日経の社説は、人の生き方と国の在り方から、逃げています。

クリエーティブ・ビジネス塾3「日経の社説」(2013.1.15)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、「国力を高める」。元旦からの日経社説6回シリーズを要約し、紹介します。
1)新しい国の目標を作る。・・・国力が落ちている。国家と経済と社会の新しい目標を定めたい。かつては経済大国を目指し1993年にGDP国内総生産)世界2位に。しかし2011年には14位。新しい経済の目標に、GDPに海外投資の利益を加えた「GNI(国民総所得)」を提案する。国家の目標は「科学技術イノベーション立国」。そして社会の目標は震災復興で学んだ「共助の精神」。政治の安定、日米同盟、少子化、問題はあるが、自信を持って進みたい。
2)成長は海外、内需地方分権にある。・・・2011年度のGDPは20年前と同じ水準。成長こそ国力の源泉である。第1の課題は、海外の活力を取り込むこと。まずTPP。海外で稼ぎ国内に利益を還流させたい。法人課税を主要国並みに下げる。輸出産業は雇用を生み高い賃金をもたらす。次は内需。医療・介護ビジネスを広げる。規制改革で官製市場を成長分野にしたい。第3は地方分権。地方の創意工夫を生かした観光産業、企業誘致、自然エネルギーの事業化である。
3)成長の担い手は中小企業とベンチャー企業に。・・・大企業による20世紀型の成長は終わった。まず世界に通用する技術・サービスを持った中小企業群。GEやP&Gは日本の有望な企業を発掘している。もうひとつはベンチャー企業。求人サイトのリプセンス、リチウムイオン電池のエリーパワー、4K技術のアイキュ−ブド研究所がある。LED技術と水耕栽培を融合させた野菜工場の話題もある。異分野の知によるイノベーションである。経済再生は企業や個人の新たな挑戦から始まる。
4)自ら新しい国際ルールを作りたい。・・・国力を高めるには技術基準や通商の約束事で新しいルールを作る技術も求められている。潮流の変化を読む力が劣ろえていないか。ウォークマンiPodに新しい土俵作りで破れた。日本企業の国内市場むけの独自路線は弱点である。携帯電話につぐガラパゴス現象の予備軍がいる。金融でも米英主導の基準を所与の規範にしてはならない。TPPでは新たなルールを作る力になりたい。国際ルールは意思決定のスピード勝負である。
5)ダイバーシティを実現したい。・・・多様な人材を集めたダイバーシティを実現したい。たとえば日産の上位ポストの半分は外国人である。まず女性・高齢者の採用、中途採用で人材の多様性を高める。新卒一括採用では、グローバル化、技術革新の速さについていけない。外国人の新卒者は辞めていく、女性も6割は出産で退職する。ダイバーシティは日本的な人事・処遇の改善を求める。認可保育所を増やし、受験秀才だけの大学入試センター試験の改革も必要である。
6)日本は世界から愛される。・・・1990年代のODA(政府開発援助)は世界1、でも現在は世界5位。PKO(国連平和維持活動)も現在は、世界30位台。平和国家の歴史は国際貢献に有利だ。科学技術では山中教授がいる。中韓両国も日本に学べと讃えた。日本を世界の頭脳が集まる知の拠点にしたい。そして生活文化の日本も資産。東急はベトナムで住宅街、ファミリマートは日本より多い海外での店舗展開をしている。アジアにはまだまだ輸出できる日本の魅力がある。
2、軍事力、家電の敗北、そして人生
1)軍事力とエネルギー・・・日経は軍事から逃げています。平和国家は得だといいますが、世界第6位の防衛費を使いながら軍隊を持たないという論法を、中国・韓国を始め、世界は疑っています。日米同盟、国防省憲法を論じていません。同じく原発問題とエネルギーにも触れていません。
日経は、血と汗を流そうとしません。
2)ITとコンテンツ・・・情報社会の新しい潮流であるスマートフォンタブレット端末、そしてネットワーク社会の商品・サービスであるコンテンツの議論を全くしていません。家電の敗北で処方箋が見当たらないからでしょうか。ソニー、パンソニック、シャープを日経は見捨てたのでしょうか。
日経は、泥水を飲もうとしません。
3)日本人と日本国・・・自殺、少子、未婚で、統計学的に日本は滅亡すると予測されています。もっと成長しよう、豊かになろうだけでは説得力がありません。国力とはそこに住む人力、人の力です。修身斉家治国平天下。まず生き方、生きがい、生き様、日本人として何をするかです。
日経は、人生を話し、哲学を語ってくれません。