そうだ!私たちには「里山」があるんだ。

コンテンツ・ビジネス塾「里山」(2010-45) 11/30塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、名古屋議定書
森と海、地球に住む生き物たちを守るための国際会議が名古屋で開かれました(10/18~10/30)。生物多様性条約(Convention on biological diversity=CBD)第10回締約国会議(Conference of the parties=COP)です。条約に締結しているのは193カ国ですが米国は参加していません。自国の企業の利益を考えたときに参加できないという判断からです。
今回採択された名古屋議定書は、生物資源を使った製品で得られた利益の配分に関するものです。かつて先進国は植民地から生物資源を集め製品にし利益を上げた。それに対して途上国は見返りの要求する。その調整が議定書の中味です。経済的な対立は厳しく、議定書は当事者間の取り決めに期待するという、あいまいなものになっています。
会議ではもうひとつ、「愛知ターゲット(目標)」を採択しました。これは生物の生息環境を守り絶滅を防ぐための努力目標です。2011年~2020年の間に、陸の17%、海の10%を保護区とする目標を立てしました。因に現在は、陸が10%、海はたったの1%が保護区です。
名古屋議定書と京都議定書は双子です。地球温暖化の温室ガス削減6%(1990年比で2012年までに。日本の場合)を掲げた京都議定書気候変動枠組条約の京都会議で採択されたものです。「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」は、ともに1992年の環境と開発のための国際連合会議(リオ・サミット)で提起されたものです。
2、地球の現在
会議での話題と日本企業の動きをピックアップして紹介します。
1)自然の経済的価値・・・○サンゴ礁海水魚の1/4以上が生息する漁業資源の宝庫。津波被害を軽減し、観光資源にもなる。○湿地は水生動物、鳥類の生息域。水産と観光資源になる。○オーストラリア・キャンベラでの40万本の植林は、大気浄化、エアコンの利用減少をもたらした。○ベトナムではマングローブを植えた。津波被害の軽減で堤防を作るよりはるかに経済的(日経10/21)。
2)生物資源の利用・・・○出光興産はベトナムで淡水に生息する藻の一種ボツリオコッカスを採取、バイオ燃料の材料として検討。○ニムラ・ジェネティック・ソリューションはアフリカ南部・レソトに進出。部族が利用している薬草を探る。○メルシャンはインドネシア政府系機関と組み、微生物から新薬候補を見つける。○サカタのタネはアルゼンチンで採取したメカルドニアと呼ばれる黄色い花の植物をもとに新品種を開発している(日経10/18)。
3)外来種被害・・・○ウガンダビクトリア湖ではホテイアオイの大量繁殖が問題になっている。○インドネシア。コーヒーの木の実を食べる外来種により年15~20%の収穫量の損失。○日本。ブラックバス、アライグマによる被害。小笠原諸島ではトカゲの一種「グリーンアノール」、沖縄では「ジャワマングース」の外来種対策がある(日経10/25)。
3、森を守る文明
地球上の生き物は、知られているだけで170万~200万種。未知のものを含めると3000万種と推計されています。しかし絶滅の危機にあるのは全体の35%に及んでいます(日経10/18)。
名古屋の会議で、日本は「SATOYAMAイニシアティブ里山をやろう)」を提案しました。里山は、田んぼ、水、森をうまく生活に生かしています。里山こそ、生態系保存の国際モデルです。
宮城県大崎市『ふゆみずたんぼ米』。冬でも田に水を張って多くの生物の生活させている。○兵庫県豊岡市の『コウノトリ育むお米』。有機栽培でコウノトリを復活させ、観光資源にした。
人類文明史には、環境を破壊してきた「畑作牧畜文明」と、森と水を大切にしてきた「稲作漁撈文明」があります。地中海の澄んだ(やせた)水が証明するように、ギリシャ、ローマの森は破壊されました。スイス、イギリスの森は90%、ドイツの森は70%破壊されました。対して日本の国土は、70%が森に恵まれています(『稲作漁撈文明』安田喜憲 雄山閣 p.354,p.333)。
私たちは、森と米の文明の日本に生まれたことを、感謝すべきです。そして先祖から伝わる里山と私たちの暮らし方を、21世紀の地球環境の危機のために、世界に発信すべきときが来たのです。