歴史的事件です。トヨタが世界1。

コンテンツ・ビジネス塾「トヨタ」(2009-05) 2/3 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、トヨタが世界1
GM(米ゼネラル・モーターズ)の2008年の新車の世界販売台数が835万6000台、対するトヨタは897万2000台、約62万台の差で、トヨタの自動車販売世界首位が確定しました。自動車といえば米国のビッグ3、GM、フォード、クライスラーです。1908年に発表されたT型フォードにより自動車は大量生産されるようになります。GMが、世界1になるのは1931年のことです。以来守り続けた王座をトヨタに明け渡すことになるのです。自動車王国アメリカの終わり。歴史的な大事件です。
2、GM
77年間世界1の座にあったGMの秘密は何でしょうか、GMから学ぶことは何でしょうか。
1)フルラインアップ
「どんな予算でも、どんな目的でも」。これがGMのスローガンです。サターン、ポンティアックビュイック、シボレー、キャディラック。そして軍用車を転用したSUVハマー、バン・ピックアップ・SUVのGMC。GMは、大衆車から超高級車まで、多種多様なクルマを販売しました。
2)モデルチェンジ
矢継ぎ早にモデルチェンジをしました。消費者は、洋服を着替えるようにクルマを買い換え、モードのようにクルマの流行を追いかけるようになりました。
3)マーケティング
所得、年齢、地域、ライフスタイル、ライフステージ、消費行動によって、ターゲットはセグメント(細分化)されました。ターゲットにあったクルマが企画され、生産され、販売促進されました。
4)オートローン
分割払いで、所得が低い層でも、高価なクルマを手に入れることができるようになりました。
いちどGMのクルマを買った顧客は、生涯GMのクルマに乗り続けることになります。消費者は、より大きなより贅沢なGMのクルマを手に入れることが、人生の重大な目的になっていったのです。
クルマを発明したのがドイツのダイムラーとベンツ。ベルトコンベアでクルマの大量生産に成功したのが米国のフォード。そしてクルマを売るシステムを構築したのが米国のGMです。
3、豊田章男
トヨタはなぜ世界1になれたのでしょうか。
まず、マーケティングと販売でGMに学んだからです。現在のトヨタの販売力を築き上げたのは、日本ゼネラル・モータースの販売広告部長であった神谷正太郎です。GMからトヨタにスカウトされた神谷(トヨタ自販初代社長)が、GM流をトヨタに移植したのです。
つぎに、はやく、やすく、いいクルマを作るトヨタ独自の生産方式を確立したことです。それは「カイゼン」、「カンバン」という世界に通用するキーワードで語られています。
カイゼンとは改善です。トヨタには「創意くふう提案制度」があります。提案すれば1件500円、採用されれば最高で20万円の報奨金がもらえます(「トヨタのお父さん」田村康子 講談社 P.77)。報償金の入れられている専用封筒には、「提案はよく見る目から意欲から」、「よい品 よい考」と書いてあります。トヨタの精神は「カイゼン」です。
「カンバン」とは、ジャスト・イン・タイムのことです。「必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ」、調達し、作るということです。パーツをたくさん作ってクルマを作るのではなく、クルマを作るのに必要なパーツを必要な時に必要な量だけ作るのです。そのときに使われる注文と納品の書類を入れたものが「カンバン」です。トヨタの生産には「カンバン」で、ムダがありません。
トヨタは次期社長(6月下旬から)に創業家豊田章男(52)副社長が就任することを発表しました。
「T型フォード登場の頃の米国には1600万頭の馬がいた、速い馬として出現した自動車は、年間1600万台(昨年)売れていた。自動車が21世紀にも必要とされるか。次の百年に向けた改革を始める」(日経 1/21、1/22)。慶大出身、グランドホッケー、レーシングドライバーのスポーツマン、MBA取得の国際派、若くかっこいい社長に、自動車のあとのクルマづくりを期待します。