だれが、映画『ひろしま』を封印してきたのでしょうか。

コンテンツ・ビジネス塾「ひろしま」(2011-32) 8/9塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、映画『ひろしま
原爆投下の惨状を再現しているにもかかわらず、半世紀以上埋もれていた映画が、再公開されました。『ひろしま』(原作:『原爆の子』長田新編 、監督:関川秀雄、脚本:八木保太郎、製作:日本教職員組合)です。
女学生たちが、戸外で疎開作業をしているときに、原爆が投下されます。彼女たちは、着ているものを引き裂かれやけどを負いながらも、助け合います。爆撃の後、疎開地から広島に帰ってきた兄妹は、跡形もない自宅の前で、呆然と立ち尽くします。二人は孤児に、やがて男の子は不良の仲間入りをします。原爆は悲惨。しかし人々は諦めない。廃墟の中から、平和のために立ち上がります。
松竹はこの映画を上映しませんでした。大阪市教育委員会も教育映画に指定しませんでした(ウィキペディア)。わずかな自主上映のみで映画『ひろしま』は、58年間も封印されてしまいました(映画のチラシ)。だれが、どんな権力が、この映画を封じ込めてきたのでしょうか。
2、反核平和憲法=反原発なのか。
日本の反核運動はむずかしい。現憲法の賛成と、反原発に直結して論じられるからです。
1)反核は9条賛成か。
原爆を、こども、学生、市民が住む広島に投下することを命令した、当時の米国の指導者の行動は、許せない。核兵器反対の原点はここにあります。
しかし平和運動はここから話が飛躍します。そもそも米国が核を使ったのは日本が戦争を仕掛けたからだ。責任は日本の軍国主義の「あやまち」にある。結論1は、日本軍国主義復活反対。結論2は、日本国憲法を守る。しかし警察予備隊、保安隊にはじまる自衛隊の発展は、米国の要請と協力によるものです。そして現憲法の草案を作ったのは、米国占領軍のGHQ(総司令部)です。さらの日本は強力な軍隊を持ちながら、戦力を持たない「平和憲法」がある、国際協力のために海外派兵はできない、という二枚舌を使い世界をあざむいています。
2)反核は反原発か。
日本の発電量のうち原子力の割合は29.2%(09年)。対して再生可能エネルギーの割合は現在ではわずか1%。それを30年までに13%までにすると計画しています。脱原発には、驚異のイノベーションが必要です。そして脱原発で、温暖化ガスの排出量削減(1990年比25%削減)達成も、不可能になります。さらに価格。脱原発分を火力で補うとすると、電気料金は約40%値上がりします。
3)原発反核
世界は原発建設に向かっています。建設中、計画中の原発は、中国(53)、インド(12)、韓国(8)、アラブ首長国連邦(4)など、23カ国100基以上になっています。
もちろん日本は原発の技術大国で、原子炉の部品供給でもグローバル市場で大きなシェアを獲得しています。日本には、国際原子力機関IAEA)で米国とともに、商用原子力発電産業を監督し、「商用運転」の裏での核兵器開発を監視し防ぐ役割があります(ジョン・ハレム 米戦略国際問題研究所所長 日経8/5)。
3、No Nukes.(核兵器廃絶)
戦争を知らない子どもたち」の反核運動はどうでしょうか。東京の代々木公園でさまざまな環境イベントを主催している「earth garden」のスローガンは、NO NUKES。nukes(ヌークス)とは、核兵器(nuclear weapon)の略です。これらのイベントでは、さらに「organic(有機的な)」(オーガニックフード=自然食品)、「alternative(代替可能な)」(オルターナティブ コミュニティ=環境破壊をしない社会)のキーワードも登場します。イベントは、さらに東北支援と脱原発を提起しています。
しかし反核脱原発を結びつけることは反核をあいまいにします。そして反核平和憲法と結びつけることも、反核をイデオロギッシュな主張にします。反核平和憲法とも脱原発とも違います。
そもそも映画『ひろしま』を封印してきたのは、GHQプレスコード(言論統制)に協力してきた平和憲法派や反原発派だったのではないでしょうか。