コンテンツ・ビジネス塾「フェイスブック」(2011-5) 2/8塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、フェイスブックの時代
チュニジアとエジプトの反政府デモには、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス=インターネット交流サイト)「フェイスブック」が大きな役割を果たしました(日経1/11社説、1/29記事)。1989年にベルリンの壁を崩壊した「テレビ」のように、フェイスプックが世界を変えようとしています。今回のチュニジアとエジプトの国民は、フェイスブックを通して政府への不満を集約し、治安警察の動きとデモ集会の日時を共有し、爆発的な反政府運動を組織することに成功しました。
フェイスブックの活躍は政治だけではありません。オーストラリアではサイクロン直撃の被害を最小限にとどめました。警察のフェイスブックに1日で3900万件の閲覧があり、市民は警告や避難の情報を共有できました。この閲覧数は警察の自前のウェブサイトではとうてい対応できない数のものでした(日経2/7)。
そしてインターネットの主役は、グーグルからフェイスブックへ。2010年の米国のインターネットサイト訪問者数シェアで、ファイスブックが首位に立ちました(日経1/11)。
2、マーク・ザッカーバーグ
現在のフェイスブックの利用者は、全世界で5億人を超えています。設立は7年前の2004年2月4日、ハーバード大学の「ザ・フェイスブック=新人生の写真入りアルバム」のデジタル版として誕生しました。大学の人々を検索する、誰がどのクラスかを調べ、友だちの友だちを表示するためのものです(『ファイスブック』デビッド・カークパトリック 滑川海彦 高橋信夫訳 日経BP社 P.31)。フェイスブックに登場するのは、本名によるリアルは人間。仮名やハンドルネームを使って他人の悪口を言う、サイバー空間だけの訳の分からぬ怪しい人格ではありませんでした。
このフェイスブックで米国は、ゲイツやジョブスに次ぐ、スーパーヒーローを生み出しました。それがフェイスブックの創立者で現CEOのマーク・ザッカーバーグ(1984年5月14日生まれ)です。
1)マークはフランス語、ヘブライ語、ラテン語、古典ギリシャ語を流暢に読み書きする天才。ホワイトボードを使いルームメイトとブレーンストーミングをし、19歳のときにファイスブックを始めた。
2)マークのファッションは、Tシャツ、短パン、アディダスのサンダル。散らかり放題のアパートに住み、「金はいらない」と言い、MTVやバイアコムからの15億ドルの買収提案を断った。
3)マークは利益を上げる方策をほとんど考えようとしなかった。夢は世界を変えること。もっと透明に、もっとオープンに。そのためにはまず自分が変わらなければと考えていた。
3、新しい社会
ファイスブックを継続性のある収益事業にしたのは、2008年入社、元グーグルの上級幹部、マークより14歳も年上のシェリル・サンドバーグです。シェリルはフェイスブックを広告大国に変えました。
1)マーケティング革命
ファイスブックが持っている生活者一人一人の情報は、かつてのどんな調査会社のものよりも、質の高いもの。資本主義は抜本的に再編される。広告という言葉はもはや適切な単語ではない(前掲書P.385)。ソーシャルネットワーキングは、ソーシャルプロダクションになる(同P.389)。
2)デジタル民主主義
フェイスブックは、中東だけでなく、米国内でもさまざまな民主化支援のツールとして活躍している(同P.423)。そのシンボルが大統領選を勝ち抜いたオバマ大統領。2008年大統領選でオンライン戦略を立てたのは、マークのルームメイトでファイスブックの共同創立者のクリス・ヒューズだった。
3)オンラインパスポート
フェイスブックはオンラインパスポート。政府の発行は不要。世界市民の時代がくる(同P.479)。
フェイスブックはインターネットのひとつの流行ではありません。世界を変えるものです。しかし冷たい現実があります。日本ではミクシィ2200万人に対してファイスブック180万人。さらに中国には悲しい現実が。2009年6月4日以来、国家権力によりフェイスブックは完全に遮断されています。