K-POPで、日本が元気になる。

コンテンツ・ビジネス塾「K-POP」(2011-26) 6/15塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、チャン・グンソク
東京・渋谷の街が、韓国の俳優で歌手のチャン・グンソク(23才)に占領されています。パルコ・パート1の展示「チャン・グンソクの部屋」に長い行列が、タワーレコードの1階売り場では写真展、たくさんの女性が群がり、ケータイでチャン・グンソクとの2ショットを撮っています。
チャン・グンソクは、昨年放送されたTVドラマ『美男(イケメン)ですね』で人気に火がつき、ことし4月発売の日本デビューシングル『Let me cry』がオリコン初登場1位で、人気が爆発しました。
『Let me cry』はロック調のラブソング、覚えやすくパンチがあり、しかも悲しみをたたえている名曲です。チャン・グンソクのボーカルがいい。日本語がうまく、なにより説得力があります。さらにシャウトありファルセット(裏声)ありで、楽しませてくれます。
2、K-POP
5月のあるヒットチャート(『オ−バー・ヒッツ・トップ40』FM-FUJI)では、1位がチャン・グンソク、2位が少女時代と、K-POPが首位を独占しました。1980~90年代のチョー・ヨンピル、ケー・ウンスク、キム・ヨンジャの時代とは違います。さらに2003〜4年の「冬のソナタヨン様」ブーム、『宮廷女官チャングムの誓い』のヒットとも違います。日本での韓流としてのK-POPは、新しい時代に突入しています。なぜ、K-POPは強いのか。その秘密を探ります。
1)合宿文化・・・まずデビュー前に徹底して練習します。たとえば9人グループの『少女時代』は、3年〜7年半の練習生時代を送っています。芸能事務所は資金を投下します。練習生時代を5年として、トレーニング、整形、美容費で、一人当たり2〜3億ウォン(約1500~2200万円)かかります(『KARA、少女時代に見る「韓国の強さ」』P.28 朴宋玄 講談社+α新書)。デビューしても、合宿生活は続きます。KARA、少女時代、東方神起、2PMは、現在でもひとつもマンションで合宿です。
2)世界戦略・・・K-POPは、世界のどの国でも通用する万国共通の価値観=ユバーサル・バリューで、制作されています。韓国のアイデンティティナショナリズムを感じさせません(前掲P.39)。日本人は島国根性ですが、韓国人は大陸的気質です。世界で活躍することを目標にしています(前掲P.77)。男女ゴルフでの韓国勢の活躍、フィギュアスケートでのキム・ヨナの活躍は、韓国人の世界戦略が成功していることの証明です。
3)母(オンマ)・・・6才で子供服モデル、9才で子役デビュー、チャン・グンソクのとなりにはいつも母がいました。今日のブレイクまでには、「オンマ(美人母)との苦節17年」(女性セブン6/23)がありました。キム・ヨナの母は、「私は『キム・ヨナ』を専攻した」と表現しました。学生時代よりもっと勉強し、恋よりもっと情熱的に、自分のすべてを娘のキム・ヨナに捧げました(前掲  P.180~181)。親子の想像を超える絆が、アーティストの成功を支えています。
3、韓流
韓流の新時代を見込んでタブロイド週刊紙『サンスポ韓ファン』が5/4に創刊されました。創刊号の表紙を東方神起、2号をチャン・グンソクが飾りました。写真中心、記事は少なめ、広告はなしで現在まで8号(6/15)。韓流のフォローが中心で、リードするまでには至っていません。
実のところを言うと、音楽の分野での韓流は、珍しいものではありません。まず日本演歌の作曲家古賀政男は、少年時代を韓国で過ごしています。歌謡曲の源流には韓国メロディがあります。つぎに差別への配慮からあまり明らかにされませんが、数多くの日本の大物歌手が在日韓国人あるいは韓国系です。さらに芸能プロ経営者や音楽業界に韓国系が多いことがあります。
17世紀の江戸時代、現在の佐賀県肥前の国は、有田を中心に、伊万里柿右衛門、鍋島の陶磁器を世界に輸出していました。明の末期の戦乱で中国・景徳鎮(けいとくちん)に代わって磁器の世界のチャンピオンになっていたのです。有田の高度の技術と造形を支えていたのは、朝鮮半島からやってきたアーティスト達でした。いわば江戸時代の韓流です。
いまのJ-POPでは世界は狙えません。かつての伊万里白磁のように、日本の音楽がK-POPとのコラボで、世界を狙う時がやってきました。