ビル・ゲイツの小型原発をどう思いますか。

ビジネス塾7「小型原発」(2012.2.15)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事からホットな話題をとりあげました。2)新しい仕事のアイディが生まれます。3)就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、原発容認
もうすぐ3月11日。東北大震災から1年になります。海からの津波は来ていませんが、見えない津波放射能はいまだに被災地の方々を恐怖におとしいれています。地震津波は天災だが、放射能の被害は人災である。「反原発」は暗黙の正義になろうとしています。
東北大震災の被災者を救おう+地球環境を守ろう=反原発。反原発=正義。反原発は正義なのでしょうか。勇気をもって反原発に疑問を投げかけます。
勇気を与えてくれたのは医師で歌人岡井隆です。岡井は慶応大学医学部を卒業し国立豊橋病院内科医長を経験をした科学者として、反原発に反対、原発擁護を主張しました(東京夕刊2/3)。
2、最新エネルギー事情
1)再生エネルギー
風力、太陽光エネルギーの再生エネルギーで十分やっていけるという、反原発があります。この議論には無理があります。まず、再生エネルギーでまかなうとは、産業革命以前のエネルギー源で、当時の10倍の人口、平均寿命2倍の都市文明を支えることです。つぎにエネルギーを1単位投入して何倍のエネルギーを得られるかを考えると、産業革命以前の再生エネルギー(薪炭=たきぎとすみ)は数倍、産業革命を起こした石炭は数十倍、石油は100倍以上。それに比して、太陽光発電は5~7倍、風力発電は10倍前後(日経2/8 「新・エネルギー戦略 中」石井彰 エネルギー・環境問題研究所長)。つまり太陽光はたきぎやすみ程度、再生エネルギーは甘いささやきにしかすぎません。
2)シェールガス
枯渇する石油に代わって、注目を集めているのがシェールガスシェールガスとは地球深くの泥土が堆積した貢岩(けつがん)から産出する天然ガス天然ガスの可採年数は、120年から250年に大きく伸びます。しかも埋蔵地は中東に限らず、北米、中国、オーストラリアなどの幅い広い地域となっています。シェールガスはエネルギーの需給構造を大きく変えます。
無資源国の日本でもメタンハイドレート(海底の天然ガス資源)の開発が可能になる明るい話題があります(日経2/7「新・エネルギー戦略 上」須藤繁 帝京平成大学教授)。
3)小型原発
では原発はいらなくなるか。新興・発展途上国のエネルギー需要に応えるために反原発は否定されます。注目されているのは小型原子炉です。まず1万〜30万キロワットの小型。初期投資がわずか量産で低コストにできる。つぎに部品が少なく自然現象を活用する安全システムで地中に設計し天候異変やテロに強い。そして空冷式で使用済み燃料を再処理で利用できる、特徴があります。米エネルギー省は、小型原子炉をクリーンエネルギー技術開発競争を勝ち抜くための先端技術として位置づけています(日経2/9「新・エネルギー戦略 下」松井賢一 龍谷大学名誉教授)。
3、ビル・ゲイツ
ビル・ゲイツが出資する原子力ベンチャーテラパワー(Terra Power)」が東芝と提携して小型原子炉(TWR=Traveling-Wave Reactor 進行波炉)を共同開発すると発表したのは、2011年の3月でした。再生エネルギーの非現実性を指摘する東芝佐々木則夫社長は、東北大震災の直後にもかかわらず、「原発は経営の柱」と明言しました(2011.4/15)。
ビル・ゲイツはさらに動いています。中国政府と小型原子炉開発で提携のうわさで、米国と世界を驚かしています。時代はIT(情報技術)からET(エネルギー技術)へ。原発を巡る国際競争は激化しています(日経1/15)。
歌人岡井隆の勇気によって反原発に疑問を投げかけてきました。思い起こせば、思想家吉本隆明も「反原発に反対」でした。反原発では文明の歴史を否定してしまうことのなるからです。
原発を、鎖国で語る身内の話にしてはいけません。開国して世界とディベート(討論)すれば反原発の勝利は疑問になります。とはいえ原発の未来には事故処理を含めてさまざまな困難があります。若く優れた人材が必要です。反原発で、被災地の人々や地球環境を、救うことはできません。