あなたは移民を歓迎できますか。

コンテンツ・ビジネス塾「移民」(2009-43) 12/1塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、オオクボ
日本なのに、住民の半分近くが、外国人の町があります。東京・新宿のオオクボです。オオクボとは、中央・総武線大久保駅と、山手線の新大久保駅付近。新宿区の大久保1・2丁目、百人町1・2丁目のことです。
新宿区の統計資料によればオオクボの3人に1人は外国人、大久保1丁目は半分近くが外国人、国勢調査で各戸を回った町内会長さんの実感では、外国人6割、日本人4割だというのです。
どこの国のだれが住んでいるのでしょうか。国籍は、韓国、中国・台湾、タイ、ミャンマー、マレーシア、インド、チュニジアなど。オオクボは日本一の繁華街・歌舞伎町のベッドタウンとして発達しました。ですから仕事は、ホステス、ダンサー、風俗店の女性、飲食業の人たち、そして意外なメンバーは近所の日本語学校、専門学校に通う留学生です。
現在のオオクボはエスニックタウン(異国民族の町)になっています。韓国系の食堂、食材店、美容院、薬局、不動産店。中国・台湾の料理店、中国人の病院、タイ・ベトナムの料理店。さらに教会、寺院、モスクもあります(『オオクボ都市の力』稲葉佳子 学芸出版社)。
オオクボには出会いがあり、別れがあります。そして挫折があれば成功もあります。オオクボがここまで発達してきたその理由は、この町がたくさんの成功者を出しているからです。「オオクボは、外国人が自らの夢の実現に向けて、はじめの第一歩を踏み出すまち」(前掲書)でもあるのです。
2、移民
日本政府は原則として移民(永住を前提に受け入れる外国人)を認めていません。
1)医療、教育、興行、経営の14種(専門的技術労働者)を除き、外国人労働者は受け入れない。
2)ただし、64職種、120作業に限り、1年研修後、最大2年間の技能実習に就(つ)ける。
3)ただし、日系人には「身分または地位に基づく在留資格」が与えられる。
たとえば漁師は、以上の例外に入りません。しかし現実に日本の漁業をやっているのは、インドネシア人など。私たちは外国人なしで魚を食べることができません。クリーニング屋さんも同じです。フィリピン人やベトナム人です。日本人は少しでもきついとすぐに辞めます。最もきつい仕事の介護でもインドネシア人などが活躍しています。
日本は外国人の力を必要としているにもかかわらず、外国人が日本で仕事をするためには高いハードルがあります。現在、日本で働いている外国人は221万人います。しかし未来には恐ろしい数字が待っています。2030年には労働力が現在の6600万人から5600万人の1000万人減。わずか20年後に日本は1000万人の労働力不足になるのです。移民を認めるか否か、日本は岐路に立っています(『日経ビジネス』11/23 「移民YES」より)。
3、鎖国
「外人(ガイジン)」という言葉があります。外国人は「ガイジン」と言われたら気をつけた方がいい。そして日本人は「外人」という言葉に慎重であるべきです。
日本を代表する辞書の広辞苑岩波書店)は、「外人」をこう説明しています。1)仲間以外の人。2)敵視すべき人。3)外国人。もちろん私たち日本人は3)の意味で使っています。しかし自分の都合で、1)、2)の意味でも使っているからです。
ゴルフの石川遼選手を応援していたファンは、競っていた「ガイジン」がミスをしたときに拍手をしました。ある日本のお笑いタレントは、日本の平和憲法世界遺産にしろと、「ガイジン」に要求しました。知識人もおなじです。『国家の品格』(藤原正彦 新潮新書)は、「ガイジン」に武士道を説けと論じました。日本人の読者はそれに拍手をし、同書を空前のベストセラーにしました。問題は、移民を認めるか否か、ではありません。私たちひとりひとりが開国できるかです。
オオクボの問題に戻ります。大久保小学校では全児童の6~7割が外国系です。この町から新しい日本人が生まれ、オオクボこそが21世紀の日本の町のモデルになります。日本は終わります。しかし、日本の美しい四季は永遠です。敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山さくら花(本居宣長)。