起業は新しいビジネス・システムで。

コンテンツ・ビジネス塾「ビジネス・システム」(2008-49) 12/31塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、起業
起業とは、事業を起こすことです。ベンチャー・ビジネス(venture business)とは、「創造力・開発力をもとに、新製品・新技術や新しい業態などの新機軸を実施するために創設される中小企業(広辞苑)」のことです。起業やベンチャーといえば、だれもが画期的な新製品や新しいサービスを想像しますが、もうひとつあります。それがビジネス・システム、新しい事業の仕組みです。
20世紀の最後の四半世紀は、新しいビジネス・システムの企業が、私たちの生活を一変させました。コンビニエンスストア、宅配便、引っ越しサービス、ビデオレンタル、中食ビジネスなどです(日経12/21~12/31「変革期の『ビジネス・システム』」加護野忠男)。
新しいビジネス・システムには、共通の設計思想があります。1)スピード。商品の回転スピードをあげるのです。2)コンビネーション。違うビジネスをうまく組み合わせるのです。3)コラボレーション。社外の力をうまく使うのです。新製品は目立ち分かりやい、ビジネス・システムは目立たない分かりにくい。しかし新製品はマネしやすく持続しにくい、ビジネス・システムはマネしにくく持続します。
2、新しいビジネス・システムの成功
1)スピードのビジネス・システム
顧客価値を上げ、投資効率を高め、売れ残りのロスが少なく、早い商品転換が可能なビジネス・システムです。成功例1:アスクル。翌日配送のオフィス用品です。今日注文すれば、明日に届くから、「アスクル」です。文房具メーカー「プラス」の社内ベンチャー事業として始まりました。成功例2:フェデックスアメリカ国内ならどこへでも翌日配送を実現した宅配業者。深夜までに一カ所に荷物を集め、翌日配達を少ない飛行機で実現しました。
2)コンビネーションのビジネス・システム
経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の新しい組み合わせで、顧客価値を上げ、ロジスティック(原料の調達から商品の販売までの物流)を効率化し、情報を多重に総合的に利用するビジネス・システムです。成功例1:コンビニは24時間営業で、コンサート・チケットの販売、公共料金の振込み、宅配便の受付ができるようになりました。成功例2;レンタルビデオTSUTAYAは、ビデオ貸借の情報システムで、人気ビデオの品揃えに成功しています。
3)コラボレーションのビジネス・システム
自社のビジネスを集中特化し、他のビジネスを外部化するビジネス・システムです。自社の事業コンセプトは明解になり、競争に勝てる専門家の力を他社から借りることができます。
成功例1:任天堂は、一部のゲームソフトの開発と流通の管理だけを自社の業務とし、機器の生産、ゲームソフトの開発は、外部の他社にまかせています。成功例2:有名なトヨタのカンバンは、足りなくなった部品を社外の協力会社が、競争で納めているのです(以上は、「『<競争優位>のシステム』加護野忠男 PHP新書」を参考に、大沢がアレンジしました)。
3、今年の社長・柳井正
経営手腕が最も優れた「今年の社長」に、ファーストリテイリング柳井正社長が選ばれました(日経12/18)。ユニクロの11月の売上高は前年同月比、+32.2%。世界不況は関係ありません。
ファストリテイリングのビジネス・システムは、SPA( Specialty store retailer of Private label Apparel = 製造小売業)と呼ばれるものです。ファーストリテイリングのその名の通り「スピード」ですが、素材調達、企画、開発、製造、物流、販売、在庫管理、店舗企画までを手掛ける点で「コンビネーション」や「コラボレーション」のビジネス・システムとはいえません。
なぜ成功しているのでしょうか。それは柳井正社長がヒッピーだからです。ライバルは同じくヒッピーのスティーブ・ジョブスです。ヒッピーはロックミュージックとともに、ジーンズ、Tシャツ、スニーカーを世界の定番にしました。ヒッピーにとって、iPodやiPhonのような世界ヒットを飛ばすのはあたりまえのことなのです。柳井社長は世界チャートでナンバ−1になるまであきらめないはずです。最後にビジネス・システムにとって大切なのは、たとえばヒッピーのように自由になりたいという、「夢」です。