iPadは、カッコイイ。問題は、日本の敗北。

コンテンツ・ビジネス塾「iPad」(2010-16) 4/29塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、アップルのアイパッド
米アップルが多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」を4/3に米国で発売しました。販売台数は初日だけで30万台、年末までには500~700万台に達する、またまたの大ヒット商品になると予想されています。日本でも4月下旬に発売の予定でしたが、米国での大盛況の余波で製品供給が追いつかず、ほぼ1ヶ月遅れになると発表されました。
iPadは携帯電話のiPhoneの親玉のような格好をしています。1)9.7インチの液晶画面を持ちA4版よりやや小さめ、重さは680gです。2)iPhoneと同じように、指先で操作。キーボードを表示させ文字も打ち込めます。3)無線LANに対応しています。メールやネット閲覧ができます。4)大きな画面で映画を見て、ゲームを楽しむこともできます。5)電子書籍は「iブックストア」から配信。とくに雑誌を見るのに最適です。6)販売価格は499ドル(約4万5000円)です。
なぜアップルのiPadがそれほど話題なのでしょうか。それはアップルのCEO(最高経営責任者)がスティーブ・ジョブスだからです。ジョブスが米国のみならず世界のIT社会をリードし、私たちの生活を根本的に変えてきたからです。
2、スティーブ・ジョブス
あなたは、世界を代表する大企業の最高責任者スティーブ・ジョブスが、どんな格好でビジネスやプレゼンテーションの場に現れるか知っていますか。イタリア製のスーツに、フランス製のネクタイ、イギリス製の靴でしょうか。残念!違います。なんと、白のテニスシューズ、ジーンズ、そして黒のタートルネック。この格好がジョブスの正装です。30年間変わっていません。なぜそんな?それは、彼がいまの世の中と大人たちに文句を言いたい永遠の「若者」だからです。
1)1984年、そう村上春樹が小説にした「1Q84」年に、夢のパーソナルコンピューター(PC)、初代のマッキントッシュ(マック)を発売します。当時はIBMが市場を独占するコンピューターの時代。それはビルのワンフロアーを独占するような大型でした。ジョブスは、ビッグ・ブラザー(独裁者)のIBM、仕立ての良いスーツを着たエリートビジネスパーソンに、挑戦状をたたきつけます。そしてだれもがPCを持ち、いつでもPCを使う時代が始まります。
2)2001年、iPod発売。ソニーウォークマンは追放されます。03年からはiチューンズ・ミュージックストア。CDは売れなくなります。音楽の世界は変わります。
3)2007年、iPhone発売。「アップストア」を通じて、ゲームをはじめ無数のアプリケーション・ソフト(10万種類以上)が販売されるようになります。ケータイが大きく変わりました。
iPadは私たちの何を変えるのでしょうか。iPadでジョブスは何を変えようとしているのでしょうか。
3、eBook
iPadの活躍する場面の本命が「電子書籍市場=eBookビジネス」。住まいから本棚が消えます。
電子書籍端末としてすでに成功しているものとして、米アマゾン・ドット・コムの「キンドル」があります。キンドルは2007年11月登場、現在は文庫本サイズの「キンドル2」とiPadとほぼ同じの「キンドルDX」があります。特徴は、「電子ペーパー」。紙と同じ見え方で文字を表し、電気を消費しません。書店で25〜30ドルする本が、eBookなら6.99~9.99ドルで買うことができます。ざっと1/3の値段で本が読めます(『iPad vs. キンドル』西田宗千佳 株式会社エンターブレイン)。
もうひとつのeBookは、「すべてを検索可能にし、活用可能にする」グーグルブックスです。しかしここには著作権独占禁止法、米国による他国の「情報植民地化」などの大きな問題があります。
ところで、iPadeBookの話に日本は登場しないのでしょうか。
グーテンベルクが印刷技術を発明してから500年続いたビジネスモデルが変わる・・・iPadに対し国内の出版界は受け身の姿勢が目立つ。悲観論さえ出ている」(角川グループHD会長兼CEO角川歴彦 日経4/18)
日本は音楽配信で世界に通用するモデルを作れませんでした。そしていま音楽の3倍ある6兆円の出版市場で日本は、先行も空しく、アマゾン、アップル、グーグルの前に敗れ去ろうとしています。