒントに「桂春団治富士正晴 講談社文庫を使いました)
グーグル、はてな・・・最新のIT企業では「自分の時間」を強制的に持たせています。電通は昔から自主的に、「自分の時間」を勤務時間の中に、持っていました。そこが新しく、強かったのです。