おめでとう、パナソニック。私たちは、松下を忘れない。

 コンテンツ・ビジネス塾「パナソニック誕生」(2008-37) 10/07塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、パナソニックにおめでとう。
「本日、新たに。パナソニック株式会社です。Panasonic ideas for life 」。新生パナソニックが、10/1、日経に見開き30段の企業広告をうちました。松下にさようなら、いよいよパナソニックの新しい歴史が始まります。
パナソニックは、いままで松下、ナショナル、パナソニックの3つの名前を持っていました。松下は、1918年(大正7年)に創業者の松下幸之助が設立した、松下電気器具製作所に由来するもの。
ナショナルは、1927年(昭和2年)に松下幸之助が角型ランプを発明し、国民の必需品になるようにとの思いでつけた「ナショナルランプ」に始まります。そしてパナソニックは1955年(昭和30年)にスピーカーを輸出しようとした米国で、ナショナルが商標登録されていたことから作られた新造語。PANASONIC=PAN (ひろく)+SONIC(音)。松下製品の生み出す音が世界に届いて欲しいという願いを込めたものでした。
なぜ「松下」と「ナショナル」を捨てるのか。ブランド力を強化するためにです。パナソニックは売上高ランキングで電機業界の世界5位(米フォーチュン誌)です。しかしブランド力となると世界の78位(米インターブランド)。韓国のサムソン(21位)、ソニー(25位)との差はあまりにも大きいのです。
2、パナソニックの戦略。
1)暮らし丸ごとパナソニック(丸ごとビジネス)
パナソニックの特徴は、日常生活に密着した商品群をかかえている電機メーカーであることです。いままでは、部品から完成品までを一貫して自社で手がける「縦」の垂直統合モデルがありました。これからは「横」も丸ごと。たとえばビルを造れば、建設資材だけでなくAV製品も売り込む。住空間のあらゆる製品をパナソニックで提供していくのです(「パナソニック始動」 日経9/26~9/30)。
2)イタコナ
原価低減策です。製品を基板や板金などの「イタ」から、樹脂などの「コナ」にまでさかのぼり、徹底的に原価を削るのです。イタコナは管理部門にも浸透しています。資金取引を効率の良いシステムに統一しているのです。
3)目標は世界で首位。
先ず海外です。未開拓の欧州市場で白物家電の挑戦が始まります。新興国には車載用のパナソニック製品を売り込みます。カーエロクトロニクス、電子部品、車載用電池の制御技術。エジプト、トルコ、インドネシアなどの、BRICsの先も見据えています。パナソニックは海外で弱い。海外売上高比率は現在約50%。比べて、ソニー、キャノンは70%を超えているのです。世界地図から空白を消します。09年度には連結売上高10兆円。10年後の創業100周年には、サムソン、シーメンスそしてGEを抜いて、電機の世界首位を目指すのです。
3、松下幸之助
松下の名前は消えますが、私たちは松下幸之助を忘れることはできません。もっとも尊敬できるビジネスの先輩としてまだまだ学ばなければなりません。
「物づくりは、人づくりから」。人材がいなければいいビジネスはできないのです。人材こそが財産です。「水を飲んで溺れかからなければ、泳ぎは覚えない」。やってみせるのです。させてみるのです。仕事を肘掛け椅子に座って覚えることはできません。仕事は現場です。「商売人が、事業をやって儲けないということは、戦争に行って負けたのと一緒です。医者だったら誤診と一緒です。絶対に許されないことです」。仕事は世のため人のためにするのです。そしてもうひとつ「災害で壊滅的な打撃を受けた街はその後必ず復興し栄えるが、平穏無事だった幸運な街はその後没落していく」。明治(27年)に生まれた幸之助は、苦労をします。家が倒産、父と兄弟をつぎつぎに失い幸之助は、小学校を中退し10才の時から家計を助けるために、奉公(働き)に出ています。パナソニックに逆境多かれ、そしてパナソニックに幸あれと祈ります。