コンテンツ・ビジネス塾「観光庁」(2008-38) 10/14塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、観光庁誕生。
10/1に国土交通省の外局として観光庁が誕生しました。観光とは、ほかの土地を訪れ、そこの景色を見て回ること。ツーリズム(tourism)=観光旅行です。2008年上半期(1-6月)に日本を訪れた外国人数は、約430万人。年間予想では900万人になります。この数を世界で見ると30位にあたるもので、フランスの1/10近く、香港の1/2にも満たない水準です。世界で外国人旅行者受入数のベストスリーは、フランス8000万人、スペイン6000万人、米国と中国が4500万人です。ちなみに、訪日のベストスリーは、韓国130万人、台湾70万人、中国50万人です。
2、ツーリズム。
どうやって外国からお客さんを呼ぶか。昔のように、「フジヤマ、ゲイシャ」では、戦えません。観光旅行は、団体旅行のマスツーリズムから、テーマ志向のニューツーリズムに変わってきています。
1)ビジネスツーリズム
日本は国際会議の誘致件数で、アジアでトップの地位を追われてしまいました(97年 世界10位 アジア1位)。シンガポール、中国、韓国のやられてしまったのです(06年 世界18位 アジア4位)。
多い消費額、季節を問わない、リピーターにつながる、仕事での来訪者はおいしいのです。
2)ヘルスツーリズム
「癒しの旅」に医学的根拠をプラスした健康回復・増進の観光旅行です。福島県いわき市の「湯治」、長野県の「森林セラピー」、北海道上士幌町の「免疫リゾート」、香川県さぬき市、高知県室戸市の「ドルフィンセラピー」、など。発展型としては「医療観光」があります。シンガポールは中東の富裕層をターゲットに医療観光を進めています。同時多発テロ以後の中東の金持ちは米国を避けるようになりました。インド、タイ、マレーシア、ドバイも「医療リゾート」を標榜するようになっています。
3)エコツーリズム
環境保全、地域振興、観光振興の調和を計ったものが、エコツーリズムです。「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」、「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」という表現もされます。農村を舞台とする観光が「グリーンツーリズム」です。農林魚家民宿です。クラインガルテン(ログハウスを付帯した滞在型市民農園)もあります。
4)オタクツーリズム
日本には、アニメ、まんが、ゲーム、コスプレ、クールジャパン(かっこいい日本)の魅力があります。かつて米国のジャーナリスト、ダグラス・マッグレイは、GNP(国民総生産)ならぬGNC(国民総文化力)で、日本は世界のトップにいると指摘しました。この観光資源を活用するのです。
オタクツーリズムは始まっています。アニメ「らき☆すた」の埼玉県鷲宮神社、漫画「朝霧の巫女(みこ)」の広島県三次市、水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」の鳥取県境港市、空知英秋「銀魂」の北海道洞爺湖市は、若者の聖地になっています。
5)カジノツーリズム
マカオはカジノの売上高でラスベガスを上回っています。韓国ではソウル市内のホテルでもカジノを楽しめるようになりました。シンガポールでもカジノを始めました。日本でもカジノの賛成派は64%、解禁はそこまで来ています。カジノは観光立国に欠かせません。
3、鎖国日本
世界の観光競争ランキングで日本は世界で23位にとどまっています。何が問題か。これは深刻です。観光の問題を超えています。日本人は外国人を歓迎しないのです。内閣府の調査によれば、「外国人旅行者が増えて欲しくない」と答えた人が23%、さらに、「外国人へのビザ免除や手続き簡素化は不要」と答えた人が53%もいたのです。
かつては小錦、いま朝青龍。日本人は外国人力士をいじめの対象にして遊びます。その本音は、鎖国です。ほんと、情けない(以上は日経に、7/21から35回掲載された、『ゼミナール「観光立国への挑戦」北大観光学高等研究センター』を参考にしています)。