『Sweet』100万部の奇跡に迫ります。

コンテンツ・ビジネス塾「Sweet」(2010-38) 10/12塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ヒットの理由
テッド「本屋に行ってびっくりしました。女性ファッション誌はみんなおまけがついて、パンパンにふくれて、ひもで結わいてあるじゃないですか」
マリ「そーなの。子どもの頃の漫画雑誌や学習雑誌みたいでしょ。おまけはうれしいわ」
テッド「おまけ付き女性ファッション誌の元祖が、今いちばん売れている『Sweet』(10月号?720 宝島社)。100万部突破というのは驚きです」
マリ「今月号のおまけは、原宿と代官山にあるセレクトショップ「Cher(シェル)」のニューライン「Cher Shore(シェルショア)」とのコラボで生まれたオリジナルのエコバッグ。?720はお得ね」
テッド「表紙は浜崎あゆみさん。最初の広告が化粧品のコーセーでモデルが倉木麻衣さん。そして最終ページと裏表紙の広告がユニクロで、モデルは黒木メイサさん。これでなんとなく雑誌の性格が分かるような気がするんですが・・・」
マリ「ちょっと違う。日本の浜崎あゆみがあれば中ページで世界のスーパーモデル富永愛が登場、過剰な土屋アンナが来ればさわやかな蒼井優を出す。気を使って、バランスをとっているわね」
テッド「この雑誌には本文がありません。まるでファッションのおもちゃ箱です」
マリ「雑誌自体が新しいビジネスモデルだと思うの。全体で470ページ。そのうち本文は31ページだけ。あとは全部メーカー、ショップとのタイアップ。それが100万部の秘密ね」
2、ファッション
テッド「ファッション雑誌として。フランスの『ヴォーグ』や『エル』と較べることができるでしょうか」
マリ「フランスの雑誌はファッションを作る雑誌。スウィートはファッションを売る雑誌」
テッド「問題はそのファッションに時代を開く力があるかです。シャネルは産業社会の女性像、アルマーニは情報社会の女性像、ゴルティエはポストモダンの女性像をファッションで表現しました」
マリ「スウィートには、エルメス、ヴィトンのメゾンブランドはない。ディオールがちょっとだけ顔を出しているけどシャネル、アルマーニのデザイナーズブランドもない。」
テッド「スウィートのキャッチコピーは『28歳、一生”女の子”宣言』。そしていま時代は、GAP、H&MZARAUNIQLO、Forever21のファストファッションへと向かっています」
マリ「でもスウィートはなんでもあり。伊勢丹、マルイ、パルコを一冊で回ることができるのが魅力になっているの。あえてトレンドを主張していないわ」
3、女の未来
テッド「むかしむかしの女性雑誌の3大要素は、皇室、セックス、ゴシップでした。皇后陛下のファッションと、エクスタシーの研究と、映画スターの噂だけで女性は幸せでした」
マリ「いまの働く女性はそれでは満足できない。1)月収100万円の専門職の女性、2)親がお金持ちのお嬢さま、3)仕事で生きているキャリア・レディ、4)地位はないけどおしゃれでがんばるギャル、そして5)ふつうのOLさん。いろいろな女性が登場してきているわ」
テッド「一生”女の子”宣言ですから、まだまだ地位とお金はないけど、おしゃれでがんばるギャルがコアターゲットでしょうか。女性差別がなくなると、女性一人一人が、学歴、容姿、性格で評価され、選別され、差別されるようになります。ただの”女の子"では闘えないと思いますが」
マリ「でも女性が、親の貧富や親の社会的な地位で評価されている、冷たい現実がある。二世スター、二世議員、二世実業家をみんな知っている。スウィートには女の子の夢がいっぱい詰まっているの。成り上がれないかもしれない。たぶん野心も実現しないだろう。でもいい。ファッションはストレスを解消し、自分を変身させて、自信を持たせてくれる。切なくてもろいかもしれないけれど、そこに100万人の”女の子”が共感しているのだと思うの」
*『下流社会』(三浦展 光文社新書)、「雑誌探訪」(永江朗 『文芸春秋』2010.9)を参考にしました。そして湘南のヨーコさん、永福町のミチコさん、代官山のマドカさん、NYのエミさんのご意見をいただきました。ありがとうございました。